「せ、先輩のこと好きです! 付き合ってください!」

 とある高校一年生の後背奈美(うしろせ なみ)は、入学数日で、二年生の男子生徒に告白した。
 中学が一緒で、ずっと想いを寄せてきたのだ。
 憧れの先輩のいる高校に入学が決まったときには、感激のあまり泣いてしまった。
 クラスでできた友人に話すと応援してくれた。
「せっかく入学できたんだから、思い切って告っちゃった方がいいよ」
 そう言われて、告白する踏ん切りがついたのだ。

 奈美は、先輩の前で頭を深々と下げ続けた。
(言っちゃった……。フラレたらどうしよう……)
 なかなか先輩が返事をくれないので不安になってきた。
 奈美がおそるおそる顔を上げると、先輩は微笑んでいた。
「ありがとう」
「えっ……じゃあ……」
 うれしさのあまり、奈美は破顔しかけ、
「でも、なぁ。ちょっと俺、変わった趣味があるんだよなぁ」
 先輩はしぶるような表情。
 奈美は焦った。
(ここまできて引けるか!)
「大丈夫です! 私、先輩のこと好きです! なんでも受け入れます!」
 自分で言っていて真っ赤になった。
「いや、……でもねぇ。後背さんにも迷惑かけちゃうかもしれないからさぁ」
「なんでもします! お願いします! 付き合ってください」
 奈美は叫んでお辞儀をした。
 学校の校門前であることを完全に忘れている。
 周囲では「あら、かわいい」「青いねぇ」など、くすくすと笑い声が漏れた。
 先輩は、訝しげに眉をひそめた。
「……今、なんでもって言ったね?」
「言いました! なんでもします!」
 奈美はただただ叫んだ。
 先輩の声がやや陰を帯びたように低くなっていることには気づかなかった。
「わかった。付き合おう」
「本当ですか!?」
 ばっと奈美が顔を上げると、先輩は笑顔だった。
「じゃあ、さっそく、俺の家に来いよ。奈美?」
 さわやかに呼び捨てにしてくる先輩に、奈美は感激で目を輝かせた。
「はい……っ!」

 恋は盲目という。
 奈美は先輩への恋に溺れていた。
 その恋が、彼女の人生を大きく狂わせようとは。


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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 晒そう企画の『ストーカー』を原作にした、リメイク第二弾!
 今回は奈美ちゃんを使ってみたかった。
 原作とキャラクターの性格はだいぶ変更。
 ついでに設定も変更。
 もう別作品です^p^