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 妖怪の山。中腹。川辺。


「あはっはっはっはっはっはっはっ!!? やめなさっ……なにこれぇあっはっはっはっはっはっはっは~~!!」

 鍵山雛が、小型のくすぐりボルボック数十体の触手によって、ぐるぐるまきに拘束されてくすぐられている。
 宙づりの状態で、触手の尖端が、素足の足の裏をなで回す。
 彼女の足下に、ロングブーツが二足転がっている。


「きゃはっはっはっはっはっはっ!!! 厄があっぁああ、厄があぁぁはっははっはっはっは~~!?」

 シュパーン! 

 そのとき、青白い閃光が走り、雛を拘束していたボルボックが一斉にはじけ飛ぶ。
 雛はどしんと尻餅をつく。


「きゃっ……けほっ……えっ」

 雛が顔を向けると、そこに、河城にとりがいる。にとりの背中のリュックから突き出た砲塔から煙が吹き出ている。

にとり
「雛、大丈夫?」


「なんとか……助けてくれて、ありがとう」

 にとり、ちぎれたボルボックの切れ端を拾い上げ、試験管に詰める。

にとり
「やっぱり思った通り、厄に引き寄せられる習性はあるようだね……。さ、雛、立てる? 急いで逃げよう」


「ま、……待って、笑いすぎて、ちょっと息が……」

にとり
「あんまり悠長にしてる暇はないよ。こいつらさ、弾幕では殺せないから。しばらくすると再生するよ?」


「え……そうなの?」

にとり
「さっき確認した。触手の根元の本体部分に損傷を与えれば、一時的に機能は停止するんだけどね。たとえ粉々に粉砕しても、アメーバみたいに寄り集まって、数分で元の形にもどっちゃう」


「ひっ……」

にとり
「だからさ。倒しても倒しても減らないし、さらに他の妖怪をくすぐって増えるしで、最悪なんだよ。根本的に普通の妖怪と作りが違うみたいなんだよね。なんとか死滅させる方法を導き出したいんだけど……」


「……そんな方法、あるの?」

にとり
「幻想郷にやってきたってことは、外の世界で忘れ去られたってこと。つまり、少なくとも一度、倒されたことがあるってことなんだよね。だから必ず弱点はある。雛、ちょっと手を貸してくれない?」


「……?」



(つづく)



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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 ト書きシリーズ連載中です!


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