「始めましょうか」
「またトップもらうでーーっ」
「させない!!」
東京のとあるホテルの一室にて、
竹井久(たけいひさ)、愛宕洋榎(あたごひろえ)、鹿倉胡桃(かくらくるみ)が楽しそうに声を上げる。
各々、清澄高校、姫松高校、宮守女子高校の制服に身を包んでおり、その熱気は、第71回の全国高校麻雀選手権中堅戦を彷彿させる。

「……」
巫女装束姿の滝見春(たきみはる)は、ベッドの上で四肢を拘束された大の字の仰向け状態で、一人不安そうに眉を寄せる。

「ルールを確認するわね」
言いながら久は、手に持った紙切れを見る。
「一人持ち時間5分、一人ずつ、ここにいる滝見さんをくすぐり、一番笑わせた人の勝ち。
優勝者には『喜界島黒糖』三年分が送られるわ」
「黒糖三年分てどないやねん!」
「うるさいそこ!」
洋榎のつっこみに、すかさず胡桃が追いつっこみをかける。
「(´T△T`)」
「えっと、あと、永水さんから送られてきたファックスによると、
……『普段黒糖と鬼門の話でしか笑わないはるるを、思いっきり笑わせてあげて欲しいのですよー』だそうよ。
久しぶりに二回戦のメンバーに招集かかったと思ったら、なんだか拍子抜けの内容ね」
「ね」
「せやけど、なかなかおもろそーな企画やん。コレ。交通費も持ってくれるゆーてどんだけ太っ腹やねんな」

「道具もこんなに用意してくれてるっ」
胡桃が、テーブルに乗った羽根やら筆やらをちょこちょこいじる。
「じゃぁまず私からだねっ。しょっぱなから鋭くいくよっ」
胡桃は鳥の羽根を構え、独特の不敵な笑みを浮かべた。

「……動けない」
春がわずかに表情を歪めながら、両手両足をギシギシと動かす。
胡桃は春の顔を見下ろしながらフフフと笑う。
「ハルちゃんとは二回戦、共闘した仲だからねっ! 容赦なくいくよっ」
「理由になってへんがな」
「うるさい外野!」
洋榎の差込みも容赦なく撃ち落とす胡桃。
「……今ボケたやん」
「そーゆーのいーからストップウォッチ!」
口を逆三角形にしながら、洋榎はストップウォッチを構える。
「……ほな。よーいどん……です」
「やる気っ! キレが悪いっ! やり直しっ!」
洋榎は一旦口の形を三角にし、一呼吸置いてから、握りこぶしを作って声を張った。
「ほな、いくでぇ!! 宮守はんがやってくれはるでぇ!!? 永水の黒糖はんを笑かしてくれはるでぇ!!? いくでぇ!!?」
「そーゆーのもいーからっ!」
胡桃のキレのある言葉に、再び口を三角にする洋榎。
「……清澄はん。ストップウォッチ代わってや。ホンマにへこむわ」

「ありゃりゃ (この二人、なかなか面白いコンビじゃないかしら?)」

後ろで腕組をしていた久が洋榎からストップウォッチを受け取り、ようやく胡桃の親番が始まる。


「さて、ハルちゃんの弱点はー、ここかなっ?」
胡桃は鳥の羽根を使い、春の首筋をサワッと撫でた。
「んっ!」
春はびくっと首をすぼめ、顔を歪めた。
「ほれほれー」
胡桃は、必死に首をちぢこまらせようとする春の首に、羽根をねじ込みサワサワと撫で回す。
「んっ……や、みぃ、……」
「おっ、なんか……っ」
胡桃は羽根をくるくると回しながら春の首からうなじ、耳の裏へと這わせていく。
「ひっ……んんっ……くぅ……」
びくびくと体を震わせながら、悶える春。
「ふわぁん……っ!!??」
羽根が耳の穴に触れ、春は艶かしい声で鳴いた。
「おっ、エロいっ!」

「ちょいちょい宮守はん、わかってんか? 笑わさなあかんねやで」
「うるさい外野!」
胡桃は春の耳を鳥の羽根でくすぐりながら、キッと背後の洋榎を睨む。
「ふぁぁ……あぁ~……んんん」
顔を赤らめながら春はぎゅっと目を閉じて喘いでいる。

「なぁなぁ、清澄はん。ウチ、宮守女子に嫌われとんかいなぁ?」
洋榎がストップウォッチを握った久の袖をくいくいと引っ張る。
久がストップウォッチから目を離すと、洋榎は悲しそうな顔をしていた。
……と一瞬思ったものの、もともと洋榎はたれ目なので、実際悲しいのか寂しいのか不服なのか、良く分からない表情だった。
「そんなことないんじゃない? 私には、あの子、あなたと絡むの楽しんでるように見えるけど?」
「ホンマか! 清澄はんの目ぇ、節穴やないやろなぁ、デクだけに!」
久は少々カチンときた。声の調子から、洋榎に悪気がないのは明らかなのだが……。
「……そろそろ、二分経過ね。このままじゃ、本当にあの子、少しも滝見さん笑わせられずに終わりそうね」
「清澄はんが二分経過やゆーてんでーっ!!! 宮守はん頑張りやぁーっ!!」
「うるさいそこ!」
「(姫松のこの子、聴牌気配は読めるのに、空気はまるっきり読めない子なのかしら?)」

「ふわぁん……あぁぁん、ひぅぅ……」
「うーん……」
胡桃は羽根で、春の耳から首筋をサワサワ往復させる。びくびく震えながら顔を赤らめる春。
胡桃は目を瞬いた。
「(まずい……っ!!! この子っ、かわいいっ!!!)」
胡桃は、大会では無表情しか見せなかった春が必死に官能的な刺激を耐える姿に、見とれてしまっていた。

「三分経過ー」

「(清澄の声……。残り二分。そろそろ真面目にやらないと、本格的にまずいかなっ)」
胡桃は思考を巡らせながらも、春の鼻の下を羽根でこそこそくすぐってみた。
「ふわっ!! ……ふぁぁぁ……っ! ふわっ……っ!!」
春は鼻をむずむず動かせながら、くしゃみが出そうで出ない、気持ちの悪い感覚に耐え忍んでいるようだ。

「(くぅ……名残惜しいっ! まだ、笑わせるの、もったいないっ!)」

胡桃が春の鼻をさらに、羽根でこすってやると、春は目を閉じたまま嫌々するように首を左右に振る。
「ひゃっ……ひゃぁっ、……ふぁぁぁぁ~~~」
春がくしゃみをしそうだったので、胡桃は春の鼻の左穴に羽根を押し込んだ。
「ふごっ!!!? もごっっ……!!? ひゃめっ……っふんがっ!!」
春は痒そうに、鼻をもごもご動かせた。
「うぅぅ……ひのい……」
鼻に羽根がねじ込まれているせいで、春は鼻声になっている。

「(『ひどい』がちゃんと言えてないよっ……かわいすぎるっ! ハルちゃん、反則過ぎるよっ!)」

胡桃が、ねじねじと羽根を回すと、「ふぁっふぁっ」と春が鳴く。
引っ張り抜くと、びろーんと、鼻水が糸を引き、春の口元から顎にかけて垂れた。
「うぅぅぅぅぅ……~~~~~~~」
春は、強制的に鼻水を晒されたことに少しだけ怒っているようだ。眉を少しだけ寄せ、胡桃を睨んだ。

「(怒った顔もかわいすぎるっ! もっといろんな顔見たいっ。なんで一人5分しかないかなーっ! 短すぎるよっ)」

「残り30秒ー」
「早くないっ!!? 四分経過の合図はっ?」
「やったわよ? 熱中してたんでしょう。ていうか、この時間すごくもったいないんじゃない?」
ぐっと唾を飲む胡桃。
「(まずいっ!! 残り30秒しか……。後30秒で出来ることっ。30秒で……っ!!)」
胡桃は春の鼻水の付いた羽根をテーブルに置き、筆を手に取った。
そのまま、春の鼻の穴を再びくすぐってやる。
「ふぁぁっ!!! ひゃっ……ひゃめっ……あぁぁ、ふわっ!!! ふぁぁぁぁ~~~~」

「終了ー」

「ふぁくしゅっ!!!!!」

久の終了の合図と同時に、春はくしゃみをした。春の少量の鼻水と唾が胡桃の顔にピチリと飛び散る。
「(うん! 満足っ!)」
胡桃はグッと拳を握りガッツポーズ。それを、春は今にも泣き出しそうな表情で「うぅぅ~~~」と睨んだ。


「さぁて、次は私の番ね」
久が腕まくりをして、気合を入れる。
「……」
春がじっと久の顔を見つめている。
「どうしたの? 滝見さん。あの黒糖、すごく美味しかったわよ」
「……拭いて欲しい」
春は気持ち悪そうに顔をゆがめながら呟く。
「あ、なるほど。ごめんなさいね。気付かなくて」
久は言いながら、いそいそとポケットティッシュで春の顔についた鼻水と涎を拭いてやった。
「気持ち悪かったでしょう」
「……感謝」
「鼻かむ?」
ちょっとだけ間があって、春はこくんと頷く。久がティッシュを春の鼻にあてると、春はチンと鼻をかんだ。
「すっきりした?」
再びこくんと頷く春。
「ホントにあの子は……、くしゃみ出させたんなら責任もって顔拭いてあげるぐらい……って、あの子、顔に滝見さんの鼻水と涎つけっぱなしだし。ああいう状態が気にならない性質なのかしら? ねぇ」
久の呆れた声に、春も小首をかしげた。

話の主題である胡桃は、部屋の後ろで洋榎と何やらもめている。
どうやら、このゲームのルールを知ってる知らないの水掛け論らしい。

「あの二人仲良いわね」
「……そう思う」
春は軽く微笑んだ。
「(あら、この子。黒糖なくても普通に笑ってるじゃないの) ……じゃ、始めるけど、痛かったら言ってね?」
「……大丈夫」
春は再び微笑む。
「(くすぐられることに関しては、そこまで抵抗ないのかしら? ……うん。なんだか、妹みたいで、守ってあげたくなるタイプの子よね)」
久は春の頭を軽くなで、後ろを振り向いた。
「お二人さん、いつまでやってるの? どっちがタイムキーパーやってくれるのかしら?」

「せやからな! 笑かすんと、くしゃみさすんて、全然違うやんか」
「だーかーらっ! それは知ってるのっ!」
「ほな、鼻ほじったら、なんで笑うと思たん?」
「あー、そこからまた始めるっ!?」
久の言葉など全く耳に入らないのか、洋榎と胡桃の問答は続く。

「まだまだ長引きそうだから、こっちで勝手に始めちゃいましょうか?」
久は、呆れ顔で春の顔を見た。春も頷く。
「5分、と」
「あ……っ!」
ストップウォッチを設定し直していた久を、春は呼び止めた。
「どうしたの?」
「何分でもいい……」
「え?」
予想外の言葉に、久は聞き返す。
「向こうが終わるまで……何分でも……」
春の頬は少しだけ赤くなっている。期待しているのだろうか? 
「……わかったわ。向こうは向こう、こっちはこっちでゆっくり楽しみましょう」
言いながら、久はストップウォッチをポケットにしまった。

「(そんなに私のこと信用してくれてるのかしら? それとも、実はこの子、意外とマゾだったり……?)」

なんの開始合図もないままに、久の親番は始まった。


「さぁて、どこから始めようかしら?」
久が春の目の前で両手の指をわきわき動かしてみると、春は大人しく目を閉じた。
「(……あら。お任せしますって? こういうプレイってやったことないから、実はどうすればいいのかわかんないのよね~)」

とりあえず、久は春の体に馬乗りになり、両手を春の腋に差し込んでみた。
「んふぅっ……!!」
「うぉっ!」
久は、自分の指先にちゃんと春が反応したことに対して、軽く感動を覚える。
目をぎゅっと閉じ、口元をぴくぴくさせる春。
まだ久は指を動かしていないが、春は「くすぐったさ」がいつ起こるか予測できないため、緊張しているのだろう。

久はゆっくりと指先に力を込める。
「んふっ!! ……くくく、んんっ。ぷふっ……~~~~~~~~んっ」
ゆっくり指を動かされるのが辛いのか、春は頭を左右にぶんぶん振り乱した。

「(これは? 効いているのかしら?)」

さらに久は指をばらばらに、徐々に速く動かしていく。
「~~~~んんんっ!! んふふふっ………ふくっ!! ~~~~~~~~!!!」
久は指先に春の体温を感じる。腋の下が徐々に湿り気を増してくるのがわかる。
久はこしょこしょと指先を這わせるように、春の腋をくすぐる。
「ぷしゅっ!!! んぅぅぅ~~~~~~~~~~っ!!! ~~~~~~っくくく」
春は身をくねくねとよじり、一文字に結ばれた口の先から時折、少々官能的なうめき声を漏らす。

「滝見さん? 大丈夫? やめた方がいい?」
久は指の速度を緩めながら、春に優しく問いかける。
「んふぅぅぅ~~~~ぅぅ~~ぅぅ~っ!!! 」
春はぶんぶんと首を横に振り、うっすらと目を開けて久の顔を一生懸命に追った。

「(続けろってことね。いいわ。……なら、もう少し強めに)」
久は、人差し指に意識を集中させ、春の腋の下の血管を選り分けるようにくりくりと指を動かした。
「くはっ!!!? たはっ!!! ……~~~~~~ぅぅぅぅぅぅん」
一瞬吹き出したような気がしたが、すぐに春は口を閉じ奥歯をかんだ。

「(ここでこの反応……。さっき表面を複数の指で撫でたときよりも数倍の反応。この意味って……)」

久は親指を突き出すようにして、春の上腕部と腋窩部のちょうど境をえぐるようにくすぐった。
「ふわぁぁぁっ!!!? へへっ!! ……~~~~ふひっ!!! ひひひひっ。えへへへっ……んふぅ~~~」
春は口をぱかっと開き、明らかな笑い声を発した。

「(――笑った。この下には神経の束、そして腋窩動静脈がある。皮膚の表面よりも、体内のポイントを意識して責めた方が、この子には効きそうかも。……それならっ!)」

久は親指だけを春の腋の内側に残し、残り四本ずつ、春の鎖骨下あたりに乗せる。
そして、春の乳房上部の付け根、鎖骨下までをぐりぐりとツボ探しをするように、八本指を動かす。
「ぷぁはっ!!!? ひゃはっっ!!! ぶはっ、ひひひひっ、へへへへへっ!!! うぃひへへへへへへへへへへ~~~!!!」

「(なるほど……。親指で刺激した神経やら血管は、束になって肩甲骨の表面を通って、鎖骨の下をくぐる。知ってれば、ポイントを探し当てるのは意外と楽だったわね)」

「まはぁぁっ!!! はははははっ!!! おぴぅふふふふっ!!! いひぃぃぃ~~~。痛いっ!!! ひひひひひひひひひひっ~~~」
「あ、痛い? ごめんなさいね!」
春は笑い声のなかで、確かに「痛い」と言った。久は慌てて手を止めた。

ケホッ、ケホッ、と咳をする春。春の両目には涙が浮かんでいた。
久は、若干調子に乗りかけていたことを反省する。

「(露出した神経を刺激するのはやはり危険……。強弱変化を上手くつけるには、もっと経験を積まないと難しいかしら)」


「滝見さん、大丈夫? ごめんね。痛かった?」
久は春の体からおり、優しく春の髪の毛を撫でた。
春はハァハァと肩で息をし、頭は久の手に預けたまま、ゆっくりと目線を久に向けた。
「……大丈夫。……ちょ、……ちょっと、痛かった、だけ……つ、続きを……」

「(う~ん……。慣れた人なら、上手くくすぐた~い感覚だけ与えられるんだろうけど……)」

久は春の体側に立ち、腕を組んで、春の体を舐めるように見回した。

「(おなか周りもダメだな~。経験不足の私じゃ、最悪滝見さんを痛がらせるだけになっちゃうかもしれないし。……神経が集まっていて、比較的皮膚が厚い部位、か)」

久の目に留まったのは、白い足袋に包まれた春の小さな足だった。

「(そういえば、優希が足袋ソックスがどうの~とか言ってたわね)」

久は春の足下に移動する。春は、荒い息を立てながら、久を目で追った。
春の足袋を履いた足の裏は、若干汚れて見えた。

久はとりあえず、春の右足から足袋を脱がすことにした。
足袋はソックスのように伸縮しないものの、コハゼという留め具が掛糸にひっかかっているだけなので、かなり楽に脱がすことができる。
足袋のかかと後ろをぺろんと両手でめくり、そのまま脱がし取る。
春の素足は、親指と人差し指の間が少し開き気味になっている。足袋を履きなれている証拠だ。

「……え? ……す、涼しい?」
春は突然足元に訪れた感覚に、感想を漏らす。

久は、人差し指の爪の表面で、春の素足の裏をかかとからツツーっとなぞりあげた。
「ひゃっ!!? ひゃぁぁぁぁぁぁぁんっ~~~~」
春の足の親指がひくひくと動く。

「(なるほど。さわり心地に対する反応も良好。ここなら強めにくすぐっても……? ん? 親指? 親指 だ け が動いた? ……。この意味って……)」

久は、春の素足を見る。四本の短く丸い指。人差し指、中指、薬指、小指が、かなりまとまって縮まっていることに気付く。

「(もしかして……っ!)」

久は、春の素足から中指を選び、ぐいっとつまんで反らす様に引っ張った。
「ひゃっ!! ひゃははははははははっ!!? やははっ! ぷひひひひひひひひひひひ、にへへへへへへへへへ~~~」
春は、久がそれほど動かしていないにも関わらず、目に涙を浮かべ大笑いを始めた。

「(やっぱり……。長年、小さめの足袋に履き続けたせいで、親指以外の指が締め付けられた状態に慣れてるのね。てことは、親指以外の四本指は、意識的に動かすことすら難しい――超敏感ポイントっ!)」

「ひょっ!!! ひょっ!!! まぁぁぁっはっはっはっはっはっはっ!!!! まっへっへっへっへっへっへ~っ!!!」
口をだらしなく開け、必死に久に懇願の目を向ける春。

「(ちょっと待ってって? う~ん……、今回はちょっと、勘弁してあげられないかな)」

久は春に向けて微笑むと、春の四本の足指を掴んで反らせ、指の間の部分を撫でてやった。
「あはぁっ!!!! ははははははははっ~~~!!! ひゃはははっ!!! きゃはっ、うひゃはっひひひひひひひひひっ!!! はひっ!!? はひっ、はひっ!!! にひひひひひひ~~!!!」
春は膝をがくがく震わせながら、上半身をねじり、今までに無いほど笑い悶えた。
「ひひひひひっ!!! あはっ!!! だぁぁははっ、だめっ!!!! くすぐっ……ひひひひひ!!! にへへへへへへへへへへへへ!!!」
春のだらしなく開いた口からは涎が垂れる。
「痛くは無い?」
「ひひひひひひっ!!! にゅひひひひひひひっ!!! にゅあぁーっはっはっはっはっはっはっはっ!!! くしゅぐってぃあっ!!! ひゃぁぁーっはっはっはっはっは~~!!!」
春は、小刻みに首を左右に振り、「くすぐったい」と表現する。
「痛くは無いのね?」
「にゃぁぁひひひひひひひひひっ!!! なひひひひひひひひぃぃぃぃぃ~~~っ!!! にへへへへへへへっ!!! いぃぃっへっへっへっへっへ~!!!」
久は、春がただ純粋にくすぐったがっていることを知り、少し嬉しくなった。


「ふひっ!!! ふひひひっ!! ふひぃっ!! にひひひひひひひっ、ひひぃぃん」
「あ」
久が人差し指を、春の足指に這わせていたところ、春の足の親指と人差し指で、久の指がパクっと捕らえられた。
「こらぁ、離しなさーい」
「ひひひ……、も、もう、い、ひひ、むひひひひ……」
春は、若干怯えの混じった引きつった顔をしていた。頬がぴくぴくと笑いを堪えるように痙攣している。

「(へぇ、この子。こんな表情もするんだ)」

久は、向けられた春の瞳の中に、期待というか、怖いもの欲しさ、物足りなさのような感情を見つけた気がした。
「うーん。右手が捕まっても、私には左手もあるのよー? どの指をいじったら離してくれるかしら?」
「ふひ……うぅぅぅ、んぅ~~~~~~~~っ!!!」
春は、頬を膨らませるが、瞳はキラキラしており、むしろこの状況を楽しんでいるように見える。

「それっ!」
久は左手の人差し指と親指で、春の足の小指をつまんだ。
「んぷふぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~~!!!!! くぅぅぅぅぅぅぅうぅっ!!!!!」
春は涙を流し、ぷくっと膨らました頬を真っ赤にして、必死に笑いを堪えている。ぷるぷると、久の指を挟んだ親指が震えている。

「(うわ……。この子、こんな可愛い表情するんだ……。この顔は、反則じゃないかしら?)」

久は、つまんだ春の小指をじらすようにゆっくりと左右運動させた。
「んふふふふふふふっ!!! ふくくくくくくっ!!! んくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!!」
「しぶといのね」
何度も何度も、春の小指と薬指の間を開いたり閉じたり、時々、小指を曲げたり反らしたりしてやる。
春は足の小指の動かし方がわからないのか、久のされるがままになっている。

「んひゅひゅひゅひゅっ~~~~~~、くひゅっ!!! うびゅふぅぅぅぅっ!!!!?」
春は口を頑張って閉じすぎたのか、空気が漏れた拍子に、ピュッと鼻水が春の鼻から飛び出した。
「ありゃりゃ。……後で拭いてあげるから」
「ふぁっぷっ!!? ふふふっくぅぅぅぅぅぅぅぅひゅひゅひゅ~~~!!!」
春は、涙と鼻水で顔を濡らしながらも、くしゃくしゃの顔で笑いを堪えている。
「まだ我慢するの? なら、その口、こちらから開かせてあげましょうか? その方がすっきりするでしょう」
「んふぅぅぅぅぅふぅぅっ~~~~!!! ふぷぅぅぅぅぅぅぅ~~~」
春の反応は、拒否なのか快諾なのか、もはやさっぱりわからなかった。

久は、ニコリと笑うと、春の足指から力任せに自身の右手を引き抜き、開かれた春の小指薬指間を右手で思い切りくすぐる。
「わはっ!!!!!? ぶわっぁっはっははっはっははっはっはっはっ~~!!! にぃぃひひひひひひひひっ! にひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~っ!!!」
たがが外れたように、春は体をびたんびたん打ちつけながら笑い暴れた。
「ホント、可愛らしい声で笑うのね」
「ひひひひひひひ!! にひひひひひ、くるひっ!!! くるひぃぃぃぃっひっひっひっひっひっひ~~~~!!!!」

「えっと……。なァ、清澄はん? もう5分過ぎてんのちゃうの?」
「え」
突然の声に、ハッと久が背後を振り返ると、呆れた表情の洋榎と胡桃が並んで立っていた。

「あ、ありゃ? ……お二人とも、もめごとは、解決したのかしら?」
「とっくになー」
「あんなの、もめごとっていう程のことでもないよっ」
しれっと答える二人。
「(こっちが声かけたときはてんで無視だったくせに!) ……えっと、いつ頃から、ご覧に?」
「足脱がしたあたりか?」
「10分ぐらい前かなっ」
「めっちゃ楽しんどんなーゆーて、なぁ」
「邪魔したら悪いとは思ったんだけどねっ」
「止めな終わらへんのちゃうかー、ゆーて」

「(う~ん……ちょっと、これは恥ずかしかったかなー。というか、やりすぎたかもなー、時間的に。最後滝見さん、苦しいって言ってたし)」

久は乾いた笑いをしながら向き直り、ポケットティッシュで春の顔を拭いてやる。
「えっと、滝見さん……、その、ちょっとやりすぎ――」
春は、久が謝罪しようとしていることを察したのか、フルフルと首を思い切り左右に振った。
「……感謝」
春は、正面の久に向けて、ニコっと微笑んだ。
激しい運動の後のせいか顔がすっかり火照っていた。頬がトマトのように赤い。

「(う~ん。……やっぱりこの子、マゾなのかしら? ……それとも、私、……なんだかちょっと、もしかして、……なにかしら責任取らないといけない?)」

久の心に一抹の不安を残しつつ、いよいよ洋榎の親番が始まる。


「ほな、やろか?」
数分の休憩後、洋榎が手首を鳴らしながら春の元へ向う。
「準備いい? いくよっ。よーい――」
「あーっ、ちょい待ちちょい待ち!」
洋榎は、ストップウォッチを構えた胡桃を制止させた。

「永水の……、ハルルーやったな。袴、しんどいやろ? 紐緩めてええか?」
春は、ぽかんとした。
「……別に必要ない」
「5分やろ? 多分1分以内にきつなってくんで? まー、ウチに任しときーや!」
言うと、洋榎は頭にハテナを浮かべる春にまたがって、春の胸の下で結ばれた緋色のちょう結びを解く。
帯を後ろに返し、春の背中を抱きかかえるようにして、手探りで背中のちょう結びも解くと、袴は形こそ保っているものの、いつでも外せる緩々の状態になった。
「ちょいこそばいでー?」
「……? ふひゃっんぅ!!!?」
洋榎は、春の胸の下に巻きついただけの帯と白衣の間に両手を差し込み、ぐいぐいと隙間を広げていった。
「……んっ、んぅふふっ! くぅぅ~~ん」
「こんだけで笑たらあかんがな」
洋榎は、言いながら、白衣を支えていた腰紐を解いて抜き取った。
さらに洋榎は、春の白衣の襟から手を差し入れ、襦袢を支えた腰紐も外す。
「これで紐は、全部かいな?」
「……一応」
春は顔を赤らめた。紐を失ったことで、春の体は、下着の上に布を巻きつけただけの状態に、ほぼ等しい。

「ほな、一発やったるでー!!! おっしゃいくでーーーー!!!」
「(うるさいっ……けど、この五分ぐらいは我慢してあげようかなっ)」
胡桃がストップウォッチを構えると、洋榎は両手を春に向けて突き出した攻撃準備態勢のまま、チラッ、チラッ、と何度も胡桃の顔を確認した。
「(うんっ! 限りなくウザいねっ!) ……はじめるよー。よーい、スタートっ!」

胡桃の合図と同時に、洋榎は両手を春の帯の内側に差込み、春の脇腹をぐにぐにとくすぐった。
「わっ!!? ふわわっ!!? ひゃはっ!! ひゃはははははっ!!! ふふぁははははははははははははは~~っ!!!?」

「あら、いきなり……」
久が、ほぉと感嘆の声を上げる。

洋榎は春のおなか周りから、脇腹をぐるぐる人差し指で強弱緩急をつけながら、かき回す。
「あひゃっ!!!? ひひゃぁっ!!! にんひひっひひひひひひひひひひっ~~~!!! ひひひひっ!! うひゃぁひゃひゃひゃっ!」
「なんや、腹回り汗吸っとんやないか」
「あはっ!!! ひゃはっ!! ひふぁぁっ!!!! はははっ! はははっ!!」
髪の毛を振り乱し、体をくねらせて笑い悶える春。
がくがくと体をめちゃくちゃに揺するため、どんどん服がはだけてくる。

「どや!! これが、元こちょばし部エースの手さばきや! 初心者と一緒にしてもろたら困る」
「ひひひひひひっ!!! うひゃぁぁっはっはっはっはっはっはっは~~~~!!!!」
「格が違うわ」

「(すごい自信ね……)」
「(バカみたい!) ……1分経過」

「はっ!!? はっや! その時計おかしーやんっ!!」
「……」
胡桃は無言でストップウォッチの液晶画面をチラリと見、なんの反応も示さずに洋榎に顔を向けた。
「(……ん? うるさいて、きーひんのか?)」
洋榎は口を三角にした。

「ま……まぁ、元こちょばし部っちゅーんは、嘘なんやけどな」
ひたすら大笑いする春をくすぐりつづけながら、洋榎がチラリと胡桃を見ると、また何の反応もしてくれなかった。


「(……。……。さみしーやんっ!!!!)」

洋榎は腹いせに、両手をもぞもぞと春の体の上を這わせていき、乳房の横から背中に向ってごりごり探るように肩甲骨と肋骨の間辺りをくすぐった。
「おはぁぁっ!!! おひゃぁぁっ!!!? いひひひひひひひひひひっ!! ぐふっっ!! うふふふふ」
「骨ごりごりするん、効くやろ~?」
「あはははっ!! はははっ、うくくふふふふふふふっ~~~~!!!」

「(ウチの指でよぉ笑てくれるんはええねんけど……)」

洋榎は親指で春の側胸の肋骨をしごく。
「いひひひひひひひっ!!! きひひひひひひひひひっ~~~。にぃぃぃっひっひっひっひっひっひっひー!!!」

「(あんまコミュニケーションとれんと、つまらんなぁ。……宮守もダマなってもーたし)」

洋榎は手を止める。
「ぁっ……けほっ……けほっ……ひぃ………」
ぜぇぜぇと深呼吸する春。
襟が肌蹴て、和装下着が見えている。
「ハルル? へーきか?」
春は涙目でこくりと頷く。
「ほな質問や。清澄とウチ、今んとこ、どっちの勝ちや」
「え……」
春は、戸惑いながら、チラチラと部屋の隅に立っている久を見た。

「(えっ、私!?)」

「ええわ。わかった」
洋榎はふぅっと深めに息を吐く。
「清澄はん、やったなぁっ! 今んとこ黒糖に一番近い女やで!」
「(私ってそんな甘っちょろい女に思われてるのかしら……)」
久は複雑な気持ちを、乾いた笑いで誤魔化した。

「……さて。技術はウチの方が圧倒的に上や。やのになんで、こんなことになるんか」
「(この人、語りだしたよっ!)」
胡桃はストップウォッチを見ながら、つっこみたい衝動に堪えていた。

「ハルルー。清澄んこと、好きやろ?」
「!?」
「はぃっ!?」
春と久が同時に反応した。
「いやいや、変な意味やのーて。普通に、好きやん。ウチも好きやし……って、なんでそない動揺しとんねん!! って、清澄もかいっ!!」

胡桃はぽかんとして、
「(きもちわるい……!!)」

「まー、なんやかんやゆーて、こそばいーて感じるんは、互いの信頼ちゅーもんがめっちゃ影響すんねん!」
「(……一体何の講義かしら?)」
「3分経過ー…… (って聞いてないか)」

「せやからウチはな――」
洋榎は春に顔をぐいっと近づけた。
「――技術で、その信頼を超えたるわ! ハルルーよ! 絶対に、ウチの勝ちやぁ言わしたるでぇっ!!!!」
「(なんか一人で盛り上がってるよっ!?)」

「宮守はーん? 時間あとどんくらい?」
「……2分切って、残り約1分半」
「おっしゃ、そんだけあれば……って、そんだけかっ!!? なんでもっとはよ教えてくれへんねん!!!」
洋榎が胡桃に向って、ガーっとライオンの像のような形相で怒鳴る。
「(やっぱ聞いてないしっ! うん我慢無理っ!) もう、だから喋りすぎっ! その時間が無駄って気付かないかなー!?」
「時間気にして喋れるほど器用やないわっ!! 教師かっ!」
「だからっ、その時間っ! 文句言う時間で手を動かしなよっ! はい、そうしてる間に1分半切ったよっ!」
「なんでやねん!!!」
「時は刻まれるものなのっ!!!」
「哲学か!!!」
「常識だよっ!!!」

「(ホント、この二人、仲良いわね)」
久が呆れ笑いをしながら春の顔を見ると、気持ちが通じたのか、春も久に向けて微笑み返した。


「さぁオーラスや! ハルル、覚悟しぃや」
春に馬乗りになった洋榎は、わきわきと両手の指を動かす。
「そういうのやってるから――」
「っかぁしぃな! わかってんねん!!」

洋榎は胡桃を黙らせると、春の白衣、襦袢の襟を両手でまとめて持ち、ガバッと開ける。
「……んぅ」
春は恥ずかしそうに顔を赤くする。
洋榎は和装下着越しにも大きいことがわかる春の乳房の下の部分、ちょうど肌の露出した鳩尾の部分に人差し指を置き、肋骨を下に向けてなぞっていく。
「ふひょっ!!!? ひゃはっ!! ふひゃっ!!! あぁっあっああっ!!! はぎゃっ!!! うひぃっ!!!」
春は目をぎゅっと閉じぶんぶん顔を振って、断続的な笑い声を上げる。

「どや? きっついやろ? ここは肋軟骨ゆーてな、やっわーい肋骨や」
言いながら指でいじいじと春の素肌を撫でる洋榎。
「きひひっ!!! うひっ!!? あひゃぁん!!! ひぎぃぃっ!!! ぶひゃっ!!? なひぃぃんっ!?」
「素人には真似できひんで? 敏感な部分や。ちょっとでも力加減間違ーたら痛いだけになってまう」
「ははっ!!? あははっ!!! ひぎぃぃっ!!! ひひっ!!! あひゃぁぁぁっ!!」
「こぅな、下まで行ったらな、こうやって、腹の中からひっかきだすようにして」
「あひゃはぁっ!!!? はっはっはっはっはっはっはっはっ!!! にょほっ!!? ぎひっ!!! ひひひひっ!!!」
洋榎は指先を器用に使い、くるくると春の内臓を焦らす。
「ぐひっ!!! ひ~はっはっはっはっはっはっ!! あひんっ!? ひひんっ!! うひゃぁぁっ!!」
春はたまらず、口から涎を吹き出す。

「ほんで、お待ちかねの脇腹やっ!」
言うと、洋榎は春の袴の前部分を上からベロンとめくる。
わしゃわしゃと十本の指で、春の脇腹をくすぐる。
「ひゃははははっはっ!!! にぁぁぁーっはっはっはっはっはっはっはっ!!! ひゃぁぁっはっはっはっはっはっはっ!!!! ひひひひひっ!!! にひっ!!? いひっ! いきがぁぁっはっははっはははは~~~!!!」
「せやなー。腹は大事な内臓やら神経の宝庫や! そんな上でうねうね異物が蠢いとったら、そりゃ笑いたなるわなー!」
「いひひひひっ!!! ひひひひひひっ、ひゃ……っ!!! いきっ!! ひひひひひ、いひぃぃぃぃぃぃ~~~!!!」
拘束されているにもかかわらず、春は飛び跳ねるように体をよじって笑う。
「揉んでほぐしたり、指で突いたりするんもええが、肌の表面の神経を直にこそこそ刺激するんも一興やろ!」
「あひひひひひっ!!! おねっ!! ほねぇぇっ! あひゃっ、ひぃぃっひっひっひっひっ~~」

「終了ー」

「はっ!? まだやろっ!! ってか1分前宣言してへんやろっ!!!」
洋榎が、手を止めずに胡桃につっかかる。
「また聞いてないしっ! ちゃんとしたよっ! ……ちょ、もう終りだって!」
「ワンチャンっ!!! ワンチャンまけてやっ!!!」
「何言ってるのっ」

「ひひひひひひひひっ!!! とめっ!!! きひひひひひひひいひ~~~」
洋榎が一向に指の速度を緩めないため、春はまともに喋ることもできずにただ笑わされ続ける。

「後5分でええんや! 一本場! 一本場! ロスタイム! ロスタイム!」
「倍じゃんっ!」
「ほな、最後腰っ! 腰だけやったら満足するわ! もうやーやー言わんっ! 頼むわー!」
「……」
胡桃は春の顔を見た。
春は目から涙を流し、顔を真っ赤にして笑い悶えている。開きっぱなし口からは涎がだらだら流れ出、鼻水まで噴出し始めていた。

「(ハルちゃん、かわいい……) もう、好きにすればっ!?」
「えっと……一応、滝見さんに確認してからの方がいいんじゃない?」
「10分以上ぶっ通した奴が何言うとんねん!」
「うぐっ」

「ハルルー? ええやんなぁ? 腰だけっ!!! 腰だけやらしてーな!! な?」
「ひひひひひひひひっ!!! はがっ!! あがっひぃっ!!? いっひっひっひっひっひっひ~~~っ!!」
春は返事をしたいようだが、完全に洋榎のくすぐり攻撃に翻弄されている。

「……流石に滝見さん、その状態じゃ喋れないんじゃないかしら?」
「おぉっ! せやな。賢いやん、清澄」
「(……激しく馬鹿にされた気がするわね)」

「……ヘェ、ヘェ……ハァ、……ケホっ……。こ、腰だけ、なら……」

春の許可が下り、洋榎の正真正銘最後の親番が始まる。


「いやぁ~、やっぱ時間制限ないってええなぁ~」
「いひひひひひっ、ひひひひひひっ!!! あぁぁ~っはっはっはっはっはっは~~~」
洋榎は、春のおなかをくすぐりながらしみじみと言う。
「そこ腰じゃないよっ!」
「わーってるわーってる! ただの余興やん」
洋榎は胡桃を軽くあしらうと、指を春の腰骨に乗せる。
「ひぅぅんっ……こ、腰だけって……」
春は涙目で訴える。

「すまんな。……手ぇ滑ってん」
けろっと言うと、洋榎は、指を春の腰骨にそって這わせた。
「ひゃはんっ!!!? ひぅうっ!!! ひひひひっ!!! くひゃぁぁっ」

「知っとるか? この出っ張っとる部分をな、腸骨ゆーんや」
洋榎は言いながら、春の骨の出っ張りをちょいちょいと弾くようにくすぐる。
「きゃははははははっ!!! ひゃははははっ!!! ふひゃひゃひゃひゃっ!!? いぃぃひぃぃっ!! ひぃぃぃんっ」
「腸を上乗っけて支えとんねんなー、えらいやろ?」

親指を、上から骨をえぐりだすような動きに変えると、春は上半身をねじりながら暴れた。
「ふひゃはっはっはっはっはっはっ!!! くるひっ!!! うひひひひひひひひひひいひひっひひひいいひぃぃぃ」
春の四肢が苦しそうにビクビク動く。
「ほひょっ!!! ほんとにぃぃひひひひひひひひひひひひっ!!! くる……っ!! ひひっ! うひひひひひひひひひひ~~」

「どや? ぼちぼち勝敗は決したんちゃうか?」
洋榎が春の腰周りを揉み解しながら言う。
「いひひひひひっ!!!! ひひひひひひっ!!! あっぁっはっはっはっはっはっはっ!!!」
ぶんぶんと左右に首を振る春。
「ほんまかぁ~? 腹ん中身はそう思てへんのちゃうか~? うりうり」

洋榎は両手を春の尻の方へ滑らせる。
「ひゃはっ!!! ははははははっ!!! むひっ!! むひぃぃぃっひっひっひっひっひっひ」
「こそばいやろ~~? ケツん中心向いてほじるんがコツやねん!」
「うははははははっ~~~!!! もふっ!!! もぉっ!!! やっーっはっはっはっはっはっはーー!!」

目を見開いて、笑い狂う春。
焦点が合わなくなってきたところで、洋榎は手を止めた。
「ひひひひっ!! ひひっ!? ……げっほっ……けほっ、……けほっ」

「しまいにしよか。おおきにっ!」

歯切れ良く言うと、洋榎はベッドから飛び降りた。
「結局清澄に勝てへんかったな~。ま、正攻法だけやないっちゅーこっちゃ! ハルルお疲れやったな!」
「ハルちゃんお疲れっ!」
「滝見さん、大丈夫?」
久が春の元へいくと、春は少し咳き込んでから、こくこくと頷き微笑む。

ぴ~ひょろひょろ~♪

「あ、なんか来たよっ!」
胡桃がホテルのファックスから紙を抜き取る。

「んっ。永水から。『皆さんルール違反しすぎですよー。時間オーバーは失格。笑わせてないのも採点外ですよー』」
「ほれ見てみぃ、くしゃみ採点外やん」
「うるさい、失格っ!」
「あら? どこかでモニターでもしてたのかしら? 滝見さん、どうなの?」
「……? 何も、聞いてない」

胡桃が続ける。
「続き読むよっ。『――というわけで、全員チョンボ! 今姫様がお仕置きのためにそっちへ向っているので、皆さんきっちり罰を受けてくださいですー。ルール違反を誘発したはるるは言語道断ですよー』 って、え?」

「なんて?」
「はぃっ?」
「……え」

室内の四人が唖然としていると、部屋の来客ベルが鳴った。

『九面の誰が来るかはお楽しみ。姫様の親番、まもなく始まりますよー』


(完)