「あれは、ヘビー級メガロ、モハメド・クイ!」
 ハルナが説明してくれた。
 アリクイの姿をしたメガロは、とんとんと跳ねるような軽めのフットワークでこちらを見つめている。
 対峙する俺、ハルナ、セラ。
「セラ――」
 いくぞ。と声をかけようとしたが、隣にいたはずのセラの姿が消えていた。
 刹那、景色がぶれて一転する。俺の体は吹き飛ばされたらしい。アリクイの蹴りは速くて強かった。衝撃で体が壁にめり込んだ。動けない。
 鉄がぶつかり合うような音がして、前方を見ると、セラとアリクイが戦っている。
 木の葉で出来たセラの剣とアリクイの拳が交わる。
 ぶつかる瞬間は見えても、動きは俺の目に映らない。
 それほど二人は速かった。
 とてもじゃないが、ゾンビには追いつけそうになかった。
 ふと見ると、ハルナはいつもの紫色の湯気でダウンしている。
 俺が魔装少女に変身できるのは24時間に1回だけらしい。
 あと数時間あるので、しばらくセラに任せることにする。
「歩。代わってください」
 しばらくして、いきなりセラからお声がかかる。
「無理だ。動けない。助けてくれ」
「武器がなくなります。血が足りません」
 いつものきりっとした表情で言われた。刹那、彼女の持つ剣がただの木の葉に変わる。
 どうしてこいつらは大事なことを先に言ってくれないのか!
 動けない俺とハルナ。
 武器を失ったセラ。
 絶体絶命だ。それを見逃すほどメガロもお人好しではない。
 逃げるセラ。アリクイは長い舌でセラの足首を絡め取り、転倒させた。

「あっ!」

 セラはびたーんと両手を前に突き出して顔面を打った。
 あれは痛い。

 そのままぐねぐねと、アリクイの舌はセラの体に巻き付いていく。

「くっ、汚らしぃっ――」

 唾液でまみれた長い舌でセラの体は両腕を体側につけたIの字の状態で拘束された。

「くぁっ、あぁ……っ、んあぁっ」

 ぎりぎりと締め付けられて、セラが荒い吐息と艶めかしい声を漏らす。
 なんかエロい。
 ……いや、そうじゃなくて、
「大丈夫か!? セラ!」

「あぁっ、……大丈夫な、わけないが……あぁ、クソ虫がっ!」

 八つ当たりのように罵倒された。
 ゾンビ、悲しい。
 なにか手立てはないものか。
 すると、アリクイの舌先がちょんと、むき出しになったセラのお腹へ触れた。

「ひゃっ!?」

 甲高い声を上げてお腹を引っ込めるセラ。
 アリクイはへこんだセラのお腹のちょうど真ん中、おへそをちろちろと舐め始めた。

「きゃぁっ、あふぅぅっ……こんっ!!! 何おっ、このっ!! あぁぁぁっ!!!」

 ぺちゃぺちゃと言う音があたりに響く。
 顔を赤くして身をよじるセラの姿は、なんというか……。

「あひっ……歩っ!! はやっく……ひゃぁぁあん、助けてくださいぃっ!!」

 俺は官能的なセラの反応に一瞬ぽーっとしてしまったが、いかんいかんと首を左右に振って、
「待ってろセラ! あと少しで変身できるようになるから」

 いつの間にかアリクイがセラの足元までやってきていた。
 前足を不器用に動かして、ぐいぐいとセラのブーツを引っ張っている。
 脱がそうとしているようだ。
「はひっ……こ、こらっ、やめ!」
 セラは蹴り上げたいのだろうガクガクと膝を揺り動かすが、舌の拘束がきつくされるがままだ。

 すぽんっ。

 アリクイはなんとか、セラの右足からブーツを脱がした。
 するとアリクイは、毛むくじゃらの前足で、さらされたセラの素足の足の裏をこちょこちょくすぐりはじめた。

「いひゃっ何をぉぉ……――あっ、くははははははははははっ!!?」

 ここからじゃ、アリクイの前足の構造がどうなっているのかよく見えない。
 が、セラの笑い方からして、かなりテクニシャンのようだ。

「くわはははははははははっ!!? なんだあぁぁやめよぉぉ~~っはっはっはっはっはっはっはっは!!!」

 すごい笑い声だ。
 セラの普段のクールな態度からは想像できない。

 アリクイの舌は、べろべろと脇腹を舐め、さらに服の裾から侵入してアバラあたりまでくすぐっているようだ。

「ひゃぁぁっはっはっはっはっははっは!!? ぐはあぁそんなとこ入ってくるなぁぁあっはっははっはっはっはは~~!!!」

 そんな舌が侵入してきやすそうな服を着てるから……。

 アリクイはさらに左足のブーツまで脱がし取り、セラの両足の裏をくすぐり始めた。

「いやはっはっはっはっははだぁぁぁ~~ははははははははははははっ!!!」

 セラは悲鳴のような声で笑っている。
 激しく髪の毛を振り乱し、涙を流し、口からは涎を垂らして。

 もう少しだ! セラ! もう少し辛抱してくれ!

 俺が変身できるようになるまで後2時間弱といったところ。

「あっひゃっひゃっひゃっっひゃっひゃぎゃぁぁぁ~~~!!!」

 これ、あと2時間も持つのだろうか?
 セラの様子を見ると少し心配だったが、まあ吸血忍者なら大丈夫だろう。
 俺はポジティブに考えることにした。
 ネガティブシンキングじゃ、ゾンビはやってられない。


(完)