魔法の森。
 アリスの家。
 アリス・マーガトロイド、テーブルの上に並んだふたつのティーカップを眺め、ため息をつく。

アリス
「魔理沙、遅いわね……。日頃の蓄積データから、魔理沙の気まぐれの周期を算出すると、今日あたり、うちにある本を盗みにくるはずなんだけど……」

 コンコン。ノック音。

アリス
「……来たっ!!!」

 アリス、勢いよく扉に駆け寄り、開け放つ。

アリス
「まり――……え?」

 にょきにょきにょき。

 アリスの目の前でくねくねと触手が揺れ動く。

・・・

 魔法の森。上空。

魔理沙
「あ! そうだ! アリスの本、盗もう」

 箒にまたがって飛行中の霧雨魔理沙、頭の上にぴこんとライトを点ける。
 そのまま一直線に急降下。
 アリスの家の前まで乗り付ける。

 アリスの家。

魔理沙
「おーい、アリスー! 本を盗みに来てやったぜ――」

 開けっ放しの扉。魔理沙は中へ入りかけて動きを止める。唖然とする。

アリス
「きゃ~っはっはっはっはっはっは!! やっ、やめへぇぇえっへっへっへっへっへっへっへっへ~~!!」

 赤子ほどの大きさの緑黒いマリモのような物体が三つ。
 それぞれから無数の触手が生え出て、アリスの体を拘束している。
 部屋の真ん中で、マリオネットのように宙づりになったアリス。全身を触手の尖端でくすぐられている。
 服はところどころ破け、右肩が露出している。片方のブーツは脱げて素足になっている。

魔理沙
「……な、なにやってんだ……」

アリス
「きひゃははははははっ……まっ!? 魔理沙あぁあっはっはっはっはっはっは!!?」

魔理沙
「アリス……新しいプレイか、なにか?」

アリス
「いひぃああっははっはっはっはっはは……そんなっ、そんなわけないでしょぁおあおああははははははははははは!!! たすけてぇえぇえええひっひっひひひっひっひ~~!!」

 ぐねぐねと不気味に蠢く触手に絡まったまま、笑い狂うアリス。

 魔理沙は、そこへ八卦炉を構えて、

魔理沙
「マスタースパーク!」

 光の大砲をぶっ放す。
 辺り一面を白い光が覆い尽くし、触手もアリスの姿も見えなくなる。

・・・

アリス
「げほ……げほげほっ、……ま、……魔理沙、……ちょっと、やりすぎじゃない……? でも、ありがと……」

 半壊したアリスの家。
 息絶え絶えのアリス、魔理沙に抱き起こされて少し頬を赤らめる。
 マスタースパークによって、アリスの服は焼け焦げ、髪の毛もちりちりになっている。

魔理沙
「アリス、なにがあったんだよ」

アリス
「わ、私にもわかんないよ……。突然、マリモが家に入ってきて、……その、……く、くすぐられて……」

 魔理沙、眉をひそめる。そのとき、物音を聞きつけて周囲を見渡す。

遠くから聞こえてくる声
「いやぁぁはははははは」
「やだあはっはっはっは」
「たすけてぇぇぇえ~~」

 森のいたるところで、誰かの笑い声がこだましている。

魔理沙
「……魔法の森で、いったい何が起こっているんだ?」



(つづく)



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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 ト書きシリーズまだまだ続きます!


最初からやり直す