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 妖怪の山。
 崖から下を見下ろし、絶句する雛、歯がみするにとり。

にとり
「く……ここまでか」

 崖下の川にはうじゃうじゃと小型のくすぐりボルボックが沈んでいるのが見える。
 背後からも人間大の大きさの無数のくすぐりボルボックがうねうねと触手を蠢かしながら近づいてきている。


「八方ふさがり……っ!? ねえ、光学迷彩が効かないってことは、つまり……」

にとり
「もう、かなりの妖怪が奴らの餌食になったってことだね」

 にとり、リュックを下ろし、地面にしゃがみ込むと、取り出した紙にペンを走らせる。


「何してるの?」

にとり
「私の実験結果を少しでも強い人に知らせて奴らを倒してもらわないと……手紙をガチャガチャカプセルに詰めて、この下の川に流す。できるだけ多く書き残したいけど……、とにかく捕まるギリギリまで粘るよ」


「……わかった」

にとり
「……雛?」


「私が時間稼ぎするから、その間にあなたはあなたのできることをやって」

 雛はにとりに微笑むと、くるりと身を翻し、背後から迫り来るくすぐりボルボックの大群に向かってゆく。

にとり
「雛っ!!!」


「私だって、2ボス最強って言われた時期があったのよ! 『厄神様のバイオリズム』!!」

 雛、米粒弾を大量に放出し、くすぐりボルボックを威嚇する。
 触手は弾をたたき落としながら、雛に迫る。

にとり
「雛……ごめん……!」

 にとりは、目に涙を浮かべながら手紙を書きカプセルに詰めては川へ放り捨てるという作業を繰り返す。


「きゃあああっ!!!」

にとり
「……っ」

 雛、触手に両腕を揃えて拘束され、腋の下をくすぐられる。


「きゃははっはっはっはっはっはっはっ!!? やめえぇぇっ!! あぁぁあっははっははっはっはっはっはっははっはっは~~!!!」

 蹴り上げた足も触手に絡み取られ、ブーツを奪われ素足にされる。


「あはぁぁあっはっははっははっはっははっ、だめぇぇひぃぃぃっひっひひっひっひひっひっひ~~!!!?」

 くすぐられ笑い狂う雛の傍を、悠々と通り過ぎていくボルボック達。

にとり
「……これでっ! なんとか……――ひゅいっ!?」

 にとりは、数個目のカプセルを放り投げたところで手首を触手に絡み取られる。
 そのまま引きずられ、宙づりにされる。
 足をばたつかせるにとり。
 触手はにとりの両足の長靴を軽々と脱がし取る。

にとり
「やっ――……あああああああああっ~~はっははっははっはははっはっははひゅひぃぃいいいっひっっひひっひっひひ!!!?」

 触手はにとりの素足にまとわりつくように巻き付き、くすぐる。

にとり
「ひにゃははははははははははっ!!!? これはきひゅぃいい゛い゛ぃい~~~っひひひっひっひっひふひゃぁぁあ!!?」

 雛とにとりが笑い狂う下方の川。手紙の入ったカプセルが流れていく。水中のボルボック達は見向きもしない。



(つづく)



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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 ト書きシリーズ連載中です!


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