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 マヨヒガ。

霊夢
「くすぐりボルボック?」

阿求
「はい、日本神話上の妖怪で、笑いの神が生み出したとされています。くすぐりボルボックとヤマトの神々との大戦は、千五百年ほど前までは口承文学として存在していたらしいのですが、それも途絶え、現代では個人編纂の古文書の一部にほんの少し情報が残っている程度です。よほどの長寿妖怪かマニアでないと、存在すら知らない妖怪でしょう」

魔理沙
「神話なのに、くすぐりボルボックって洋風な名前なんだな」

阿求
「……。……そのくすぐりボルボックですが『父なる力によりて封ぜられき』という一文でくくられています」

魔理沙
「あ、そこ触れるのタブーですか。りょーかいデース」

霊夢
「『父なる力』……抽象的ね。でも、その正体さえ掴めれば、勝機があるわね」


「ええ。それは、遙か昔から外の世界に存在し、かつ未だ幻想入りしていない力」

霊夢
「そんなもの、ある?」


「……わからない?」

霊夢
「うん?」

阿求
「いにしえより天変地異は神の力によってもたらされているものと伝えられています。自然を司るそれぞれの神にはもちろん性別がありまして……」

魔理沙
「……ああ、父って」


「幻想郷にない最も大きな外の力……。私がスキマを作るから、霊夢は端を持って引っ張ってくれる? あなたぐらいの能力がないと、幻想郷中の空は覆えないから」

霊夢
「待って。私だけピンと来てないんだけど……」

・・・

 幻想郷全域が大雨に見舞われる。
 雨に打たれくすぐりボルボックは断末魔を上げ、しなびてゆく。
 次々と解放される妖怪達。

・・・

霊夢
「うん、しょっぱい……なるほどね。遙か昔から外の世界にあって幻想入りし得ない力……海の力、ね。ただ海が父性ってあんまりピンとこないんだけど」

魔理沙
「海を治めるよう命じられた素戔嗚尊だっけ、が男神ってこと由来らしいぜ……よく知らないけど。こんなに広いスキマ作って、外の世界の海底と繋げるなんて、スキマ妖怪様々だな」

 霊夢、スキマの端を持って広げながら、下界の様子を眺め、ため息をつく。

霊夢
「……異変が起きたら、まずは阿求か紫から情報仕入れろって教訓ね」



(完)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 ト書きシリーズこれにて完結です!
 「触手系モンスターの弱点が海水」というネタを幻想入りさせたくて書き始めたら結構の量になってしまいました。お付き合いありがとうございました。


最初からやり直す


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