「んじゃあ、コロナ。絶対に手を離したらだめだからねー」
「負けないよー」
「ふふふ、いつまで耐えられるのかなぁ?」

 St.ヒルデ魔法学院初等科に所属する高町ヴィヴィオ、コロナ・ティミル、リオ・ウェズリーの仲良し三人組は、学校帰りに高町家に集合していた。
 今日は休養日。
 普段は元気に外で体を動かして遊ぶことの多い三人だが、たまには屋内で遊ぶこともある。
 しばらくはボードゲームで遊んでいた三人だったが、やはりそこは魔法格闘技のアスリート、体を動かしたくなったらしい。
 そこでリオが発案したのが「くすぐり遊び」だった。
 ルールはシンプルで、ひとりがベッドに寝そべり二人がかりでくすぐるというだけ。時間制限をつけたり、体位キープなどの条件をつけると一層盛り上がる。

 ベッドの上で仰向けに寝たコロナは、両手をまっすぐ上に上げ、ベッド上部の格子を掴んでいる。
 今回は体位キープという条件でやるらしい。

 制服姿のコロナは、不安と期待の入り交じったような表情で二人を見上げている。
「二人とも、顔が怖いよ~」
「あ、なんかコロナ余裕あるね」
「いつまでその余裕が持つかな~」
「え~」

「じゃあいくよ。3、2、1、……」

 リオのカウントダウンに、コロナは表情を強ばらせ、きゅっと目を閉じる。
 やはり遊びとは言え、体中をくすぐられるのは怖いらしい。
「……ん、あれ? リオ?」
「ゼロっ!」
 しびれをきらしたコロナがうっすら目を開けたところで、ヴィヴィオとリオは一斉にコロナの腋とあばらを両側からくすぐり始めた。

「ひゃははははははははっ!!? あぁぁっはっはっはっはっはっははずるいぃぃ~~!! ずるいよぉぉ~~ひゃははははははははははははは!!!」

 コロナはベッドの上で万歳をしたまま、体を左右によじって大笑いし始めた。

「さすがコロナ。すぐ離さなかったね」
「でも、いつまでもつかなぁ~?」

「やはははははははははっ!!! いじわる言わないでぇぇあ~~っはっはっはっははっはっはっは!!!」

 コロナは足をじたばたさせて笑い転げる。
 大笑いするのはかなりのエネルギーを消費するのか、部屋にはクーラーが入っているにもかかわらず、コロナの体は汗ばんできている。

「あぁあぁ~~っはっはっははっはっはっはははっ!! もうやっ!!! もぅ少し優しくやってぇぇ~~はっはっはっはっはっはっはは!!」

「だめだよコロナ。ルールだよルール。わたし達はコロナに手を離させないといけなんだから」
「コロナのこ大爆笑って結構レアだよね! なんか、楽しくなってきた」

 ヴィヴィオとリオは、それぞれ十本の指をコロナのあばらや脇腹、腋の下に突き立てながら好き勝手に言う。
 コロナは目に涙を浮かべてバカ笑いしている。

「いやぁああっはっはっはっはっはっははっ!! くすぐったいぃぃひひひひひひひひゃぁぁっはっはっっはっはっはっは~~!!」

 びたんびたんと地団駄を踏んでもがくコロナ。
 一分ほどくすぐったところで、リオが動いた。

「へっへ、コロナ、実はこっちのが弱かったりして~」

 いたずらな笑みを浮かべながらリオが向かった先は、コロナの足。
 コロナの膝の上にのっかったリオは、コロナのニーソックスのつま先を持って、両腕をリールのように巻き巻きと動かし、引っ張り脱がしていく。

「あぁぁ~~ははははははははリオぉぉ~~!? 伸びちゃうぅぅひひひひひひひひ、伸びちゃうよぉぉ~~っはっはっはっははっはっははっは!!」

 コロナが笑いながら抗議するのを無視して、リオは、すぽんっとコロナのニーソックスを脱がし取った。
「コロナの足ー!」
 リオは、ぽいっと脱がしたソックスを床に放り捨てると、歓声を上げ、素足にしたコロナの足の裏をガリガリと掻きむしる。

「ひゃぁぁあああひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!? あぁあひゃひゃ、ひゃだぁぁぁぁそれむりだよぉっぉ~~っひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ~~!!!」

「おお! いい反応! 指もめっちゃ動いてるし」

 リオは満足げに言いながら、もう片方のニーソックスも脱がし、両足の裏をくすぐる。

「あぁぁあひゃはっはっはっはっはだからだめぇぇえ~~ふぁっはっはっはっははっはははあきゃぁぁぁ~~~!!!!」

 コロナはぶんぶんと首を左右に振って笑い叫ぶ。

「ここで! 腋の下くりくり~!」
 ヴィヴィオが奇襲をしかけた。

「うぉほほほほほほほっ!!!? ふぎゃぁあああっはっはっはははいまダメいまダメいまダメぇぇえええうひひひひひひひひひひひひひ!!??」 

 コロナはガラ空きの腋の下を人差し指でくりくりほじくられ、目を見開いてぷるぷる首を振り、甲高い悲鳴を上げた。

 と、その直後。

「あ」
「手、離しちゃったね」
 コロナが手を離したのと同時に、二人はくすぐる手を止めた。

「ひぃぃ……ひぃぃ……二人とも、……容赦なさすぎだよぉ……」
 コロナは涙目になってぶー垂れ、
「すぐ……仕返し、して、やるんだからぁ」
 二人の顔をいたずらな笑みでにらんだ。


(つづく)