ごくごく普通の女子高生福田(ふくだ)は、深夜番組『こちょこちょチャレンジ』のバイトスタッフであった。
 仕事内容は、番組収録時に『こちょこちょ隊』としてアイドルをくすぐること。
 普段は前髪ぱっつんの耳だしボブヘアをチャームポイントにしているが、仕事中はいつも、頭からつま先まで全身黄色タイツ姿で、顔に面をつけているため、カメラ越しには性別すらわからない。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!! うへへへへへへへへ……っ、いぃぃ~~っひっひっひっひっひ!!!」

 X字に拘束され、首、腋、お腹、太腿、足の裏を福田を含む8名の『こちょこちょ隊』にくすぐられているのは、こだまプロダクション所属のアイドルユニット『新幹少女(しんかんしょうじょ)』のロリ担当(?)の、つばめであった。

「ぎゃひひひひひひひひっ、ギブっ!!!! ひぃぃっひっひっひ、ギブギブギブぅぅぅ~~うひゃひゃっ!!!」

 つばめは、黒髪ツインテールを振り乱して笑い狂っている。
 同局の『新幹少女』の冠スポーツバラエティ番組で甲子園特集をやったばかりということもあって、チアリーディング衣装での出演であった。
 タンクトップのためにがら空きになった腋の下や、裾から丸見えのおへそ、短いスカートから伸びる太腿に、サテン手袋やゴム手袋をはめた『こちょこちょ隊』の指が走る。
 福田はつばめの左足の裏を担当してた。足下にはつばめから脱がし取ったチアシューズと、膝まであったラインソックスが散らばっている。
 指にゴムいぼのびっしりとついた手袋によるくすぐりは非常にきついらしく、つばめの足の指は苦しそうに開いたり閉じたり滅茶苦茶に動いていた。

「あひぃぃ~~ひゃひゃひゃっ!!? ギブだってぇぇぇ~~っははっはっはっは!!!」

「おーっと、つばめさん。必死に『ギブアップ』を連呼しますが、残念! 番組のルール上、最低10分はくすぐり続けることになっています! あと2分、がんばってくださいねーっ」
 実況のアナウンサーが無慈悲に煽り立てる。

「ぎゃぁあああっはっはっはっはっ!!! 嫌ぁああぁはははは、やめてぇぇぇっはっはっはっ!!! もうやだぁぁぁひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!!」

 アイドルのかわいらしい顔は、醜くゆがみ、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている。
 番組プロデューサーは鬼だな、と福田は思う。くすぐりながら、カメラの前で舌を出して泣き叫ぶトップアイドル(笑)のつばきに同情する。

 2分たって、『こちょこちょ隊』はセットからはけた。
 セット裏でペットボトルの水を飲む福田。
 つばきの出番が終了した後、実況アナウンサーは声を張り上げた。
「さーて、続いての挑戦者はー?」
 ドラム音と一緒に、セット中央に設置されたカーテンが開く。
「765プロからお越しの、如月千早(きさらぎ ちはや)さんです!」
 効果音とスモークの中、登場した千早は「どうも」と無愛想な挨拶をする。千早はつばきのような気合の入った衣装ではなく、普段着のような、シャツとデニムパンツというスタイルであった。
「おっと千早さん。長袖長ズボンとは、完全武装ですねぇ~~」
「いえ、そういうつもりでは……」
 千早はアナウンサーのノリに絡みづらそうに受け答えをする。
 軽い雑談、アナウンサーによる千早の実績、活躍の紹介、宣伝後、
「運命のルーレットぉぉぉっ!」
 実況アナウンサーが仰々しく言うと、再びスモーク演出とともに華美な装飾を施された電光板が出現する。
「スイッチぃぃぃオン!!」
 千早が手前のボタンを押すと、電光板に大きく『30』『STOCKS』と表示された。
「うぉぉ~~っと! 番組最長の30分がでましたーっ! 100万円獲得のためには30分間『こちょこちょ隊』によるくすぐりに耐えなければなりません! もしギブアップしても、半分の15分間は強制的にくすぐられます! そ、し、て、スト~~ックス! せっかくの完全武装が台無しだぁぁ! 拘束方法はさらし台による足拘束に決定しましたぁ!」
 千早は少しだけがっかりしたような表情を見せた。アナウンサーが言ったように、長袖長ズボンでくすぐりへの耐性を少しでも上げようという意図があったのだろう。
 スタッフである福田は知っている。
 電光板の表示は厳正なる抽選でもなんでもなく、番組ADが恣意的に操作をして表示しているのだ。
 露出の多い服装だとX字、スカートだと各種開脚椅子など、表示項目はだいたい決まっている。くすぐる時間については、ほとんど番組プロデューサーの独断で事前に決定されている。

「千早さん。当番組『こちょこちょチャレンジ』の参加は今回がはじめてということですが、今のお気持ちはいかがですか?」
 靴と靴下を脱がされ、木製のさらし台に、足10本の指までがちがちに拘束された千早にアナウンサーが質問した。
 千早は少し困ったように眉を寄せて、
「……体を触れられるのはあまり好きでないので、正直、あまり気乗りはしません」
「『くすぐり』という行為にどんなイメージをお持ちですか?」
 続いて投げかけられたアナウンサーの質問に、千早は「そうですね……」と考えをめぐらせるように間を空けた。
 そろそろ『こちょこちょ隊』の出番だ。
 福田は面を被り、他のメンバーと一緒にセット裏でスタンバイする。
「こどもの戯れ、という感じでしょうか……」
 千早は自信なさそうに言うが、福田にはかなりのビッグマウスに聞こえた。
「あまり考えたことがありません」
 アイドル如月千早としてのイメージを保つためだろうか、千早はそう付け加えた。
「さきほどのチャレンジャーの笑い乱れる姿を見てどんな感想をお持ちになりましたか?」
「正直、ちょっと節操が無いな、と」
 こちらは即答だった。
 福田は驚いた。他のメンバー達も一様に驚いたような反応をしている。
 おそらく千早はあまり他人にくすぐられた経験がないのだろう。その苦しみを知らないようだ。
 チラリと番組プロデューサーの顔を見ると、ものすごく嬉しそうに笑っていた。
 アナウンサーは嬉々として、
「さすが千早さん。アイドルたるもの、あんなに笑い狂う姿を人前で晒すなんて、恥さらしだ! とおっしゃるわけですね!」
 千早の発言を完全な挑発として昇華させた。
「あ、いえっ、そこまでは――」
「でも千早さん! 当番組屈指の『こちょこちょ隊』の攻撃を耐え切る自信がおありなんですよね?」
 人前で大口を開けて無様に笑うことは、アイドルとしてのプライドが許さないのだろう、千早は焦りを隠すように口を引き締めてから、
「……まぁ、そうですね。あそこまでは、笑わないと思います」

千早前振り(DDD様)

 番組プロデューサーは「全力で」と合図を送ってくる。
 アナウンサーの仰々しい紹介で、『こちょこちょ隊』はセット上に飛び出した。

 千早は『こちょこちょ隊』のくすぐりに、10秒ともたなかった。
 メンバーが足の裏に4人、脚から上半身にかけて4人陣取り、一斉にくすぐりはじめ、千早は数秒間目を見開いて、口元をひくひくと動かして耐えたものの、すぐに歯が見え、こじあけられるように口がゆっくりと開くと、喘ぐような悲鳴を皮切りに、馬鹿笑いを始めた。

「ひゃはははははははっ!!? やめてぇぇ~~ふひゃひゃ、やめてぇ~~っはっはっはっはっはっは~~っ!!!!」

 千早は普段テレビで見せるクールで知的なイメージを壊すような、だらしのない表情で笑い、もがく。
 首を左右にぶんぶんと振り回し、涙や汗が飛び散った。

「はひゃひゃひゃははははははっ!!! 嫌ぁぁっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」

 福田は千早の左足上部を担当していた。
 ゴムいぼ付きの手袋でわしわしと反った足の裏をくすぐり、ぐりぐりと足の指と指の間をほじる。
 拘束された千早の足は、ひくひくと痙攣するように震え続けている。

「ひゃめっ、やめてくださぃ~~っひっひっひっひ!!」

「おんやぁ、千早さん? アイドルが大口開けて笑うなんて節操ないんじゃなかったんですかぁ~~?」
 アナウンサーが意地悪く言う。

「ひゃっはっはっはっ!!! こんなのっ、こんなの無理無理ぃぃっひひひひひひひ~~っ! ギ、ギブぅぅ~~ふぁっはっは、ギブアップぅぅ~~っはっはっはっは!!!」

 千早は口元に涎の筋を垂らしながら言った。
 福田の位置からは、千早の表情が良く見える。
 事前に強気(とも取れるよう)な態度を示した千早が、こうも見事に崩れてくれると実に絵になる。
 おそらく編集によって、千早のビッグマウスはかなり際立たせられるだろう。そうすることで、対照的なこの情けない笑顔が、より一層映える。

「おーっと早くもギブアップ! しかし残りは10分以上。果たして千早さんは耐えられるのでしょうか~~?」
 アナウンサーはご満悦の様子で言う。
 この番組の関係者は、本当に変態ばかりだ。

「はひひひひひひひっ!! お願いぃぃひひひひひひひひひ、やめてぇぇぇえひゃひゃひゃ!!!」

 カンペで「もっと激しく」と指示される。
 福田は両手でがりがりと、千早の白い素足を掻き毟る。

「ふひひひっ、ひぃぃ~~っひっひっひっひ、あひゃぁぁあぁひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」

 千早は恥もプライドもかなぐり捨てたように、舌を出して激しく笑う。
 そんな姿を見て福田は、ゾクゾクと高揚感を得る。
 福田は番組制作陣に漏れず自身もまた変態だと自覚している。
 彼女にとって、現役のトップアイドルを番組に託けてくすぐりまくれるこのバイトは、最高の生きがいだった。

「嫌あぁぁあはははは!!! もぅやだぁぁ、はひゃぁぁあぁっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ~~っ!!!」

 次回の収録ではいったいどんなアイドルをくすぐることができるのか、福田は胸を躍らせながら、一心不乱に千早の足の裏へ指を走らせ続けた。


(完)


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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 本編に挿入いたしました絵は、『DDD産業』のDDD様に描いていただきました。その絵を元に、妄想を膨らませて書きました。二次創作からの三次創作からの四次創作? 違うか。
 8月2日の記事 ~現役アイドル達の足の裏をくすぐっちゃいました!~ のコメント欄からの派生作品です。
 さらに色つきも! ありがとうございました!
千早本番(DDD様)
 キャラメルが食べたくなりますね! グリコさんとこのハート型のアレ、ミレーの枕みたいに大袋で売ってないかしら。
 今回は番組PとEがかなり権力強い設定。
 前回のAVを作っていた461事務所は裏ルート専門の設定でした。