「時空管理局嘱託魔導師、フェイト・T・ハラオウン……っ」

 なんてことを敵の前で堂々と自己紹介してしまった10歳の魔法少女フェイトは、突然時空のゆがみに出現した魔導師にぼっこぼこにやられ、誘拐されてしまった。

「さて、フェイト・T・ハラオウンさん。時空管理局について知っている情報を洗いざらい吐いてもらいましょうか?」
 ローブに身を包んだ性別不詳の魔導師はフェイトに対峙した。
 フェイトは黄ボーダーシャツの上に長袖の黒デニムジャケットを着て、下は白のプリーツスカート、ショートブーツという格好だ。
 背もたれの広い巨大な肘掛け椅子に座らされて、両手両足をしっかりとマジックバンドで拘束されている。
「……っ、殺すなら……殺せっ」
 フェイトは歯がみして言った。
「殺したりしないよ。こんな可愛い魔法少女ちゃんを。そういう強情っぱりのところも可愛いね。フェ~イ~トちゃん」
「……っ」
 笑顔で言う魔導師に、フェイトは不快そうに顔を横へ背けた。
「こうでなくっちゃおもしろくないね! じゃあ自分の口からぜ~んぶ話しちゃいたくなるようにしてあげるね」
 魔導師は、小さなボタンのついたリモコンを取り出した。
「……な、なにをするつもり?」
 不安に駆られたのか、フェイトの顔に恐怖が浮かぶ。いくら気丈に振る舞っていても、やはり10歳の女の子だ。
「こうするつもりだよ」
 ポチッとリモコンのボタンを押すと、フェイトの座った椅子の背もたれの、ちょうど腰の横、両側からにょきにょきと二本、マジックハンドが生え出てきた。

「えっ……」

 マジックハンドを見たフェイトが、一瞬きょとんとした直後だった。
 二本のマジックハンドは、フェイトの脇腹へきゅっと指を突き立てた。

「っ!!!!?」

 フェイトの体が弓なりにのけぞる。
 そのまま、マジックハンドはくりくりと指を動かし始めた。

「きゃっ……んははは……っ!!」

 フェイトは顔を下へ向けてこらえた。
 足や手をびくびく震わせる。
 必死に我慢している。
 が、ほんの数秒だった。マジックハンドの徐々に激しくなる脇腹くすぐりに、フェイトはすぐに堪えきれなくなった。

「ひ、ひ、ひっ……は――っ、ははっ、ああっぁぁぁぁ~~はははははははははははは!!!?」

 わちゃわちゃと腰の横で動くマジックハンドに合わせて、フェイトは体をよじり、大口を開けて笑い始めた。

「フェイトちゃん笑った顔、可愛いじゃないかー」

「ゃめてっ!!! やめてぇぇえ~~~はははははははははははははははは!!!」

 ぐりぐりとツボを探すようにくすぐられ、フェイトは笑い続ける。

「さあフェイトちゃん。時空管理局について話してごらん? そうすれば楽になるよ?」

「きゃははははははははははっ……嫌っ、……やぁあぁぁぁあっはっはっはっはっはっはっは~~!!!」

 フェイトは首を左右に激しく振って拒否を示した。

「言わないと、もっといろんなところもくすぐっちゃうぞ?」

「いやぁぁぁいやぁぁぁはははははははははひひひひひっひひひひひひひひひ!!!」

 フェイトの拒否は、何に対する拒否か傍から見るとよくわからなった。
 目に涙を浮かべて笑うフェイト。ときどき歯を食いしばって堪えようとする仕草も見せるが、ものの数秒で馬鹿笑いに返っていく。

「いいねー。楽しいねー。じゃあ次はー」
 魔導師は、さらにリモコンのボタンを押した。
 すると今度は、フェイトの足元から二本のマジックハンドが生えてきた。

「やだぁぁぁははははははははやだぁぁぁあ~~っはっはっはっはっはっはひぃぃ~~!!!」

 それを見たフェイトは必死に叫びながら足をくねらせるが、拘束されていてはどうにならず、マジックハンドによって両足ともブーツをきゅぽんと脱がされてしまった。
 素足で履いていたために蒸れてピンク色になったフェイトの足の裏に、マジックハンドの指が突き立てられる。

「いやぁぁぁあぁ~~っひっひっひっひっひっひっひひっ!!! やめてぇぇぇ~~っはっははっははっはっはっはっはっは!!!」

 がちゃがちゃとフェイトの足元で動くマジックハンドの指の動きに合わせて、フェイトの足の指もびくびくと痙攣するように蠢く。

「フェイトちゃん。早く言わないと、笑いすぎてお腹がよじれちゃうよ?」

「やだぁぁぁはははっはっはっはっはっ、助けてぇぇ~~~っへっへっへっへっへっふにゃぁぁ~~~!!!」

 金髪のツインテールを振り乱し、口から涎を垂れ流して笑うフェイト。
 普段のクールに引き締まった表情からは想像できないほどの乱れっぷりだった。

「やぁぁぁ~~~やぁぁあああああはははははあははっふひひぃぃひぃひぃひぃひぃ~~!!!」

「ポチッとな」
 魔導師がリモコンのボタンを押すと、さらにマジックハンドが増え、フェイトの腹部、腋の下、太ももにまでくすぐりが及んだ。

「いぎゃぁあぁぁっはっはっはっはっはふぎゃぁっぁあははははははははははやめてぇぇ~~やべてぇぇ~~ひひいひひひひひひひひひひひ!!!」

 フェイトは泣き叫ぶ。
 羞恥心も自尊心もかなぐり捨てるように笑いまくっている。

「大丈夫? フェイトちゃん? 笑い死になんて恥ずかしくない? さっさと喋っちゃいなよ」
 魔導師は催促するが、フェイトは首を横に振った。

「じらないぃぃぃっひっひっひっひっひホントに何もしらないよぉぉ~~っほひひひひひひひひひひひひひひひぃ!!!」

 フェイトは舌を出し、白目までむき始めた。
 かなり限界のようだ。

「ホントに強情。フェイトちゃん最後のチャンスだったのに残念だったね。じゃあもう笑い死んじゃいな。だらしない死に顔は見せしめに使っちゃうからね」

「いびゃぁぁあっはっははっはっっはっはひゃべでぇぇっぇっひぇっひぇっひぇっひぇっひぇうひぃぃぃ~~!!! あぁぁあぁぁっひゃっひゃっひゃ――」

 そのときだった。
 一瞬で白い閃光に包まれるフェイトと魔導師。
 フェイトの記憶はそこで途絶えた。

 後日、時空管理局の医務室で目を覚ましたフェイトは、なのはに助けられたことを知った。
 あの魔導師は、なのはの全力全開のスターライトブレーカーで船ごと木っ端微塵に吹き飛んだらしい。
「なのは……ありがとう……」
 フェイトが軽く微笑もうとしたら、体の方があの激しいくすぐったさを思い出して、身震いしてしまった。


(完)