メルはフェイトの足元に立つ。フェイトのブーツに手をかけた。

「……な、えっ? なに」

 フェイトはきょとんとする。
 メルはにんまりと笑い、

「あたしは基本こっち専門なんだよね。フェイトさんに、くすぐったい場所は上半身だけじゃ無いって教えてあげるよ」

 フェイトの足からブーツを脱がし取ると、黒いニーソックスを穿いた足の裏へ、両手の指を突き立てた。

「きゃはっ!?」

 途端にびくんと体を仰け反るフェイト。
 お腹をくすぐられ、笑い続けていたために、汗をかいていた。
 履きっぱなしだったブーツの中は蒸れていて、足の感度もあがっているようだった。

「わあ、やっぱり蒸れてる……。ちょっと臭うね」

 そんなことを言われ、フェイトは恥ずかしくなる。

「でもさ。こんぐらい蒸れてる方が、効くんだよね。ほ~ら、こちょこちょ」

 メルは言いながら、指先を軽くフェイトの足の裏の表面で動かした。

「あひゃっ!!? んはははははははははっ!!! やっ……だはっはっはっははっはっは!!?」

 想像以上のくすぐったさに、フェイトは驚いた。
 足の裏なんて、お腹に比べれば大したことないと思っていたのに……。

「あらら。まだ軽く撫でてるだけなのにこんな反応。モルに上半身を散々やられて感度上がっちゃったかな?」

「やはははははははっ!! そ、そんなっ……いぇめぇぁああっはっはっはっははっは!!」

 フェイトは足首から先をくねくねと左右に振る。しかし、メルはよじれるフェイトの足を追いかけるように、両手を密着させくすぐってくる。

「やめてっ……!!! ああははっはっはっはっはっ!!! あしがぁぁぁあっははっははははははは」

 すると、メルは手を止めて、

「さてさて靴下の上からこの反応なら、素肌にするとどうなっちゃうんだろうね~」

 フェイトはメルが何をしようとしているのか想像し、ぞっとした。

「や、やめて……。げほっ……それだけはぁっ」

 フェイトは涙ながらに懇願するが、メルは無視してフェイトの両足のソックスのつま先を握りしめた。
 力任せにぐいぐいと引っ張る。

「やだっ……やめてぇ……っ」

 足枷の部分でひっかかり、びよーん、とソックスが伸びる。そして、メルが「ふんっ」と力を入れると、すっぽんっ、と勢いよく脱げた。
 フェイトは普段滅多に人前に晒さない素足を露出させられ、しかも足の裏をまじまじと観察され、恥ずかしくなった。

「わあ、さっきくすぐったおかげかな? 血色良くなってるね。この靴下は……、うん! くっちゃい! フェイトさんにあげるね」

 メルはそういうと、フェイトの足から脱がし取ったニーソックスを、フェイトの顔に向かって投げた。

「ぷえっ……!!? ちょっ、げほっ!! やめてっ……」

「きゃはははっ!! フェイトさん自分の足の臭いで咳き込んでるじゃん」

 メルに煽られ、フェイトは余計に恥ずかしくなる。

「そんなくっさいフェイトさんの足の裏を、これから思いっきりこちょこちょしてあげるからね? 知ってる? 足の裏って神経がものすごーく密集してるんだよ? だから、神経質な人ほど足の裏が弱いとかなんとか……。フェイトさんはどうかな~?」

 鼻歌交じりにそんなことを言いながら、メルはフェイトの両足の裏に爪を立て、引っ掻き始める。

「んひゃぁあぁあっ!!!? ああひひぃぃぃっひっひっひっひっひっ!!? それはだめぇぇええええへっへっへへへっへへっへへっへ~~!!!」

 普段滅多に触れられることの無い素足の裏。

「わあ、フェイトさんの足の裏やわらかーい。足の指びくびくしてる。おもしろーい」

 メルは棒読みで実況しながらフェイトの足の裏を引っ掻きまわしている。

「いひぃいひひひひいっひっひいっ!!! だめぇええええあひゃひぃぃい~~っひっひひひっひっひ!!!」

 フェイトはちぎれんばかりに首を上下左右に振り乱して笑い狂う。
 足の裏から脳髄にびりびりと伝わってくるくすぐったさは、フェイトの想像を超えていた。
 土踏まずをごりごりとほじくられ、踵を掻きむしられ、足指の付け根をひっかかれる。……

「いひゃぁああああっはっはっはははっはは!!! おねがいあぃあいあいあひひひひひひひひい、くるっちゃうういひひひひひひひひひひひ~~!!」

 泣き叫ぶフェイトに、メルは鼻で笑った。

「もう、フェイトさん。人間はこのぐらいで死なないよ。じゃあ今度はこれなんか使ってみようか」

 メルがそう言ってフェイトに見せつけたのは……、

「え……歯ブラシ?」

 少し毛先の開いたピンクの歯ブラシであった。
 何をされるのか直観する。しかし、フェイトの脳が、想像することを拒んだ。

「そう! これで、足の指と指の間を――」

 メルは、フェイトの左足の人差し指と中指の股を押し広げて、

「ごしごし~」

 歯ブラシで磨き始めた。

「うひょひょひょひょひょひょっ!!!? ひぎぎぃいいいいいいひぇいへぃえぃひひひひひひひひひひっ!!!!? ふがぁぁぁっぁあああ」

 フェイトは目の前に閃光が走るような錯覚を覚えた。
 それほどくすぐったかった。
 いや、くすぐったい。というよりも、笑え、という命令が直接脳に響いてくるような。そんな感覚である。

「次は薬指の間もやろうね~」

「あひあぁぁああがあぁぁぁぁっはっはっははっはっはっはははっ!!! ひえぇぇえええっへっへへっへへっへえがあっぁああ!!!?」

 こしこし、と歯ブラシがフェイトの足の皮膚をこすり上げる音が響いている。
 フェイトは、自分が泣いているのか笑っているのかもわからなくなっていた。

「さて、と」とメルが手を止める。彼女は歯ブラシを放り捨てると、今度は懐から櫛を取り出した。

「げほっ……も、もう、やめて……」

「だーめ」

 メルはフェイトの左足の指を押さえてそらすと、つっぱった足の裏へぐしぐしと櫛の先をこすりつけた。

「いひゃあははあはあはははははあはははっ!!!!? それはきついぃいいいひひひひひひひひひひひひひっ!!!」

 ぴんと引っ張られた柔らかい足の裏へ、細くて硬い櫛の尖端がこすりつけれられる。
 フェイトは弓なりに体をそらし、背中を台に打ち付けて笑った。

「ほんとにぃいいいいひひひひひひひひひひひひひっ!!! あがぁぁああはははははははははははは~~!!!」

「ふんふむ。やっぱり足の裏に櫛は効果抜群みたいだね。どんなに足の裏強い子でも、だいたい櫛使えば笑っちゃうし……。あ、フェイトさんはもともと弱いから関係ないか」

「あがぁぁっはっははっははっははっはっ、ホントにやめへぇぇえええっはっはははははははふげぇぇぇ~~!!!」

 足の裏から伝わってくる激しいくすぐったさ。
 フェイトは意識がもうろうとしてきた。

 自分はいったい何をしているのか。
 なんでこんなところでこんな無様な格好で笑い狂わされているのか。

 フェイトは、自身の状況が滑稽にすら思えてきた。それでも腹の底から沸き起こってくる笑い。
 なにがおかしくて笑っているのか。なにが苦しくて笑っているのか。……
 感覚がぐちゃぐちゃに錯綜する中で、フェイトは意識を手放した。



(つづく)



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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 久々のなのはモノ。フェイトさんをくすぐって欲しいとご要望いただきました!