「駄菓子屋、怪人やるのん」
「はぁ? 行きつけのバーのママじゃなかったのかよ」
「駄菓子屋、覚えててくれたのん?」
「……まぁ、なんでもいいけどよ」

 駄菓子屋に宮内れんげが遊びに来た。
 駄菓子屋の加賀山楓は、グレートマンごっこに付き合ってやることにした。

○○○

「で、なんで、あたしは足を縛られるんだ?」

 れんげは一生懸命、楓の両足を揃え足首をタオルで縛っていた。

「この前の話でやってたのん。捕まえた怪人にアジトを吐かせるのん」
「吐かせるって……。最近のこども向け番組はそんなのやってんのか」

 れんげは縛り終えると、正座をして、膝の上に楓の素足をのせた。
「駄菓子屋! アジトを言うのん!」
「お前、『駄菓子屋』って言ってるぞ。怪人だろ?」
「良いのん!」
「良いのか……」
 楓はため息をついた。
「で、何するんだ?」
「この手を使えば、どんなくっきょーな怪人も喋らずにはいられなくなるのん!」
「ああ、そうか、がんばれがんばれ」
 楓はめんどくさそうに言うと、ごろんと仰向けに寝そべった。
 何をしてくるかはわからないが、とりあえず、適当に時間が経ったら、アジトでもなんでも適当な場所を教えてやればいい。
 そんな風に悠長に構えていると、

「……っ!!?」

 突然の刺激に、楓はびくっと体を震わせ、目を見開いた。
 れんげは、小さな手で、こちょこちょと楓の足の裏をくすぐり始めたのだ。

「ちょっ、おまぇっ、それはっ……くひっ!? はっ、ははははははっ!!!」

 手加減を知らないれんげの指が楓の素足を襲う。
 楓は耐えきれず、笑い出してしまった。

「駄菓子屋、アジトを吐くのん!」
 れんげは言いながらにぎにぎと小さな指を動かす。
 細い指は、楓の足の指や、皺の間まで入り込んだ。

「ははははははっ!!! おまっちょっ、ちょっとは手加減あぁははははははははは~~!?」

 楓は驚いていた。
 くすぐりなんて子供の遊びに、こんなに自分が弱いなんて……。

「こははっははっははははははっ!! やめっ、あぁぁっはっはっはっはっはっはっっは~~!!!」

 笑いながら、楓は思い出した。
 昔から靴下を履くのがあまり好きではなかった。現在では靴下を履かないのが当たり前になって忘れていたのだ。
 楓は、小学生の頃、靴下が足の裏に擦れる感覚がくすぐったくて、靴下を履かなくなったのだ。
 足の裏の敏感さは、昔も今もまったく変わっていなかった。

「わぁはっはっははっはわかったぁぁアジト言う! 言うからやめぇぇっはっはっはは~~!!」

 楓はれんげに向かって叫んだ。
 もう耐えられない。
 笑いすぎて肺が痛かった。

 しかし、れんげから返ってきた言葉は予想外で、
「まだ早いのん!」

「はぁぁっははっはっはっはは~~!? 早いってなんだぁぁっはっはっははっはっはははは!!!」

「くっきょーな怪人は、仲間を簡単に裏切ったりしないのん!」

「あぁぁあっははっははっはははっ!! おまっ、そんな良い奴拷問すんなぁぁぁはっはっはっはっっはは!!!」

 れんげのくすぐりテクニックは、小学一年生とは思えないほど高かった。
 反応の良かった土踏まずや、指の付け根など、次々と弱点を暴き出し、的確に攻めてくる。

「やぁぁあはははははああはははははもう勘弁しろぉぉ~~っはっははっはっははっはは!!!」

 しばらくくすぐられて、
「駄菓子屋、アジトを吐くのん!」

 やっと質問が来た。

「あぁぁあっはははっはははははは三丁目の角っ!! 三丁目の角だぁぁぁっははははははははははは!!!」

 楓は適当な住所を叫んだ。
 すると、
「じゃあ次は、敵の幹部の弱点を吐くのん!」

「はぁぁぁぁあははははははあ!!!? 終わりじゃねぇのかぁぁあひゃっはっはっははっははっは!!!」

 結局、小出し、小出しに、計10問ほど答えるまで、楓はくすぐられ続けた。
 終わる頃には息が上がって、死にそうだった。
 れんげは満足そうだった。
「駄菓子屋、なかなか上手かったのん!」
「…………」

 仕返しに、靴下をひん剥いて、泣くまでくすぐってやった。


(完)