~~~

 クラスメイトの広田さんはたしか調理部だったはずだ。だからだろう。学校の制服の上に桜柄のエプロンを身につけていた。
 部屋の明かりは付いていない。
 窓からかすかに射し込む夕日。夕方に撮影されたものらしい。

「なんだ……、これ……」

 僕は絶句した。
 動画の冒頭に映し出された広田さんは、手術台のような台の上で仰向けに寝そべっていた。両腕両脚を大の字に広げ、手首と足首に枷が付けられている。
『や……助けて、下さい』
 画面の中の広田さんが泣きそうな声を上げる。
 彼女の周囲に、5人の男が集まってきた。みんな、大学生ぐらいに見えた。
 ひとり、見知った顔があった。
『やあ、弟よ』
 兄だった。
 画面に向けて軽く手を上げて、気さくに話しかけてくる。
『俺たちな。大学で「くすぐり愛好会」ってサークルに入っているんだ。
 活動内容は、毎日、可愛い女の子を拘束して大勢でくすぐって笑わせる。どうだ? そそられるだろ? そそられたならお前も立派なくすぐりフェチだ。
 おっと、勘違いしないでくれよ。平常の活動時には、基本的にくすぐる側くすぐられる側双方同意のもとで行っている。今回は特別……
 俺の大事な弟をいじめた奴らにはお仕置きしてやんないとな。最後までゆっくり楽しんでくれ』

 兄の口上が終わると、5人の手が、広田さんの体へ伸びた。

『い、……いやっ! やめっ――あぁぁあああああはははははははははははははははっ!?』

 びっくりして音量を下げた。
 広田さんは、腋、脇腹、お腹、足の裏など、体中をいきなりくすぐられ、大声で笑い出した。

『やぁぁあっはっはっははっははっはっはっは!! くすぐったいぃぃい~~~いやぁぁはははははははははははは!!』

 ショートカットの髪の毛を振り乱して、目に涙を浮かべ、眉をへの字にして、広田さんが笑っている。
 僕は、ぞくぞくと下腹部がうずく、今までに感じたことのない感覚に襲われ、当惑した。
 広田さんは、クラスで僕を嘲笑していたグループのひとりだった。先日兄に問われたときに、教えたメンバーのひとりだ。
 だが、今にして思うと、広田さんはもともとおとなしいタイプの子で、会話には直接入ってなかったような気がする。別れた彼女や、他のメンバーが盛り上がる輪には入っていたものの、終始苦笑しているだけだった。
 そんな広田さんが、5人がかりでくすぐられて、お仕置きされている……。

『ひやぁあああひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!? うひぃぃいいいい!? そこはあぁ、だめぇぇああはっはっはっははっはっは!!』

 広田さんはいつの間にか靴下まで脱がされていて、足の指と指の間をぐりぐりとくすぐられていた。
 大学生のお兄さんのごつい指が、広田さんの小さな足の指間にねじこまれる。

 僕は見入っていた。

 広田さんは、可愛い顔をぐしゃぐしゃにして笑っていた。
 口元は醜く緩み、眉間に皺を寄せ、鼻水を垂らして大笑いする。

『おねがぁぁあははっはっはっはっは!! たすけてぇぇええはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!』

 広田さんへのくすぐりは15分ほども続いた。
 制服もエプロンも汗で体に張り付いて、ぴくぴくと足の指が痙攣している。緩みっぱなしの口元。胸を大きく上下させて息を切らす広田さんの図で、画面がブラックアウトした。


(つづく)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 時すでに遅しって状況、結構好きです。