スバル・ナカジマは、ティアナ・ランスターに尋問を受けていた。

「あんたが犯人だってことはわかってるんだから! さっさと白状しなさい!」
「ちがうよティア! あたしは犯人なんかじゃ――」
「嘘ばっかり! 機動六課の中であんなことできるのスバルだけじゃない!」
「そんな……、た、確かにあたしなら、差し入れの全員分のアイスクリームを食べるなんて朝飯前……というか正直全部食べたい……いや、違うよ! 本音はそうだけど違うよ!?」

 ある日、機動六課に送られた差し入れのアイスが食い荒らされる事件が発生した。
 そしてその容疑は、無類のアイス好きスバルにかけられたのだ。
 スバルは必死に弁解した。
 しかしおやつタイムを心底楽しみにしていた高町なのは一等空尉の怒りは収まらず、問答無用で拘留されてしまったのだ。
 スバルは、両手両足をまっすぐ伸ばして、体をIの字にした状態でマジックバインドでがっちりと拘束されていた。

「なのはさん! スバル、全然反省してません!」
 ティアナが言うと、なのはは笑顔でスバルに向かった。
「スバル?」
「な、なのはさん。ホントに、あたしじゃないんです……」
「少し、頭、冷やそうか?」
「ひぃ……っ」
 スバルはなのはの死んだ魚のような目に、頬を引きつらせた。

 なのはの命令で、エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエがそっとスバルの体に近づいた。

「エリオ……キャロ……。お願い。助けて」
「すみません、スバルさん」
「なのはさんの命令なので……」

 二人はすまなそうにしながら、スバルの体へ手を伸ばす。
 エリオはスバルの靴を脱がし、素足の足の裏を、キャロはスバルの服からはみ出たお腹をこちょこちょとくすぐりはじめた。

「きゃはっ!? あはははははっ! ちょっ、二人ともやめぇぇ~~!!」

「わっ、ごめんなさい! でも、そのぉ……」
 キャロは謝罪しながら後方のなのはの顔をちらりと見る。
 なのはは腕を組んで笑顔を浮かべている。
「ひっ……スバルさんごめんなさい!」
 キャロは指先で脇腹に軽く爪を立ててこそこそくすぐる。

「いやぁぁっははははははははっ!!! ひひひひっ……エリオもやめぇぇへへへへっへ!!」

「あ、いや……すみません! スバルさん! 痛くないようにしますから!」
 やけくそ気味に言うと、エリオはがっしがっしとスバルのかかとを引っ掻くようにくすぐった。

「きゃはははははははっ!!? ちょっとぉぉ~~つよいぃぃ!! エリオ強いってぇぇっへっへっへっへっへっへ!!!」

 スバルは目に涙を浮かべて笑う。
 キャロは間近でスバルの笑い苦しむ姿を見て、さっと目をそらした。
「キャロ? それが全力?」
「え……っ」
 なのはがキャロに問うた。キャロの顔に恐怖が浮かぶ。
「キャロも、少し、頭、冷やす?」
「い、い……、全力でやります!」

「いやははははははあははっ!!! お願いキャロやめぇぇえっへっへっへっへっへっへ!!!」

 キャロは指先で円を描くようにスバルのお腹をなで、
「いひひひひひひっひひひひひっあぁぁ~~っはっはっはっはっはストっぷおねぇぇっへっっへっへ!!」

 指先を徐々におへそへと接近させ、
「うひっひっひっひっひっ、おにょっおねっちょぉぉ~~~!!!」

 ずぼっと、指先を埋め、
「おひぃぃぃぃぃっ!!!?」

 ほじくるようにくすぐった。
「ふいぇへへへへへへへへへへっ!!! んはぁあっ、はぁっ、はひぃぃっ!!! やめっ、んへぇぇぇっへぇぇ!!!」

「エリオ? 疲れてない?」
「疲れてません!」
 なのはの催促に、エリオは勢いよく答え、スバルの足の指の付け根へ爪を立てた。

「ぎゃああぁはははははははははひぃぃっひぃひいぃひぃひぃひぃひぃ~~!!!」

 スバルは狂ったように笑う。
 涙と涎で顔はぐしゃぐしゃだった。

「ぐへぇぇえっへっへっへっへっへっへっへっへっふぎゃぁぁはははははは!!!」

 気を失うまで、スバルは冤罪を訴え続けた。
 数時間後、真犯人はキャロの使役竜フリードリヒとヴォルテールであることが発覚した。


(完)