「というわけで、管理人に犯人の疑いがかかっているというわけだよ重護(じゅうご)」
「どういうわけだよ!」
 名探偵は相変わらず話がぶっとんでいる。
 突然押しかけてきたかと思うと管理人の肆季(しき)さんが犯人だというのだ。何の犯人かは知らん!
 これから肆季さんを尋問するから、手伝ってくれというのだ。
 肆季さんの了承は得ているらしい。
 もはや意味がわからない。

 名探偵とともに肆季さんの部屋に行くと、肆季さんはいつものタンクトップにショートパンツ姿。
 いつもと違うのは、肆季さんの足元に二つ穴の空いた木の板が置かれている。
 名探偵に聞くと、ストックスとか呼ばれる足枷らしい。
 二つの穴から肆季さんの素足が生え出ていて、なんかエロい。
「おー重護きたか。私は一筋縄ではいかないよ!」
「あんた何がしたいんだ……」
「はっはっは。泣きを見る前に白状することだ。管理人」
 肆季さんと名探偵はノリノリだ。
 ため息が出た。

 足の裏をくすぐって尋問するらしい。
 意味がわからん。
 肆季さんは、さあやってみなさいよと言わんばかりの表情。
 そっと人差し指を伸ばす。

「んふっ……」

「うおっ!?」

 俺の指先が肆季さんの右足のちょうど親指の付け根あたりに触れた瞬間、肆季さんが色っぽい声を上げたので、思わず飛び退いてしまった。

「重護。それは童貞の反応だよ」
「なん、……だと、……?」
「見てろ」
 名探偵は嫌らしい笑みを浮かべると、手をワキワキとさせて、肆季さんを見つめた。
「私はこの男のように容赦はしないぞ。さあ、白状するんだ!」
 名探偵は両手の指をかぎ爪のように曲げると、カリカリと肆季さんの左足の裏をひっかきはじめた。

「うはっ――だっ、はぁぁぁっはっはっははっはっはっはっはっはっはっ!!!」

 かぱっと口を開けて笑い始める肆季さん。
 眉をへの字に曲げ、顔を真っ赤にしている。

「あぁぁぁぁっはっはっはっはっはっははかぁぁっはっはっはっはっっはっは~~!!」

 すごい笑い用だ。
 ロングヘアを振り乱し、まさに馬鹿笑い。
 ほとばしる汗、口から飛ぶ唾。
 かなり酒臭かった。
 ふとみると、足元にいくつも空のビール缶が転がっていた。
「なんで俺、酔っ払いの余興に付き合ってんの……」
 思わず自虐が出た。

「重護! 何をぼさっとしている。君も手伝え!」

 ため息が出た。
 目の前で、肆季さんの右足が踊りくねっていた。
 足首から引っ込めることができないために、がちゃがちゃと激しく揺れ動く。
 痛くないのだろうか。
 そっと、指を伸ばす。

「あっはっはっはっはっはっはっはっ!!! はぁっ、はぁぁ!」

 名探偵の責めが強すぎてよく分からんが、ちょんと突っつくと右足がびくんと後ろへ反り返った。
 一応こっちにも反応してくれるらしい。
 爪を立てて、踵あたりをこすってみた。

「やぁぁあはははははははははっ!!? うおぉぉ~~重護ぉぉすごいぞぉぉっはっはっはっはっっはっは!!!」

 なんか褒められた。
 わけがわからない。
 さらに、指の付け根あたりまで指を這わせ、ぐりぐりとほじくるようにくすぐってみる。

「うぎゃははははははっはそりゃっ!!! それはぁぁはっはっはっはっっははっはえらいぞ重護ぉぉ~~っほおっほっほっほっほ!!!」

 なんかくすぐると肆季さんに褒められる。
 悪い気はしない。
 こんどは、爪で肆季さんの足の縁の部分をこそいでみた。

「おぉぉ~~はははははははははっ!!! やるねぇぇぇっはっはっはっはっはっはっは!!!」

「重護。なかなか筋が良いな」

 肆季さんに続いて、隣の名探偵にも褒められた。
 調子に乗って、足の甲と裏を動じにくすぐってみた。

「まぁぁだまだぁぁぁあっはっはっはっはっはっははっ!!! いくぞぉぉ~~っはっはっはっはっはっは!!!」

 肆季さんの発言の意図がまったくわからない。
 そしてこの状況も、まったく意味が分からない。

 一時間程度くすぐり続けても、結局肆季さんの目的も、名探偵の目的もさっぱりわからなかった。


(完)