「C7……?」
「!?」

 夜の偵察中、突然声をかけられた椎名は目を見開いた。
 あどけないその少女の顔には見覚えがあった。

「お、お前は……、Gm」

 彼女がまだ「椎名枝里」という名を得る前の頃。
 生前彼女はコードネームC7として、特殊訓練を受けていた。
 コードネームGmは同じ訓練生だった。

「C7! ホントにC7なの!? まさか! 久しぶり!」
 Gmはぱぁっと明るい笑顔を浮かべ、椎名に駆け寄る。
「寄るな、小娘」
 椎名はドスの利いた低い声を出した。
「どうしたの?」
 足を止め、きょとんと首をかしげるGm。
「お前が内通者だったのだ。死ぬ瞬間まで気づけぬとは、我、浅はかなり」
 椎名の言葉にGmは、にっこりと笑った。
「あ、やっぱりここ、死後の世界なんだ。へぇ」

 Gmはゆっくりと椎名の周りを歩き回り始めた。
「そっかぁ……どうりでこの世界、アトムのシステムがおかしいわけだ」
 Gmはふふっと笑う。
 椎名は顔を強ばらせ、その動きを追う。手を短刀に添え、いつでも動き出せるように臨戦態勢を整える。
「いやさぁ、さっき出会い頭に空気中のアトムを再構成して、武器の形にして襲ってくる奴がいたからさぁ――」
 Gmはぺろりと舌を出して、
「食っちゃったよ」

 刹那、椎名は地を蹴ってGmに襲いかかる。
 Gmは笑顔を絶やさなかった。

「相変わらず遅いね、C7」

 勝負は一瞬でついた。

●●●

「んー、こうすればいいのかな、っと」

 Gmは、エンジェルプレイヤーの仕組みを初見でほぼ完全に把握していた。
 椎名は、Gmのスキルで具現化された長いコードのよううな紐で、体をIの字に引き伸ばして拘束されていた。

「く……、浅はかなり……」

 椎名は歯がみした。
 ギシギシと身をよじってみても、拘束は解ける気配がない。
 その様子を満足そうに見つめるGm。

「その制服、なんかここに普通にいる生徒たちのと違うけど、可愛いね。私も着てみたいなぁ」
 言いながら、Gmは椎名の制服のスカートをぴらっとめくる。
「……っ!」
「あ、ちょっとはずかしいんだ! かっわいい」

 Gmはケラケラと笑いながら、指をワキワキと動かし始めた。
「んーじゃ、どこから食べよっかなぁ。ここかな?」

 さわっ。

「んはっ!?」
 
 腋の下と突然撫でられ、声を漏らす椎名。

 椎名はニヤニヤと笑みを崩さずに、
「んー、こっちかな?」

 もみっ。

「ふひゃっ!?」

 こんどは脇腹を握られた。

「C7、相変わらずくすぐったがりだね。うん。優秀優秀」

 椎名はぐっと歯をかみしめる。
「そうやってお前は……我々の力を少しずつ奪い続けてきたのだな……」

「死んでからじゃどうにもならないけどねー」

 Gmは言うと、むき出しになった椎名のお腹に、つんと人差し指を立てた。

「ひゃぁぁあぁっ!!!」

 たまらずびくんとからだを仰け反らせて甲高い声を上げる椎名。

「おへそ丸出しじゃん。C7。こんな弱いくせに、そんなに触って欲しいの?」
 Gmは言いながら、人差し指でくるくる、おへその周りをくすぐりはじめた。

「ひゃははっ!!? はひぃぃっ~~、ちがっ、やめっ……触るなっはひぃ」

「う~ん。どうしよっかなぁ、お腹すべすべー」

 Gmは両手を使い、脇腹からお腹をなでなでとなで回す。

「ふひゃひゃひゃひゃっ! やめっ、はひっひっひひっひっひひっひ!!」

 Iの字に両手足を引き伸ばされた脇腹に、Gmの細い指先が這い回る。
 椎名は恥も忘れ、首を左右に振って笑った。

「やめろっはっはっはっはは、はひぃぃっひひひひひひふひぃぃぃ!!」

「まだ優しく撫でてるだけなんだけど。そんなにくすぐったい?」

「くふふふくすぐったいっ!! やめっ、やめてくりゃっはっはっはっはは!!!」

「ふーん……」

 Gmは指でぐるぐるお腹をかき混ぜるようにくすぐる。

「ふひゃっひゃっひゃっひゃっひゃあっぁっははっは!!」

 さらに、指先で描く円の幅を徐々に狭めていき、

「あひひひひやめっ、――んひゃぁぁあぁぁあああっ!!?」

 ずぼっと、ヘソの穴へ落とし込んだ。
 そのまま、くりくりとヘソをほじくる。

「うひゃはぁああっひゃはほひぃぃっひっひっひひやぁぁぁっはあははっは!!!」

「実は触って欲しかったんでしょ。そんな涎まで垂らして喜んで」

「喜んでないぃぃ喜んでないぃぃほひひひひひひっひひぷひぃぃぃいい~~!!!」

 椎名はブンブンと首を左右に振って笑い叫ぶ。
 Gmの指は徐々に加速し、本格的に素肌のお腹をわちゃわちゃくすぐりはじめる。

「ひゃはっ!!! はひゃひゃひゃひゃひゃひゃあひゃぁぁぁぁあ~~っはっはっっはっはっははぎゃぁぁぁ~~!!!」

 激しく笑う椎名にGmは笑いかける。

「なんだかC7、すっかすかの服着てる割に、ロングブーツ……足元だけ妙に厳重じゃない?」

「はひゃひゃひゃ!? な、なにをっ!!?」

「えいっ」

 すぽーん、と軽快に、ロングブーツと靴下が飛んでいく。
 Gmは、目にもとまらぬ早業で、椎名を素足にしてしまった。

「や、やめろ……」

「あ、C7、涙目になってる。やっぱ足弱いんだ」

「ちがっ……そんなことは――」

「こちょこちょー」

「うひゃひゃひゃひゃっ!!?」

 Gmが10本の指を椎名の足の裏へ這わせた途端、椎名が甲高い笑い声を上げた。

「ほら、やっぱり弱いんじゃんー。嘘はいけないんだー」

 Gmは爪を立てて、がりがりと椎名の足の裏、土踏まずの辺りを引っかき回す。

「うぎひひひひひひひひっ!!!? あがっはっはっははっっはっはは、弱いぃいいひひひひひひひ!! 弱いからやめりょぉおおおっはっはっはっははっはははっはっは~~!!」

 椎名は顔を真っ赤にして涙を流して叫ぶ。

「えー。こんな早く折れちゃうんだ。ちょっとC7にはがっかりだ」

 Gmはがっくりと肩を落としながら、指先で、椎名の足の指の付け根辺りをこそぐ。

「ぎやぁぁはっははははははははは!!? ちょっ、認めたぁぁああっははっはっははっはは、認めたからやめれぇぇぇぇいぃぃひひひひひひひひひひひ!!!」

「誰が認めたらやめるなんて言ったの? 馬鹿なの? 死ぬの? あっ、もう死んでるんだったテヘペロ」

「あがっはっはっはっはっははっはっは~~っ!!? つよくすりゅにゃぁぁははははははははははははははは~~!!!」

 その日、SSSの一員、椎名がGmの手に落ちた。
 SSSの明日はどっちだ。


(完)