吉永双葉(よしなが ふたば)は、友人の小野寺美森(おのでら みもり)、梨々・ハミルトン(りり ――)とともに兎轉舎の倉庫を掃除中、ふと腰を下ろした安楽椅子に拘束されてしまった。
「はぁ!? なんだこれ!?」
 双葉の反射神経でも避けられなかった。
 座った瞬間、安楽椅子の肘掛けと脚にベルトのような枷が生え出て、双葉の手首と足首を固定したのだった。
「双葉ちゃん、大丈夫!?」
 異変に気付いた美森が駆け寄る。
「何々? 『強制尋問機』って書いてあるよ?」
 梨々は双葉の後ろに回って、安楽椅子に書かれた札を読み上げた。
「なんだよ尋問機って! おい梨々! なんとかしてくれよ!」
「なんとかって言われてもわかんないし。元はと言えば双葉ちゃんがズルして休もうとするから、罰が当たったんだよ! ……あ、なんかボタンがある。押してみようポチっ」
 梨々は何の迷いもなく椅子の側面についたボタンを押した。
 途端に椅子の内部からゴゴゴと轟音が聞こえ始めた。
「ちょっ!? おまっ!? 何のボタンかもわかんねぇのに押すんじゃねぇ!」
 双葉は暴れる。
 が、手首足首の拘束具はまったく離れない。
 すると、椅子の後ろから十本のマジックハンドが現れた。
「な、なんだよぅ……!」
 怯える双葉の体にマジックハンドが指をわきわきさせながら襲いかかる。
 双葉は腋の下や脇腹、腰、足元では靴を脱がされた素足の足の裏をこちょこちょとくすぐられた。

「ひゃっ!!? あぁっはっはっはっはっは!? な、なんだこりゃぁぁっはっはっははっはっははは~~!!」

 途端に笑い出す双葉。

「ふ、双葉ちゃん……っ!?」
「わぁ」
 美森は唖然とし、梨々は感嘆の声を上げた。

「ちょおぉぉおおこらぁぁぁあぁひゃっはっはっはは、やめっ!! 助けてぇえぇえ~~っはっはっはっはっはっはっはっは!!」

 十歳の双葉の体には刺激が強すぎた。
 双葉は涙を流して笑っている。

 美森はハッとした。梨々の傍に駆け寄る。
「りっ、梨々ちゃん! 早く機械を止めないと! 双葉ちゃんが死んじゃうよ!」
「そんなこと言ったって、私にもどれが止めるボタンかわかんないし! これかな? ポチっと」

「ふぎゃぁぁあああああ!!」

 梨々がボタンを押した途端、双葉の声がさらに激しくなった。
 美森が見ると、双葉の足元にブラシが現れ、彼女の足の裏をごしごしとこすり上げていた。

「ぎゃはははははははあははははっ!!! りりぃぃぃいっひっひっひっひっひっひっひ!!! わっかんねぇのに押すんじゃねぇぇええうひゃはははははははははははは!!!」

「わざとじゃないもん! だいたい双葉ちゃんがこんな椅子勝手に座るから――」
「今は喧嘩してる場合じゃないよ!」

「ひゃぁあああ~~っはっはっはっはっはっはっは!! ホントにっ、ホントに笑い死ぬうう~~っひっひっひひっひっっひっひっひ!!」

「あわわ、双葉ちゃん……っ、がんばって!」
 美森はなんとか双葉を励まそうと声を掛ける。

「みもりぃぃいぃひひひひひひひひひひひっ!!! あひゃぁぁああくすぐったいぃぃぃぃっひっひっっひっっひっひふはやぁぁぁ~~!!」

 泣き叫ぶ双葉の顔は見ていられなかった。
 マジックハンドの動きが徐々に激しくなっているように見えた。
 不審に思って梨々の方を見ると、梨々が、もうどうせわからないからと開き直ったように手当たり次第にボタンを押しまくっていた。
 美森は悲鳴を上げた。

「あひっはぎゃぁあああああ~~!!!」

 双葉の悲鳴がそれをかき消した。

 しばらくして兎轉舎のお姉さんに見つかって、双葉は救出されたものの、三人ともむちゃくちゃ怒られた。


(完)