【裏切り者へ最終勧告】

 せっかく最後のチャンスをあげたのに……。
 忠告を聞き入れてもらえなかったようで残念です。
 近々……裏切り者への制裁を下します。

      『ラブリーマイエンジェルあやせたん☆ファンブログ』より


 新垣あやせ(あらがき あやせ)の盗撮写真をアップロードし続けたブログ『ラブリーマイエンジェルあやせたん☆ファンブログ』。
 高坂京介(こうさか きょうすけ)から、そのブログ管理人『さやか』の発言が過激になっていると報告を受け、御鏡光輝(みかがみ こうき)は調査を進めてきた。今回の更新は、前回の記事以上に過激で、犯行予告ともとれる内容だった。

『事態が深刻化してきたので、事務所と相談して新垣さんに現状を伝えることにしました。何も心配は要らないから、安心してください』

 御鏡光輝は、そう京介にメールを送ろうとして、思いとどまった。
 もとは京介から受けた相談だとは言え、京介は翌日が大事な模擬試験。こんなメールを送りつけて、余計な心配をさせることはあるまい。
 御鏡は作りかけのメールを削除し、新垣あやせに直接連絡を取った。

○○○

 翌日。
 御鏡とあやせは恋人同士のフリをし行動した。『さやか』をおびき出すためだった。二人が手をつなごうとした瞬間、フラッシュがたかれた。姿を見せた黒いコートにキャスケットとサングラスを着けた『さやか』と思しき人物を、二人は拉致し、とあるアパートの一室に拘禁した。しっかりと身構えた状態のあやせの身体能力をもってすれば、造作もないことだった。

 ベッドのヘッドレールに引っ掛けた手錠(あやせが持ち歩いていた)に両手首を拘束された『さやか』は、「人」の字に仰向けに寝かされている。
 外では厚底のブーツを履いていたために長身に見えたが、脱がしてみると身長は155cm程度で、キャスケットとサングラスを奪うと、ミディアムヘアの童顔の女の子であった。
「離せぇっ、このぉっ! 本物のあやせちゃんを返してよーーっ!」
「なんですか、本物って……そもそもあなた、誰ですか」
 あやせは呆れたように『さやか』を見下ろす。
「あやせちゃんのファンだよ! ずっと前からの! 毎日会ってたのに! 毎日! ……あたしの知ってるあやせちゃんはこんなことしないっ! 返せよっ! お前はあやせちゃんのそっくりの偽者なんだっ! よくもあたしを騙したなっ! 偽者め!」
 ガチャガチャと手錠を鳴らして暴れる『さやか』。
 喋り方からして、かなり幼い。
 おそらくは中学生、下手をすると小学生かもしれない。
「……まあいいです。まだ子供みたいですし、二度とこういうことをしないと約束してくれるのなら――」
「うるさいっ! あやせちゃんがっ、あやせちゃんが裏切ったのが悪いんじゃないかぁ! 制裁っ、あたしは裏切り者に制裁を下さないといけないんだあっ!」
 激昂する『さやか』を見て、あやせは、はぁとため息をつくと、
「これは、お仕置きが必要なようですね?」
「新垣さん!? 目がすごく怖いけど、……手荒なことは駄目だよっ?」
 御鏡の言葉にあやせは、
「心配要りません。殺しませんので」
「……い、いや、殺すって」
「カナコのお仕置きで、いつもやっていることですから」
 あやせの目力に押され、御鏡は口をつぐんだ。

●●●

 数分後。

「やめてぇぇぇええぇぇ~~あぁあぁぁっはっはっはっはっはっはっは!!!!」

 あやせは『さやか』に馬乗りになって、『さやか』の腋の下をくすぐっていた。
 外で着ていたコートは脱がしたため、『さやか』はタートルネックのトレーナーとスカート、黒いハイソックスという姿。『さやか』は足をばたつかせて、大笑いしている。

「あっはっはっはっはっ!!! いやぁぁあははははは、やめてぇ~~おねがいぃぃ~~ひひひひひひひひひひひ!!!」

「じゃあまずお名前を教えてください」
 あやせは細い指をすばやく動かし、『さやか』のアバラに食い込ませながら言った。

「だははははははははっ!!!? かひゃっ!! かきゃひぃぃ~~っひっひっひっひ、筧沙也佳(かけい さやか)ああああっはっはっはっはっはっは~~!」

 沙也佳は髪の毛を振り乱して笑いながら答える。
「筧さん、ですね? 歳は?」
 いいながらあやせは、沙也佳の脇腹を揉み解す。

「うひゃっひゃっひゃっひゃっ、ひぃぃ~~っひ~~十二歳ぃぃぃ~~っひっひっひっひ、小六ぅぅぅぅひひひひひひひひひひっ!!!」

「小学生だったんですね……。なら、今回の件は大目に見ます。反省して、もうこんなことしないと約束してくれますか?」
 あやせは、指をしなやかに、沙也佳の上半身へ這わせて言う。

「きひゃひゃ、こんなことってなんだよぉぉ~~~っはっはっはっはっは!!? お前がやめれょぉぉ~~~っはっはは、この裏切りものぉぉぉ~~ひゃははっはあははははは!!!」

 沙也佳は目に涙を浮かべて笑いながらも、悪態をついた。
 あやせは再びため息をついた。

「まだ反省しませんか……なら、もっとお仕置きが必要ですね」
 あやせは言うと、くすぐる指を止めた。
「……っ!!? ぶはっ……げほげほぉっ!!」
 すると、沙也佳は勢いよく咳き込んだ。
 からだを反転させたあやせは、沙也佳の両脚を揃えて、膝の上に乗った。
 あやせは両手を伸ばし、沙也佳のつま先を掴んだ。
「けほっ……ちょ、何するんだよぅっ! ……こほっ、やめろよぉ!」
 沙也佳は息を切らして言いながら、足首から先をイヤイヤするようにくねらせる。が、両足のソックスはあっという間に脱がされてしまう。
 両足とも素足にされた沙也佳は、きゅっと足の指を縮こまらせた。
「筧さん、筧沙也佳ちゃん。もう一度聞きます。反省しますか?」
 あやせは首を沙也佳の方へ向け問うた。
 沙也佳はぶすっとして口をつぐんでいた。

 途端、あやせは両手の指を勢いよく沙也佳の足の裏へ走らせた。

「あひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!? ぃひひひひひひひひひひ、だめぇぇえぇあぁあぁっはっはっはっはっはっは!!!」

 沙也佳はびっくりしたように大口を開け、笑い始めた。
 沙也佳の両足は、あやせの指から必死に逃れるようにくねくねとよじれる。
 あやせは、執拗に沙也佳の足を追いかけ、土踏まずやかかとをガリガリと掻き毟った。

「きぃぃぃいっひっひっひっひっひ!!!! ホントにだめぇぇぇホントにだめぇぇぇぇぇひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」

 足の指と指の間を丹念にいじくると、沙也佳はより一層高い声を上げた。

「いひゃぁぁぁぁ~~~~っはっはっはっはっはっ!!!? そこ嫌あぁっぁあっはっはっはっは!! くすぐったいぃぃひひひひひひ、やだよぉぉおおひゃははははははははは!!!」

 沙也佳は可愛い顔をぐしゃぐしゃにゆがませて泣き叫び続けた。

 結局、沙也佳の口から「ごめんなさい」が出るまで五分とかからなかった。
 なんやかんや、「あやせが裏切った」という沙也佳の誤解も解け、一件落着した。


(完)