ひらひらと白いマントが風になびいている。青い胸パッド、青いミニスカート、真っ白なニーソックス、大きく肩と腋の露出した魔装の魔女が歯ぎしりをする。
 どこか彼方の異世界の荒野。
 美樹さやかは、十字架に縛り付けられていた。

「ちょっと! あんたたちなにするのよ……っ! ……く、魔法が使えない」

 さやかの周囲には、目深にフードを被った修道士が5名。さやかの言葉に反応を示す者はいない。
 さやかは、自身の魔女オクタヴィアとしての力が、空間の力に押し殺されているように、感じていた。

「ここどこなの? 急にさらってきて……。あたしがいったい何をしたって――」

 すると、目の前の修道士のひとり。口元がわずかに動いた。

「ま、……じょ」

「魔女?」さやかは聞き返した。

「しょ……けい、する」

 さやかはハッとした。噂に聞いたことがあったのだ。時空を股にかけて、魔女狩りを行う集団がいるということ……。これまでも何人もの魔女が襲撃されたという……。もっと気にしておくべきだった。いまさら悔やんでも遅かった。

 修道士たちの手が伸びてくる。
 さやかは何をされるのかわからなかった。しかし、修道士達の手からは禍々しいオーラを感じた。はっきりと、死を悟った。さやかは目をとじた。

 ああ、死ぬのか……。
 人間では一回死んでるけど……。
 魔女の死って、いったいどんなのだろう……?

 さやかはのんきに思いを馳せた。
 しかし、

「……――い!?」

 予期せぬ刺激に、さやかは目を見開いた。

「なっ!? えっ……な、なに、して――いあぁっはっはっはっはっははっはっははっっは!!?」

 さやかの左右に立った修道士ふたりの手が、さやかの腋を、こちょこちょとくすぐっていた。

「あははははははははっ!? なにこれ!? やだっ、くすぐったいぃ~~!!!」

 さやかは髪の毛を振り乱して笑う。
 正面に立った修道士は、彼女の脇腹をぐりぐりと揉みほぐしている。

「きゃはははははははっ!!? ちょぉおっ!!! だめだって……ふざけてんんおかぁあぁっはっはっはっはっはっはっは~~!!!」

 さやかは人間の頃からくすぐりに弱かった。友人と悪ふざけでくすぐりあったことはあった。
 しかし、その比では無いほど強烈なくすぐったさだった。

「ひぃいい~~っひっひっっひっひ!!! おねがぁぁははははははははは、やめてぇええぇあはははははははははは~~!!!」

 さやかは涙を流した。
 足元にしゃがんだふたりの修道士は、さやかのブーツとソックスを脱がし、足の裏をくすぐっている。

「いやはっはっはっははっはっはは!! もおおおおぉお~~はっははははははははは、こんなことしてぇぇぇえ、なんににゃらぁぁあはっはっはははっはっは~~!!!」

 何故くすぐられているのか?

 さやかは自分が置かれている状況がまったく理解できなかった。

 これが、魔女狩り??
 くすぐると、魔女は死ぬ!!?

 さやかは、理解できないもどかしさと、くすぐったさで、頭がおかしくなりそうだった。

「ひぎゃぁああははははははははははは!!!! たすけっ……だれかぁあぁっははっはははっはははははは~~!!?」

 さやかの体中を這う50本の指。
 こそばゆさと一緒に、体の芯からなにかをえぐり出されるような感覚がする。

 露出した腋の下にねじこまれる人差し指と中指の刺激。
 脇腹のツボに押し込まれる親指の刺激。
 土踏まずを引っ掻くような数本の指の刺激。

 意識すればするほど、くすぐったさは増幅される。

「やめへぇぇええっへっへへっへっへへへ!!! なんでもするぅうううう!!! なんでもするからぁぁあっはっはっはっははっっはあ!!! くすぐりだけはやめでぇぇぇぇ~~っへへっへへへへっへへへ!!!」

 さやかは泣き叫んでいた。
 しかし、修道士達の指は一向に止まる気配がない。

「ぐがぁああははははははははは、息があっぁあっはっはっはははは、息が出来ないぃいいいひひひひひひひひひ~~!!!」

 さやかは全身を十字架に打ち付けるように笑い狂った。
 首を左右上下に激しく振り回し、涎と鼻水をまき散らす。
 お腹はよじれ、ぷるぷると震えている。
 足の指は生き物のようにビクビクと蠢いている。

「あぎゃっひゃっひゃっひゃっひゃ、なんか……なんかいってぇぇえいぎゃはははははあはははっはあ~~!!!」

 修道士達はただ無言で、さやかの体をくすぐり続けている。
 目の前にいる修道士はまるでコミュニケーションのとれない機械のよう。
 さやかは悟った。魔女は、無慈悲に、孤独に、死んで往くのである。


(完)


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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 美樹さやかちゃんは、攻めも受けも、ノリと勢いでこなせそう。魔女狩りは時空と世界を越える!