小学四年生の少年はくすぐりフェチだった。
といってもマスターベーションの経験すらない彼は、なぜくすぐられる女性を見てペニスが硬くなるのかは理解していなかった。
あの人をくすぐりたい。
衝動的にそう思った。
本屋で漫画本を物色していると、向こうの棚に見えた女性。
文庫本を立ち読みしている。
身長は150センチぐらいだろうか。高校の制服を着ていた。
ボブカットで不機嫌そうな表情。
あの冷静そうな顔が……。
少年は女性の歪んだ笑顔を想像して勃起していた。
たまらなくなり、彼はポケットから一体の藁人形を取り出した。
彼は、祈祷師の息子だった。
祈祷術は勉強中だったが、他人の身体を操る程度の力はずいぶん前に身につけていた。
藁人形の藁を一本抜き取り、そっとその女性の元へ近づく。
「あっ、ごめんなさい」
少年は彼女にぶつかっていった。
その拍子に彼女の制服のポケットへ藁を忍び込ませる。
「……気をつけてください」
彼女はピシャリと言い、不機嫌そうにぶつかった少年を一瞥して、読書に戻った。
怖かった。学校の先生に怒られているような気がした。
しかし、その態度は逆に少年の衝動をかき立てた。
彼はもう一度小声で謝ってから本棚の角まで逃げ身を潜め、藁人形を取り出した。
こども相手にあんな顔するお姉さんは、こうしてやるっ!
少年は、藁人形の腋の下を指先でなで始めた。
「……んっ……!?」
彼女はびくっと身体を震わせ、腋を閉じた。驚いたように目が見開かれている。
そんなことしても無駄だよ。
少年は藁人形の腋の下をこすり続ける。
「んっ、……ふっ! くぅっ」
彼女は身体をくねくねとよじらせ、あたりを見回した。
当然誰もいない。
彼女は本を棚にもどすと、バッグを持ってその場を立ち去ろうとした。
そうはさせない。
「んふっ!!? いっ!?」
彼女は足をもつれさせて転倒した。
本屋にいた客や店員が視線を向ける。
少年は、藁人形の足の裏をこちょこちょ人差し指でくすぐっていた。
「ふはっ……ひ、なっ……!!」
彼女は必死で笑い出すのをこらえているようだった。
周囲の視線を集めてしまった今、公衆の面前で大笑いするなんて恥ずかしいのだろう。
彼女は床で足を抱え込むようにして、ぷるぷる身体を震わせている。
無駄だって言ってるのに……。
少年はさらに藁人形の足をいじくる。
「ひあぁっ!! ふぁっ!!?」
「お客さん。大丈夫ですか?」
店員がよってきた。
「だいじょ――ひゃぁあああっ!!!」
かなりくすぐったいのだろう。
彼女は背に腹は替えられないと腹をくくったのか、その場でローファーと靴下を脱いだ。当然足にはなにもついてない。それでも虫の這うようなくすぐったさは続いているのだ。
「あの、お客さん?」
店員は心配そうだ。
彼女は眉をしかめ、恥ずかしそうに靴下をはき直そうとした。
そこで、少年は筆をとりだした。
「……あっ――」
彼女の動きが止まった。
少年は藁人形の足を筆先でねぶるようにくすぐっていた。
「――ひひゃはははははははははははっ!!! あひぁぁぁっひっひっひっひっひっひっひひっひっひっひっひ!!!」
突然彼女はたがが外れたように笑い出した。
店員や他の客は互いに顔を見合わせ、戸惑っている。
「ひぃぃ~~っひっひっひっひ、なんでっ!? くすぐったひぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!!」
先ほどまでの仏頂面が嘘のように笑いまくる彼女。
少年は興奮した。
さらに、筆先を藁人形の身体中に這わせていく。
「ひぃぃ~~っひひひひひゃめっ!! やめてくださいぃぃっひっひひっひっひっひっひ!!」
彼女の目には涙が浮かんでいた。
少年は、ひとつ、彼女の弱点を見つけた。
「ひぁあああっひゃひゃひゃひゃひゃっ!!? ひゃぁあああああああああ!!」
お腹だ。
藁人形のちょうどど真ん中。ヘソあたりを筆先でいじくると、彼女は大きな反応を示した。
「ひぃぃぃぃっひっひひひぃぃひぃぃぃひひっひひひひひひひゃっひゃひゃっひゃめぇぇえぇ~~!!!」
彼女は制服のワイシャツボタンを外し、お腹を直に抱えて笑っていた。
手で押さえようが、床に押しつけようが、くすぐったさはまったく収まらない。
「ひひっひいひひひいいいひひひひひひひっ!!! ひゃあぁあはあはははあははあはあっははははっ!!」
本屋の床の上で、びたんびたんとのたうち回って笑う女子高生。
周囲の人々は唖然としている。
少年は藁人形に筆を這わせながら微笑んだ。
ふふふ、これがこども相手にコワイ顔をした報いなのだよ。
少年が彼女をくすぐりたいと思ったのはぶつかる前だが、問題ない。
あと五分ぐらいかな。
散々笑わされた後で彼女が周囲にどんな言い訳をしてこの場を去るのかも楽しみだった。
(完)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ここから作者コメント)
こんばんは。ertです。
チャットルームでお題をいただいて書いたもの。
といってもマスターベーションの経験すらない彼は、なぜくすぐられる女性を見てペニスが硬くなるのかは理解していなかった。
あの人をくすぐりたい。
衝動的にそう思った。
本屋で漫画本を物色していると、向こうの棚に見えた女性。
文庫本を立ち読みしている。
身長は150センチぐらいだろうか。高校の制服を着ていた。
ボブカットで不機嫌そうな表情。
あの冷静そうな顔が……。
少年は女性の歪んだ笑顔を想像して勃起していた。
たまらなくなり、彼はポケットから一体の藁人形を取り出した。
彼は、祈祷師の息子だった。
祈祷術は勉強中だったが、他人の身体を操る程度の力はずいぶん前に身につけていた。
藁人形の藁を一本抜き取り、そっとその女性の元へ近づく。
「あっ、ごめんなさい」
少年は彼女にぶつかっていった。
その拍子に彼女の制服のポケットへ藁を忍び込ませる。
「……気をつけてください」
彼女はピシャリと言い、不機嫌そうにぶつかった少年を一瞥して、読書に戻った。
怖かった。学校の先生に怒られているような気がした。
しかし、その態度は逆に少年の衝動をかき立てた。
彼はもう一度小声で謝ってから本棚の角まで逃げ身を潜め、藁人形を取り出した。
こども相手にあんな顔するお姉さんは、こうしてやるっ!
少年は、藁人形の腋の下を指先でなで始めた。
「……んっ……!?」
彼女はびくっと身体を震わせ、腋を閉じた。驚いたように目が見開かれている。
そんなことしても無駄だよ。
少年は藁人形の腋の下をこすり続ける。
「んっ、……ふっ! くぅっ」
彼女は身体をくねくねとよじらせ、あたりを見回した。
当然誰もいない。
彼女は本を棚にもどすと、バッグを持ってその場を立ち去ろうとした。
そうはさせない。
「んふっ!!? いっ!?」
彼女は足をもつれさせて転倒した。
本屋にいた客や店員が視線を向ける。
少年は、藁人形の足の裏をこちょこちょ人差し指でくすぐっていた。
「ふはっ……ひ、なっ……!!」
彼女は必死で笑い出すのをこらえているようだった。
周囲の視線を集めてしまった今、公衆の面前で大笑いするなんて恥ずかしいのだろう。
彼女は床で足を抱え込むようにして、ぷるぷる身体を震わせている。
無駄だって言ってるのに……。
少年はさらに藁人形の足をいじくる。
「ひあぁっ!! ふぁっ!!?」
「お客さん。大丈夫ですか?」
店員がよってきた。
「だいじょ――ひゃぁあああっ!!!」
かなりくすぐったいのだろう。
彼女は背に腹は替えられないと腹をくくったのか、その場でローファーと靴下を脱いだ。当然足にはなにもついてない。それでも虫の這うようなくすぐったさは続いているのだ。
「あの、お客さん?」
店員は心配そうだ。
彼女は眉をしかめ、恥ずかしそうに靴下をはき直そうとした。
そこで、少年は筆をとりだした。
「……あっ――」
彼女の動きが止まった。
少年は藁人形の足を筆先でねぶるようにくすぐっていた。
「――ひひゃはははははははははははっ!!! あひぁぁぁっひっひっひっひっひっひっひひっひっひっひっひ!!!」
突然彼女はたがが外れたように笑い出した。
店員や他の客は互いに顔を見合わせ、戸惑っている。
「ひぃぃ~~っひっひっひっひ、なんでっ!? くすぐったひぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!!」
先ほどまでの仏頂面が嘘のように笑いまくる彼女。
少年は興奮した。
さらに、筆先を藁人形の身体中に這わせていく。
「ひぃぃ~~っひひひひひゃめっ!! やめてくださいぃぃっひっひひっひっひっひっひ!!」
彼女の目には涙が浮かんでいた。
少年は、ひとつ、彼女の弱点を見つけた。
「ひぁあああっひゃひゃひゃひゃひゃっ!!? ひゃぁあああああああああ!!」
お腹だ。
藁人形のちょうどど真ん中。ヘソあたりを筆先でいじくると、彼女は大きな反応を示した。
「ひぃぃぃぃっひっひひひぃぃひぃぃぃひひっひひひひひひひゃっひゃひゃっひゃめぇぇえぇ~~!!!」
彼女は制服のワイシャツボタンを外し、お腹を直に抱えて笑っていた。
手で押さえようが、床に押しつけようが、くすぐったさはまったく収まらない。
「ひひっひいひひひいいいひひひひひひひっ!!! ひゃあぁあはあはははあははあはあっははははっ!!」
本屋の床の上で、びたんびたんとのたうち回って笑う女子高生。
周囲の人々は唖然としている。
少年は藁人形に筆を這わせながら微笑んだ。
ふふふ、これがこども相手にコワイ顔をした報いなのだよ。
少年が彼女をくすぐりたいと思ったのはぶつかる前だが、問題ない。
あと五分ぐらいかな。
散々笑わされた後で彼女が周囲にどんな言い訳をしてこの場を去るのかも楽しみだった。
(完)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ここから作者コメント)
こんばんは。ertです。
チャットルームでお題をいただいて書いたもの。