コロナはその晩、夜遅くまで勉強をしていた。
『コロナ・ティミル』
 か細い声。
 コロナは気付かずに勉強に集中している。
『コロナ・ティミル』
「えっ?」
 二度目の呼びかけに、コロナは顔を上げた。
 部屋を見渡してみるが誰もいない。
(気のせい……?)
『コロナ・ティミル』
「!?」
 今度ははっきりと聞こえた。
「誰?」
 返事はない。
(幻聴? 疲れてるのかな……?)
『そうだ。コロナ・ティミル。お前は疲れている』
「!?」
 考えが読まれ、コロナは驚いた。
『睡眠不足は脳に悪い。早く寝るのだ』
 声はぼんやりと頭の中に響いてくる。声は少しだけ苛立っているように聞こえた。
 もしかしたら、自分の体の疲労を無意識下で訴えてくれているのかもしれない。
(確かにちょっと夜更かししすぎたかな……)
 コロナは納得すると、ノートを閉じて、ベッドに入った。

『遅い!』
「ふぇっ!?」
 コロナはピンクのもやのかかった白い空間に飛ばされると、声に怒鳴られた。
『初等科の学生が夜更かしてまで勉強するもんじゃない! 待たされた分、きつめに罰を与えよう』
「え、えっ? な、何ですか? ここ……っ、もしかして、ここがヴィヴィオの言ってた……」
 コロナが状況把握をする間も与えず、地面から生え出た腕がコロナの足首を掴んだ。
「きゃっ!?」
 コロナはバランスを崩し、尻餅をつく。
 そこへ複数の手がわらわらと集まり、コロナのローファーを脱がし始めた。コロナは制服姿に替わっていた。
「やっ、なっ! やめてくださいっ……!」
 コロナは必死に抵抗する。
 が、尻餅をついた状態で足首を持ち上げられ、上手く力が入らず、ローファーと、次いでソックスまで脱がし取られた。
 すると今度は地面からくねくねと細長い紐がミミズのように生え出てきた。
「やっ、な、何……?」
 紐はコロナの足指に巻き付き、あっという間にコロナの足の指を全開にして縛り上げて固定してしまった。
 ぺたんと尻をつけ、両足を前に突きだして座った状態で押さえつけられたコロナ。
「な……やっ、ここ、夢、じゃ――」
 未だに状況が上手く飲み込めず、きょろきょろと首を振るコロナの足の裏を、地面から生え出た二本の手が人差し指でくすぐりはじめる。

「ほひっ!!? ひやぁああああ~~っ!? なひっ、なぁああああああ~~!!!」

 途端に甲高い悲鳴を上げるコロナ。
 指先でなでなで足裏の表面をなぞり上げると、ひくひくと縛られた足指が苦しそうに微動した。

「はひっ、はひひっひひひひひひひひひひっ!!? やだぁあっ!! なはっ、何するんですかぁああ~~あひひひひひひひひひひひひひっ!!!」

 声は答えない。
 足の裏をくすぐる指が増えていく。
 二本、三本と、撫でる動きから、ひっかき、こそぐような動きへ。

「あひゃあぁああああああ~~!!!? むりむりむりむりぃぃいひひひひひひひひひひひっ!!! それだみゃああああひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!」

 コロナは足の指を一本も動かせない状態で、足裏をくすぐられ、絶叫した。
 上半身を激しくよじるが、押さえつける手の力が強くかなわない。

「ひゃはああぁあああっひゃっひゃっひゃっ!!! ふぎぃぃひひひひひひっひひひひひひひやめてぇええええあははははははははははははっ!!!」

 コロナは髪の毛を振り乱し、歯をむき出しにして大笑いしている。
 ガリガリと足の裏を掻きむしる音が響き渡る。

「ほにゃがいひっひひひっひひっひひっ!!! 何ぃぃいいいひひひひひ何なのぉぉ~~~ああはあばばはははっはははははっははっははひやあぁあああ!!!」

 コロナは訳もわからず笑い続けた。
 彼女の甲高い笑い声が響き渡る中、暗転し、空間は闇に包まれた。


(完)

♯1 ♯2 ♯3