「烈火の将、剣の騎士シグナムさん」
「……っ!?」
 突然の声に、シグナムは振り返った。
 早朝。
 白いシャツにジャージ姿のシグナムはひとり、木刀を構え、素振りをしている最中だった。
「何者だ」
 シグナムは、目の前のフードを被った男に木刀を向けた。男はびくっと肩をふるわせるが、シグナムはそれ以上に動揺していた。
(なんだこいつは……まったく気配が読めなかった)
 ヴォルケンリッターの将と対峙する男、フードの下から覗く顔はあどけなく、10才そこそこ少年に見えた。
「あ、すみません。闇の書について少々お話を伺いたくて……」
 少年の声は震えていた。
 が、その目を見て、シグナムは察する。
(……だめだ。こいつは危険だ)
 少年の瞳の奥には明らかに邪悪なものが宿っている。
 怯えたような表情の奥に、計算高い笑みが見え隠れしているようにすら感じられる。
「貴様に話すことなど何もない。去れ。さもなくば――」
「さもなくば?」
 少年は食い気味にかぶせた。
「戦うまでだ」
 シグナムが木刀を向けると、少年の口角がにぃと上がった。

 数分後。
 シグナムはバインドでIの字に拘束されていた。
「……く、ばかな」
「さて、闇の書について、あとその主について、ほど細かに喋っていただけませんか? シグナムさん」
 少年は言いながら、シグナムの両足からスニーカーを脱がし取った。
「……っ」
 シグナムは口をつぐむ。
「そうですか……じゃあ、こんなことしたくないんですけど……」
 少年は言うと、シグナムの両足の裏をソックス越しになで始めた。

「ふはっ……!!? くっ、な、なんのまねだ」

 少年の人差し指が、シグナムの足の裏を這う。
 ソックスを履いたシグナムの足は、左右に嫌々するようにくねった。

「ボクは、闇の書についてお話さえ聞ければいいんです。シグナムさん。お願いできませんか?」

 少年は申し訳なさそうに言いながら、指をこちょこちょと動かす。

「しっ、知らんっ!!! んくっ……ふっ、ふくぅ」

 シグナムは顔を真っ赤にして首を横に振った。
「じゃぁ、仕方ないですね……」
 少年は、シグナムのソックスに手をかけた。
「こ、こら、やめろ」
 シグナムの抵抗むなしく、ソックスは両足とも脱がし取られる。
 素足にされたシグナムは、きゅっと指を縮こまらせた。
「闇の書の主は?」
「…………」
 少年の質問に、シグナムは答えない。
「そうですか、……はぁ」
 少年はわざとらしく深々とため息をつくと、シグナムの足の指を掴んで、いきなり反らし、ガリガリと土踏まずを掻きむしり始めた。

「――んぶっ!!!!」

 シグナムは一瞬、大きく頬を膨らましてこらえるも、

「ぶはっはっはっはっはっはっはっ!!! だぁっはっはっはっっはっはやめろぉぉ~~っはっはっはっはっは!!!」

 体をびくんとのけぞるようにふるわせると馬鹿笑いを始めた。
 首を左右に、一つくくりにした髪の毛を振り乱して笑うシグナム。

「闇の書についてお話お願いします」

「あぁぁっはっはっはっははだからぁぁっ!!! 喋らないと言っているぅぅ~~~っひゃっはっはっはっはっは!!!」

「はぁ……ボクだって本当はこんなことしたくないんですよ」
 少年は言いながら、ぐりぐりとシグナムの足の指の付け根をいじりはじめる。

「うはひゃひゃははははははやめろぉぉ~~っはっはっはっは!!!」

 シグナムは涙を流して笑う。

「お願いしますよ」

「いやだぁぁあっはっはっはっはっはっはっ!!! ふざけるなぁぁっははははははは~~!!!」

 少年の機械的な責めは続いた。
 シグナムの足は女性にしてはやや大きかった。
 そのため、少年の指が、シグナムの足の指の間まで容易に侵入してくる。
 少年の小さな手にもてあそばれるようにくすぐられ、シグナムは発狂寸前だった。

「ぎゃはははははははははやめろぉぉ~~やぁぁっはっはっはっはっは!!!」

「……このままじゃシグナムさん、笑い死にしてしまいますよ?」

 少年が呆れたように言うと、 

「やっはっはっは、ここ、こんなので死ぬかぁぁぁっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」

 売り言葉に買い言葉だった。

「じゃあ、シグナムさんが、笑い死ぬのが先か、喋るのが先か、試してみましょうか……」

「やっ、ちょっ!!!? やめぁぁああああっはっはっはっはっはっははっはっは~~!!!?」

 シグナムは笑い続けた。少年の目的は、不明である。


(完)