沙々宮紗夜(ささみや さや)の前に現れた男はずいぶんと背が低かった。修行僧のようなゆったりとした袈裟を着ているため、体つきはわからない。武器を隠し持っているのかもしれない。
「『在名祭祀書』にも名前が載ってないから、見落としていたよ。まだ君みたいな実力者が残っていたとはね」
最近、星導館学園では実力者が次々と襲われる事件が起こっていた。
彼がその犯人だという。
「……なぜ」
紗夜は問うた。
目はくりくりと大きく、顔立ちはあどけない。表情がほとんど変わらないので、良くも悪くも人形のような可愛らしさがあった。
「なんでこんなことをするかって? 俺はただ、強い奴と戦いたいだけだよ」
男は袖をまくり上げると、そのサイボーグのように機械化された腕を露わにした。
紗夜も驚いたのか眉をぴくりとわずかに上下させる。
男がパンと音を立てて合掌すると、直後、どこからともなく紗夜に向かって光弾が飛んできた。
「……っ!」
間一髪で避ける紗夜に、男は笑いかけた。
「どうしたの? 決闘の申し立てなんて面倒な手順は踏まないよ? 早くそっちの煌式武装を――」
男が言い終える前に、紗夜は巨大な擲弾銃を出現させた。
「……正当防衛」
銃身が光を帯びる。
「そうこなくっちゃ」
再び男が合掌する。
「……どーん」
紗夜の気の抜けるようなかけ声とともに発射される光弾。耳をつんざくような轟音を響かせ、男の前で炸裂する。
○○○
「……なぜ」
紗夜は敗北した。
彼女の服はところどころ破れ、ボロボロだった。
「なんで負けたかって? そんなの俺の方が強かったからに決まっているだろう?」
男は無傷だった。
「千手観音の1000という数字の意味は知ってるかな? 合掌する2本を除いた40本の腕がそれぞれ25の世界に対応する。つまり――」
紗夜は万歳をした状態で宙づりにされていた。
紗夜の両手首を掴んだ2本の手は手首から先しかない。その周りを取り囲む手もまた、同じくふわふわと宙に浮かんでいる。合わせて40本あった。
「俺が具現化できる40本の手は、それぞれ25種類の技を持つ。威力だけのグレネードランチャーなんか、恐るるに足りないんだよ」
紗夜は侮辱に気分を害したのか、わずかに眉を寄せる。
「さて、敗者には罰ゲーム。お楽しみの時間だよ」
男はにやりと笑い、合掌した。
すると、紗夜を取り囲んだ40本の手がゆらゆらと指を動かし始めた。
はてなマークを浮かべる紗夜。
「なにす――……っ!?」
言いかけて、びくんと体を震わせる紗夜。
2本の手が、彼女の腋の下へ触れたのだ。
服の上から人差し指を立てて、上下に、なでるように。
「んっ……なに、これ……?」
紗夜はわけがわからないというように眉を寄せ、声を絞る。
「俺はこれが楽しくてやってるだよ。紗夜ちゃん? さて、表情の乏しい紗夜ちゃんは、いったいどんな声で鳴いてくれるのかなぁ?」
「んっ……ん、……」
指は、紗夜の腋からあばら辺りにかけて規則的に上下する。
紗夜は気持ち悪そうにわずかに口元をゆがめ、ときおり腰をくねらせた。
「分厚そうな服を着てるから、感じにくいのかな? それとも、くすぐったくて笑うのが恥ずかしくて、我慢してるのかなぁ?」
「ん……く、くすぐったくなんか……ない……」
紗夜の声は震えていた。顔は徐々に紅潮していく。
「ぼんやりして見えて、案外強情な性格なのかな?」
指の動きはワンパターンで、たった2本の人差し指が上下に動くだけだった。
しかし、時間とともに紗夜の息は荒くなっていき、腰の動きも大きくなっていく。
「んっ、ふっ……んぅっ」
紗夜は唇をかみしめ、体をくねらせる。見開かれた目はふるふると微動していた。
「耐えきれなくなってきたかな? 甘く見てたんじゃない? 同じ動きだからって簡単に慣れるもんじゃないんだよ? いや、慣れちゃうから、余計にその動きを意識して、くすぐったく感じちゃうのかな? ほらほら、紗夜ちゃん、もっと無心にならないとますますくすぐったくなっちゃうよ?」
指の動きは変わらない。
しゅるしゅると服の擦れる音だけが辺りに響いた。
「んふっ、ふっ!! ……く、ん……っ!!」
紗夜は、足をばたつかせ始めた。
体側の刺激を紛らわすかのように、宙を蹴ったり、膝をすりあわせたり。
「どうしたの? くすぐったくなんかないんじゃなかったの? そんなに足をジタバタさせないといけないほど、くすぐったいのかなぁ?」
まっすぐ引き伸ばされた腋の下を人差し指がただ上下するだけ。
それだけの刺激が、紗夜を悶えさせた。
「んふっ、ひっ、ひぃっ……くひっ!?」
紗夜の口元に歯が見えた。
目には涙が浮かび、顔は上気している。
「そろそろ限界かなぁ? じゃあ少し趣向を変えて」
男の合掌で、さらに2本の手が、紗夜の体にゆっくりと近づいてく。
それを見た紗夜は、不快そうに眉間に皺を寄せ、ふるふると左右に首を振る。
2本の手は人差し指を立て、紗夜の脇腹を、つついた。
「は……っ!! たっ……ひっ……ふくっ!!!」
びくんと片脚を持ち上げて体をねじり、一瞬、紗夜は明らかな笑い声を発した。
「どうしたの? 紗夜ちゃん? くすぐったいなら笑っていいんだよ?」
2本の手は、男の声に呼応するようにつんつんと紗夜の脇腹をつっつく。
「くっ!? んっ!!? ふぅぅっ……んひっ、ひはっ……んぅぅぅぅ~~!!!」
紗夜は歯を食いしばり、ぶんぶんと首を左右に振った。
両足は宙を掻くように激しく動いている。
「俺に笑顔を見せるのがそんなに恥ずかしい?」
「んふっ!! ふぅぅんぅぅ~~っ!! んっ、んっ、ひぅぅっ!!!」
腋の下から脇腹に4本の指が這う。
紗夜は顔を背け、体をひくひくと震わせて笑いをこらえているようだった。
「なかなか頑固だねぇ。ん?」
男は、激しく宙を蹴り上げる紗夜の足に目をつけ、にんまりと笑う。
「かなり厚底のブーツだねぇ? そんなに身長を高く見せたいのかな?」
「んくぅぅぅっ!!! んふぅぅぅぅ~~~!!?」
紗夜の声がわずかに高くなった。コンプレックスをつかれて、余計に集中が切れたようだ。
「そんなにしっかり足元を武装してるってことは、案外下半身が敏感だったりして」
男の合掌。
さらに4本の手が、紗夜の足元へ群がる。
「んぅぅぅぅぅーっ!!! んひぅぅーっ!!!」
紗夜は目を見開いて近づく手を蹴り返すが、すぐに足首を掴まれ、脚をM字に持ち上げられてしまう。
2本の手が紗夜の両足からブーツを脱がす。
橙縞模様のオーバーニーソックスに包まれた足は、嫌がるようにくねくねと動いている。
その足の裏を、ふわりと近づいてきた人差し指がなぞり上げた。
「ひやぁぁんっ!!? んはっ」
びくんと全身を震わせる紗夜。
ぴんと反り返るつま先。
足が敏感であることは一目瞭然であった。
「そうかそうか。そんなに喜んでくれるなら、ソックスも脱がしてあげようね」
さらに2本、手が近づき、紗夜のニーソックスを脱がし始めた。
「はっ、ひゃっ!! ひゃぁっ、やぁぁんっ!!!」
紗夜はするするとソックスを脱がされる最中、腋、脇腹、足の裏を人差し指でくすぐられ、体をよじり悶える。
「あっ、あっ……ひぁっ、あぁっ、ひひっ、はやぁぁっ!!!」
眉はへの字になったりVの字になったりを繰り返し、口は閉じていられない様子。
頬を引きつらせて、歯を見せる紗夜は、もはや結界寸前に見えた。
両脚ともニーソックスはくるぶしまで脱がされ、後はつま先から一気に引っこ抜かれる。
すぽんと素足にされる紗夜。
足指をきゅっと縮こまらせて、必死にくすぐったさと戦っているようだ。
「あぁっ、やっ、んぁぁっ、……んひゃぁっ!! ぁあぁ……っ」
人差し指で長時間じらすようにくすぐられ続けた紗夜は泣いていた。
ポロポロと大粒の涙が頬を伝い落ちる。
「ふふふ、紗夜ちゃん。ずいぶんと表情が豊かになったじゃないか。じゃあ、そろそろ笑顔も見せてくれるかな?」
男が再度合掌すると、40本の手が、一斉に紗夜の体に襲いかかった。
「あぁっあぁっ……――、がっ、ぷはっ!!!? あぁぁぁああああははははははははははははははひやぁぁぁあっはっはっはっはっはっは~~!!!」
紗夜はその途端びくんと大きく体をのけぞらせると、激しく首を揺り動かして笑い出した。
これまでの緩やかな動きと違い、40本の手はそれぞれが5本の指を駆使して、紗夜の体を激しくくすぐっていた。
「やぁぁああははははははははははは!!! くあぁあははははははあはははやぁあぁぁあ~~!!!!」
紗夜は人形のような顔をくしゃくしゃにゆがめ、歯をむき出しにして大笑いする。
「あぁぁぁあっはっっはっはっははっははひゃがぁぁはっはははっははっははははうひゃらぁぁあぁ~~!!?」
腋の下には何本も指が突き立てられてほじくられ、脇腹はぐにぐにと揉みほぐされ、素足の足の裏はがりがりと掻きむしられる。
「ひやぁああはははははあはははあぁぁ~~ひゃひゃひゃひゃひひひひひひひぃぃひぃいぃうひぃぃぃ~~っ!!!」
紗夜は全身をビクビクと震わせて笑った。
M字に掴み上げられた紗夜の脚。
太ももも揉みほぐされ、膝裏をこそこそとこそぐられ、ふくらはぎをなでられ……。
細くて白い脚に、数十本の指がひしめき合っている。
「いぃぃぃ~~ひひひひひひひひひひひ!!! ふぎぃぃっひぃっひぃっひぃふひゃぁぁあぁ~~!!!」
紗夜は顔を真っ赤にして、髪の毛を振り乱して笑う。
開きっぱなしの口からはだらだらと涎が垂れ流れた。
足の指がくねくねとくすぐったそうに動く。
「あひぃぃぃ~~~あひぃぃぃ~~~ふひっひっひっひっひっひっひっひぎゃぁぁあぁ~~!!!」
狭い足の裏にも指の付け根から踵まで何十本も指が突き立てられ、紗夜は笑い狂った。
「紗夜ちゃん笑顔はすごく可愛いじゃないか。ぶっきらぼうにしているより、いつも笑ってた方がモテるんじゃないか?」
「いぃぃぃぃっひっひっひっひっひ!!? ふぎゃぁあはああひゃひゃひゃひひひひひっひひひひひひひひうひぃぃい!!!!」
紗夜は首を左右に激しく振って泣き叫ぶ。
その顔は、涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃだった。
羞恥心もプライドもかなぐり捨てて笑い狂う紗夜を見て、男は満足げに微笑んだ。
「これだからジェネステラ狩りはやめられないんだよね」
(完)
「『在名祭祀書』にも名前が載ってないから、見落としていたよ。まだ君みたいな実力者が残っていたとはね」
最近、星導館学園では実力者が次々と襲われる事件が起こっていた。
彼がその犯人だという。
「……なぜ」
紗夜は問うた。
目はくりくりと大きく、顔立ちはあどけない。表情がほとんど変わらないので、良くも悪くも人形のような可愛らしさがあった。
「なんでこんなことをするかって? 俺はただ、強い奴と戦いたいだけだよ」
男は袖をまくり上げると、そのサイボーグのように機械化された腕を露わにした。
紗夜も驚いたのか眉をぴくりとわずかに上下させる。
男がパンと音を立てて合掌すると、直後、どこからともなく紗夜に向かって光弾が飛んできた。
「……っ!」
間一髪で避ける紗夜に、男は笑いかけた。
「どうしたの? 決闘の申し立てなんて面倒な手順は踏まないよ? 早くそっちの煌式武装を――」
男が言い終える前に、紗夜は巨大な擲弾銃を出現させた。
「……正当防衛」
銃身が光を帯びる。
「そうこなくっちゃ」
再び男が合掌する。
「……どーん」
紗夜の気の抜けるようなかけ声とともに発射される光弾。耳をつんざくような轟音を響かせ、男の前で炸裂する。
○○○
「……なぜ」
紗夜は敗北した。
彼女の服はところどころ破れ、ボロボロだった。
「なんで負けたかって? そんなの俺の方が強かったからに決まっているだろう?」
男は無傷だった。
「千手観音の1000という数字の意味は知ってるかな? 合掌する2本を除いた40本の腕がそれぞれ25の世界に対応する。つまり――」
紗夜は万歳をした状態で宙づりにされていた。
紗夜の両手首を掴んだ2本の手は手首から先しかない。その周りを取り囲む手もまた、同じくふわふわと宙に浮かんでいる。合わせて40本あった。
「俺が具現化できる40本の手は、それぞれ25種類の技を持つ。威力だけのグレネードランチャーなんか、恐るるに足りないんだよ」
紗夜は侮辱に気分を害したのか、わずかに眉を寄せる。
「さて、敗者には罰ゲーム。お楽しみの時間だよ」
男はにやりと笑い、合掌した。
すると、紗夜を取り囲んだ40本の手がゆらゆらと指を動かし始めた。
はてなマークを浮かべる紗夜。
「なにす――……っ!?」
言いかけて、びくんと体を震わせる紗夜。
2本の手が、彼女の腋の下へ触れたのだ。
服の上から人差し指を立てて、上下に、なでるように。
「んっ……なに、これ……?」
紗夜はわけがわからないというように眉を寄せ、声を絞る。
「俺はこれが楽しくてやってるだよ。紗夜ちゃん? さて、表情の乏しい紗夜ちゃんは、いったいどんな声で鳴いてくれるのかなぁ?」
「んっ……ん、……」
指は、紗夜の腋からあばら辺りにかけて規則的に上下する。
紗夜は気持ち悪そうにわずかに口元をゆがめ、ときおり腰をくねらせた。
「分厚そうな服を着てるから、感じにくいのかな? それとも、くすぐったくて笑うのが恥ずかしくて、我慢してるのかなぁ?」
「ん……く、くすぐったくなんか……ない……」
紗夜の声は震えていた。顔は徐々に紅潮していく。
「ぼんやりして見えて、案外強情な性格なのかな?」
指の動きはワンパターンで、たった2本の人差し指が上下に動くだけだった。
しかし、時間とともに紗夜の息は荒くなっていき、腰の動きも大きくなっていく。
「んっ、ふっ……んぅっ」
紗夜は唇をかみしめ、体をくねらせる。見開かれた目はふるふると微動していた。
「耐えきれなくなってきたかな? 甘く見てたんじゃない? 同じ動きだからって簡単に慣れるもんじゃないんだよ? いや、慣れちゃうから、余計にその動きを意識して、くすぐったく感じちゃうのかな? ほらほら、紗夜ちゃん、もっと無心にならないとますますくすぐったくなっちゃうよ?」
指の動きは変わらない。
しゅるしゅると服の擦れる音だけが辺りに響いた。
「んふっ、ふっ!! ……く、ん……っ!!」
紗夜は、足をばたつかせ始めた。
体側の刺激を紛らわすかのように、宙を蹴ったり、膝をすりあわせたり。
「どうしたの? くすぐったくなんかないんじゃなかったの? そんなに足をジタバタさせないといけないほど、くすぐったいのかなぁ?」
まっすぐ引き伸ばされた腋の下を人差し指がただ上下するだけ。
それだけの刺激が、紗夜を悶えさせた。
「んふっ、ひっ、ひぃっ……くひっ!?」
紗夜の口元に歯が見えた。
目には涙が浮かび、顔は上気している。
「そろそろ限界かなぁ? じゃあ少し趣向を変えて」
男の合掌で、さらに2本の手が、紗夜の体にゆっくりと近づいてく。
それを見た紗夜は、不快そうに眉間に皺を寄せ、ふるふると左右に首を振る。
2本の手は人差し指を立て、紗夜の脇腹を、つついた。
「は……っ!! たっ……ひっ……ふくっ!!!」
びくんと片脚を持ち上げて体をねじり、一瞬、紗夜は明らかな笑い声を発した。
「どうしたの? 紗夜ちゃん? くすぐったいなら笑っていいんだよ?」
2本の手は、男の声に呼応するようにつんつんと紗夜の脇腹をつっつく。
「くっ!? んっ!!? ふぅぅっ……んひっ、ひはっ……んぅぅぅぅ~~!!!」
紗夜は歯を食いしばり、ぶんぶんと首を左右に振った。
両足は宙を掻くように激しく動いている。
「俺に笑顔を見せるのがそんなに恥ずかしい?」
「んふっ!! ふぅぅんぅぅ~~っ!! んっ、んっ、ひぅぅっ!!!」
腋の下から脇腹に4本の指が這う。
紗夜は顔を背け、体をひくひくと震わせて笑いをこらえているようだった。
「なかなか頑固だねぇ。ん?」
男は、激しく宙を蹴り上げる紗夜の足に目をつけ、にんまりと笑う。
「かなり厚底のブーツだねぇ? そんなに身長を高く見せたいのかな?」
「んくぅぅぅっ!!! んふぅぅぅぅ~~~!!?」
紗夜の声がわずかに高くなった。コンプレックスをつかれて、余計に集中が切れたようだ。
「そんなにしっかり足元を武装してるってことは、案外下半身が敏感だったりして」
男の合掌。
さらに4本の手が、紗夜の足元へ群がる。
「んぅぅぅぅぅーっ!!! んひぅぅーっ!!!」
紗夜は目を見開いて近づく手を蹴り返すが、すぐに足首を掴まれ、脚をM字に持ち上げられてしまう。
2本の手が紗夜の両足からブーツを脱がす。
橙縞模様のオーバーニーソックスに包まれた足は、嫌がるようにくねくねと動いている。
その足の裏を、ふわりと近づいてきた人差し指がなぞり上げた。
「ひやぁぁんっ!!? んはっ」
びくんと全身を震わせる紗夜。
ぴんと反り返るつま先。
足が敏感であることは一目瞭然であった。
「そうかそうか。そんなに喜んでくれるなら、ソックスも脱がしてあげようね」
さらに2本、手が近づき、紗夜のニーソックスを脱がし始めた。
「はっ、ひゃっ!! ひゃぁっ、やぁぁんっ!!!」
紗夜はするするとソックスを脱がされる最中、腋、脇腹、足の裏を人差し指でくすぐられ、体をよじり悶える。
「あっ、あっ……ひぁっ、あぁっ、ひひっ、はやぁぁっ!!!」
眉はへの字になったりVの字になったりを繰り返し、口は閉じていられない様子。
頬を引きつらせて、歯を見せる紗夜は、もはや結界寸前に見えた。
両脚ともニーソックスはくるぶしまで脱がされ、後はつま先から一気に引っこ抜かれる。
すぽんと素足にされる紗夜。
足指をきゅっと縮こまらせて、必死にくすぐったさと戦っているようだ。
「あぁっ、やっ、んぁぁっ、……んひゃぁっ!! ぁあぁ……っ」
人差し指で長時間じらすようにくすぐられ続けた紗夜は泣いていた。
ポロポロと大粒の涙が頬を伝い落ちる。
「ふふふ、紗夜ちゃん。ずいぶんと表情が豊かになったじゃないか。じゃあ、そろそろ笑顔も見せてくれるかな?」
男が再度合掌すると、40本の手が、一斉に紗夜の体に襲いかかった。
「あぁっあぁっ……――、がっ、ぷはっ!!!? あぁぁぁああああははははははははははははははひやぁぁぁあっはっはっはっはっはっは~~!!!」
紗夜はその途端びくんと大きく体をのけぞらせると、激しく首を揺り動かして笑い出した。
これまでの緩やかな動きと違い、40本の手はそれぞれが5本の指を駆使して、紗夜の体を激しくくすぐっていた。
「やぁぁああははははははははははは!!! くあぁあははははははあはははやぁあぁぁあ~~!!!!」
紗夜は人形のような顔をくしゃくしゃにゆがめ、歯をむき出しにして大笑いする。
「あぁぁぁあっはっっはっはっははっははひゃがぁぁはっはははっははっははははうひゃらぁぁあぁ~~!!?」
腋の下には何本も指が突き立てられてほじくられ、脇腹はぐにぐにと揉みほぐされ、素足の足の裏はがりがりと掻きむしられる。
「ひやぁああはははははあはははあぁぁ~~ひゃひゃひゃひゃひひひひひひひぃぃひぃいぃうひぃぃぃ~~っ!!!」
紗夜は全身をビクビクと震わせて笑った。
M字に掴み上げられた紗夜の脚。
太ももも揉みほぐされ、膝裏をこそこそとこそぐられ、ふくらはぎをなでられ……。
細くて白い脚に、数十本の指がひしめき合っている。
「いぃぃぃ~~ひひひひひひひひひひひ!!! ふぎぃぃっひぃっひぃっひぃふひゃぁぁあぁ~~!!!」
紗夜は顔を真っ赤にして、髪の毛を振り乱して笑う。
開きっぱなしの口からはだらだらと涎が垂れ流れた。
足の指がくねくねとくすぐったそうに動く。
「あひぃぃぃ~~~あひぃぃぃ~~~ふひっひっひっひっひっひっひっひぎゃぁぁあぁ~~!!!」
狭い足の裏にも指の付け根から踵まで何十本も指が突き立てられ、紗夜は笑い狂った。
「紗夜ちゃん笑顔はすごく可愛いじゃないか。ぶっきらぼうにしているより、いつも笑ってた方がモテるんじゃないか?」
「いぃぃぃぃっひっひっひっひっひ!!? ふぎゃぁあはああひゃひゃひゃひひひひひっひひひひひひひひうひぃぃい!!!!」
紗夜は首を左右に激しく振って泣き叫ぶ。
その顔は、涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃだった。
羞恥心もプライドもかなぐり捨てて笑い狂う紗夜を見て、男は満足げに微笑んだ。
「これだからジェネステラ狩りはやめられないんだよね」
(完)