St.ヒルデ魔法学院初等科四年生高町ヴィヴィオ(たかまち――)は目を覚ました。

「……な、何、コレぇ……?」

 ヴィヴィオは目をしばたたき、声を出した。窓一つ無い薄暗い部屋の真ん中に置かれた台の上で、彼女は、仰向けに寝た状態で、両腕をまっすぐ伸ばして手首を揃えて縛られ、両脚を大きく開いて各足首を縛られた、逆Yの字で拘束されていた。
 首を持ち上げると頭が痛んだ。

(私……、一体何を……)

 ヴィヴィオは自分が、魔法学院初等科の制服を着ていることに気付く。足元を見ると通学用の茶色のローファーを履いたままだった。

(そうか、私、帰る途中……)

 ヴィヴィオは学校からの帰宅途中、突然何者かに襲われたのだった。一瞬のことで、まったく反応できなかった。

「目を覚ましたね」

 いきなり男の声がして、ヴィヴィオはびくっと肩を震わせた。
 見ると、扉の前に覆面をつけた人間が立っている。顔はわからない。
 ぞろぞろと同じように覆面をつけた者達が入ってきた。

「……だ、誰っ?」

 覆面たち十名はヴィヴィオの言葉を無視して、ヴィヴィオの体を取り囲んだ。
「ヴィヴィオちゃん」
 覆面の一人が言う。
「『魔法少女リリカルなのはViVid』アニメ化おめでとぉぉぉっ!!」
 覆面たちが一斉に声を上げた。
「え……っ?」
 ヴィヴィオはきょとんとした。
「アニメ化を祝して、ヴィヴィオちゃんをみんなでくすぐろうということになりました」
 覆面の一人が言った。
「……はぃ?」
 ヴィヴィオは状況が読み込めずきょろきょろと目を動かせた。

「ではさっそく、3、2、……」
「ちょ、ちょっ! ちょっと待って」
 覆面がいきなり秒読みを始め、足下の二人がヴィヴィオの靴を脱がせ始めたので、慌ててヴィヴィオは声を上げるが、
「1、0」
 覆面たちの指が一斉にヴィヴィオの全身へ襲い掛かった。

 二人が腋、二人があばら、二人が脇腹とお腹、二人が腿と内股、二人が足の裏である。

「きゃはははははははははっ!? やっ、なっ!! やぁぁ~~っはっはっはっはっはっはっは!!!」

 突然の刺激に大声で笑ってしまうヴィヴィオ。
 体中に計百本の指が這い回っている。

「アニメ化おめでとうヴィヴィオちゃ~~ん。お兄さん達うれしいよぉ」
 腋の下をこちょこちょとくすぐっていた覆面男が言う。
 男は半そでの裾から片手をつっこみ、すべすべのヴィヴィオの腋指先で撫でる。

「嫌あぁぁあっはっはっはっはっはっ!!!! やめてぇぇぇ~~っはっはっは、くすぐったいよぉぉ~~っひゃっひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」

 ヴィヴィオは必死に腋を閉じようとするが、万歳に固定された腕はびくともしない。

「アニメのヴィヴィオちゃんも、こんな風に動いてくれるのかなぁ~~?」
 肋骨を両手で揉むようにくすぐっていた覆面男言う。
 ヴィヴィオは必死に上半身をよじるが、可動域は狭く、覆面たちの指からは逃れられない。

「やめてぇぇっひゃっひゃ、やめてってばぁぁぁはははははははははっ!!!」

 ぶんぶんと首を左右に振って、目に涙を浮かべてヴィヴィオは笑い続ける。

「ヴィヴィオちゃんのお腹すべすべ~~」
 お腹をくすぐっていた覆面男が勝手にヴィヴィオのベストとシャツを巻くり上げ、白いお腹や脇腹を指先でくすぐる。

「うゎあぁぁっはっはっはっはっ!!! やめっ!! やだぁぁぁはははははははははっ、えっちぃぃ~~えっちぃぃっひっひっひっひっひ!」

「おへそは~~?」
 別の覆面男が、人差し指をヴィヴィオのおへそへずぽっと差し込む。

「うひゃぁあぁぁあっ!!!? ははははははっ!! やめっ、駄目だよぉぉ~~~ひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」

 ヴィヴィオは涙を流し叫んだ。

「膝小僧にあざができちゃってるよ~~? ヴィヴィオちゃんお肌には気をつけないと~~。アニメ化するんだからぁ~~」
 脚をくすぐっている覆面男が言う。

「きゃははっ、そんっ、そんなっ!!? アニメ関係ないぃぃぃ~~っひっひっひっひっひっひ!!!」

「いや~~。こんな綺麗な白い脚は大事にしてもらわないとね~~」
 大きく開かれたヴィヴィオの内股をくすぐっていた覆面男は言うと、内股のツボにぐりっと人差し指を入れ、震わせた。

「あひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!? 嫌ァァっ!!! うひぃぃぃっひっひっひ、あにゃあぁぁははははははははははっ!」

 ヴィヴィオは頭を前後左右に揺り動かして泣き叫んだ。
 
「足はどうかなぁ~~? 豆なんかできてないかお兄さんがチェックしてあげよう」
 言いながら足の裏をくすぐっていた覆面男が、ヴィヴィオの白いソックスをぐいっとひっぱった。

「やぁぁっはっはっはっはっはっ!!! やめてぇぇ~~っ!!! 脱がさないでェぇぇぇっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」

 ヴィヴィオはぶんぶん首を左右に振る。
 足首から先をくねらせて抵抗するが、その抵抗もむなしく、ずぽっと一気にソックスは引き抜かれてしまう。
「おお~~、案外綺麗だねぇ。感心感心~~」
 覆面男は、言いながらヴィヴィオの素足の足の裏へ十本の指を這わせた。

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ、やぁぁぁっははっはっはっはっはっは!!!?」

 カリカリと両足の裏をくすぐられ、涎をだらだらとたらして笑うヴィヴィオ。
 足の指はぐねぐねとくすぐったそうにもがいている。

「もうやだぁぁぁぁひゃっはっはっはっはっはっ!!!! 駄目だってばぁぁはっははははっはっ!!! 何でっ! 何で、あにゃっ、にゃははははっ! アニメ化されたからってくすぐられるのぉぉ~~ひ~~ひゃはははははははっ!!?」

 ヴィヴィオの疑問は、永遠に解決されない。


(完)