「君は……」
「神裂火織(かんざき かおり)、と申します。できればもうひとつの名は語りたくないのですが」
「もうひとつ?」
「魔法名、ですよ」

 僕の目の前に突然現れた女性はカンザキカオリと名乗った。
 Tシャツに片脚だけ大胆に切ったジーンズという姿。これを普通の服装という範疇に含めてよいものか。

「あなたが禁書目録を狙っていることは知っています。ですから――」

 ドゴっ。
 神裂火織は倒れた。
 僕が攻撃したからだ。
 彼女がわけのわからないことを言うのが、我慢ならなかったのだ。

「……ん」
 神裂火織が目を覚ました。
 自分の置かれた状況がよくわからないようで、きょろきょろとあたりを見回している。
 僕と目が合った。
「あなた、何者ですか?」
「何、その言いぐさ。いきなり攻撃してきたのはそっちじゃないか」
「……このようなことをして、ただで済むと思っているのですか?」
 神裂火織はガチャガチャと手首の鎖を鳴らした。
 彼女は台の上で大の字に拘束されているのだ。
「禁書目録獲得の邪魔をするうるさい蠅がいるみたいだから、一匹でも多く駆除しておこうと思ってね」
 僕は、筆を手に取る。
「な、何をするつもりですか……?」
 神裂火織が怯えたような表情を作った。
 りりしい表情も良いが、こんな顔も少し可愛らしいと思った。

 僕は、筆をそっと、彼女の露出したお腹へ這わせた。

「んひゃっ!?」

 彼女が甲高い声を上げた。
 筆をそのままさわさわと動かす。

「ひゃはっ、ふひゃっ……んぁあぁっ、な、やっ、や、やめてくださいっ!!」

 彼女は必死に筆先から逃れようとお腹をへっこませている。
「君がこんな服着てるのが悪いんだからね」
 僕は言って、彼女のおへその穴へ、ちろちろと筆先を這わせた。

「んひっ、ひゃぁぁあぁっんぁぁ、あぁぁっはひっ、やめっ、はひぃっひぃ……っ!」

 彼女は首を左右に振りながら悶えた。
 顔を真っ赤にして、額に汗を滲ませている。

 ぐりんっ。

「ぽぴぃぃぃぃっ!!?」

「ぽぴぃって……」
 僕は思わず笑ってしまった。
 勢い余って筆先を彼女のおへその中へ突っ込んだら、変な声が出たのだ。
 彼女自身も予期せぬ声を発してしまったようで、恥ずかしそうに顔を赤らめている。

 僕は、筆を使い、彼女のおへそ、ヘソ周りをくるくるとなぞり、脇腹あたりまでなで上げるようにくすぐっていく。

「ひひっ、ひぃぃぃっ!!! や、やめぇぇっ、おねがいぃっやめてくださっ……んはぁ」

 彼女は目に涙を浮かべている。
 そろそろかわいそうだ。

「よくがんばったね」
「はぁ……ひぃ……、な、なんの、……つもりですか……ふざけ、て」
 筆を止めると、彼女は息も絶え絶えに言った。
 紅潮して全身汗でびっしょりだった。

 そっと彼女の両足からブーツを脱がす。
 抵抗する気力は残っていないようだった。
 汗でやや脱がしにくかった。
 露わになった素足は、熱を帯びてピンク色になっていた。
 
「や、やめて……ください……」

 彼女は涙を流しながらしおれるような声で言った。
 よほどヘソ責めが効いたようだ。
 出会い頭の、ズンと日本刀を突き刺すような声が嘘のようだ。

 僕は、リモコンを操作して、機械を作動させる。
 作動音とともに、彼女の拘束された台の下から、五十本近いマジックハンドが表れた。
 彼女は悲鳴を上げた。
 怯えるように首を必死に左右に振る彼女へ向かって、一斉にマジックハンドが襲いかかった。

「あぁぁぁあぁぁははははははははははははははいやぁぁぁあぁはははははははは!!!!」

 彼女の全身を、わちゃわちゃとマジックハンドがくすぐる。

「やははははははははあはははやべでぇぇぇえひゃはやはははははははははっ!!?」

 腋の下、お腹、足の裏。

「あひゃひゃひゃひゃひゃいぎゃぁぁあぁあひゃひゃひゃひゃだぁぁぁっはっはっはっはっは~~!!!」

 彼女が目を頻剥いて笑い狂う姿を見て、僕は満足した。

「まず一匹……」


(完)