くすぐり作文晒し場

カワイイ女の子の靴下脱がしーの足の裏をコチョコチョしちゃう系小説投稿ブログ! 本番行為は一切無しなので、健全な18歳児でも安心してお楽しみいただけます!

2014年09月

Ticklish Girls 後編

 深夜の天上学園教員棟最上階『校長室』には仲村ゆり(なかむら ゆり)一人だけが残っていた。

「なんでここが『対天使作戦本部』だってわかったの?」
 ゆりが聞く。
「あんた、『死んだ世界戦線』とやらに、ここに来たばかりの死人を勧誘したいんだろ? 混乱して大人に助けを求めようとした間抜けが最終的に行き着く場所っつったらここしかねーじゃねーか。最上階だし。不安になったら上に逃げるって人間の心理?」
 小曽橋太郎(こそばし たろう)は言いながら、肩に担いであった荷物を、ごろんと床に下ろした。
「ひっ!?」
 ゆりは、その荷物の顔を見て軽く悲鳴を上げた。

 仰向けに転がった立華かなで(たちばな かなで)は、白目を剥いて引きつった笑顔を張り付けたまま絶命していた。顔中に、涙や鼻水の乾いた痕が見られた。死ぬ直前よほどの苦痛を味わったのだろう。両足とも素足で、ブレザーは前ボタン、ワイシャツのボタンがところどころ引きちぎられている。

「死んだじゃねーか!」
 小曽橋はいきなり叫んだ。
 びくっとゆりが反応する。
「結局こいつ、死にやがった! あんなに元気に、楽しそうに笑ってたのにさぁ! だんだん声が出なくなって、話しかけても、話しかけても、全っ然、反応してくんないの! 最後はひゅーひゅー肺のつぶれるような呼吸音しか出さなくなってさぁ! この世界では死なねーんじゃなかったのかよ! せっかく、壊れない人間を見つけたと思ったのにぃぃっ!!」
 小曽橋は小さなこどものようにかんしゃくを起こして言った。
 涙がにじんでいた。
 ゆりは、「こいつはやばい」と思ったのか、じりっと後ずさりした。
「あんたさぁ」
 小曽橋ににらまれ、足を止めるゆり。
「この世界でも、人って死ぬの?」
 ゆりは、少し間をおいてから、
「いや、……少し時間経てば、生き返る、けど」
「ホントかっ!?」
 小曽橋はぱぁっと笑顔を作った。

「じゃあ、こいつが生き返るまで、ゆりちゃん、一緒に遊んでくんねーか?」

 ゆりは、ゾクっとした。小曽橋の狂気を感じたゆりは、反射的にベレッタを構え、後ろに下がりながら発砲した。
「『ガードスキル・ディストーション』」
 小曽橋が言うと、小曽橋の体の周辺の空間が歪み、銃弾は弾かれた。
「そ、それっ、天使の……!?」
 ゆりは絶句する。
「やっぱり抵抗してくれるほうが嬉しいねぇ~~」
 小曽橋はひひひと笑うと、
「でも終わり」
 冷たく言い放った。
「『バインドスキル・コンプレッサー』」

●●●

 数分後。
 『対天使対策本部』の中央で、『バインドスキル』によって両腕を大きく左右に広げられ両足をそろえて伸ばされたTの字に拘束された仲村ゆりは、両足の裏を小曽橋太郎にくすぐられていた。

「ひゃはははははっ!!! きゃっはっはっはっはっは、やめっ、やめてぇぇぇ~~っはっはっはっはっは!!!」

 小曽橋が指を動かすたびに、ニーソックスの生地がこしゅこしゅと音を立てる。

「やっぱりそうやって元気なうちから拒否反応示してもらえると楽しいねぇ~~」
「お願いぃぃっひっひっひっひっひっひっ!!! 嫌ぁぁっはははははははははははは!」
 ゆりは髪の毛を振り乱して笑っている。

「さぁて、ゆりちゃんの弱点はぁ~~?」
 言うと小曽橋は、ゆりの太ももをくすぐる。

「ふわっはっはっはっはっはっ!!! やだっ、あぁぁっはっはっはっはっはっは~~っ!!」

 ゆりは膝をがくがくと震わせて悶えた。
「ここも弱いねぇゆりちゃん。どんどん開発していくよぉ?」
「いやぁぁぁははははははっ!!! やめてっ、やめてってばぁぁぁはははははははっ」
 ゆりは必死に首を振って拒否を示すが、小曽橋は両手をゆりの脚を這わせていき、脇腹の上で手を止めた。

「ひっ!? くぅ~~!!」
 脇腹に触れているだけでもくすぐったいようで、ゆりは顔を真っ赤にして唇をかみ締めている。
「へぇゆりちゃ~ん、全身が弱点なんじゃないかなぁ。俺、そういうの好きだぜぇ」
 小曽橋は、中指をゆりの脇腹へ食い込ませると、ぐにぐにと振動させた。

「ぎゃははははははははははははっ!!? だぁははははははははは……っ、それ嫌はははははははっ!!! ぎついぃぃひひひひひひひひひひひひひひひ!!!!」

 ゆりは腰を左右にくねくねと揺らして笑う。
 開きっぱなしの口からはだらだらと涎が流れ出ている。

「ん~~効くねぇ。ここ弱い奴ぁ多いけど、いい反応だぜぇ~、ゆりちゃん?」
「あぁははははははっ、とめてっ!! おねっ、一旦んひっひひひひひひひひ、とめてぇぇぇへっへっへっへっへ!!!」
 ゆりは涙を流して懇願する。
「じゃあくすぐって欲しい場所を言ってごら~~ん?」
「ひゃっ!!? いやっはっはっはっははっはっ!!! そんなとこ、無いぃぃ~~ひひひひひひひひひひひひ!」
 ゆりは、ぶんぶんと首を左右に振った。

「じゃあ言いたくなるようにしてやる」
 小曽橋はゆりのアバラに指を突きたて、ごりごりと揉み解した。

「ぐひゃっ!! いひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! だっ、やだっ、やだぁぁあははっははっはっはっはっ!!!」

 ゆりは両手両足をびくびくと動かして暴れた。

「こんなところはどうかな~~?」
 小曽橋は、指をうりうりと動かしながら、ゆっくり両手を腋の方へ上げていく。
「いひゃっ!!! いやっはっはっはっはっはっ!!! だめぇぇぇっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」
 ゆりは叫ぶ。
 が、小曽橋の指はそのままゆりの腋の下へ突き刺さり、こちょこちょと激しく蠢いた。

「ふぎゃっはっはっはっはっははっ!!!! ひやぁぁぁ~~はははははははははっ!!! やだやだやだぁぁぁっはっはっはっはっはっ、がぁぁあっぁひゃひゃひゃひゃっ!!!」

 ゆりは首を上下左右に振り乱し大笑いする。
 大きく広げられた腕を必死に下ろそうとしているのか、肘がガクンガクンと下方へ揺れ動く。

 しばらくして、ゆりは腋の下のくすぐりに耐えられなくなったようで、
「がぁぁっはっはっはっははっ!!! わかったっ、っはっはっは、わかったからぁぁひゃひゃひゃひゃ!!!! 足の裏っ、足の裏くすぐってぇぇぇぇはははははははははっ!!!」
 小曽橋の求めた『くすぐって欲しい場所』を言ってしまった。

「そっかぁ。じゃあしばらく腋の下で遊ばせてもらおうかなぁ?」
 小曽橋はこりこりと指を動かしながら言った。
「あぁぁひゃひゃひゃひゃっ!!? 嫌っ、なんでぇぇっはっはっはっはっ、足ぃぃぃっ!!! 足やっていいからぁぁぁははははははははっ!」
 ゆりは涙を流して叫ぶ。
「だって腋くすぐられてそれ言うってことは、腋が一番弱くて、足が一番つよいってことだろ? 心配すんな! あとで足もしっかり開発してやるから!」
 小曽橋は無慈悲に言うと、親指をゆりの腋と乳房の付け根のツボにぐりっとねじ込んだ。
「ぐぎゃぁぁっはっはっはっはっ!!!! だっはっはっは、いぎぃぃひひひひひひひひひひ!!! もうだめぇぇぇはっはっはっはっはっは~~っ!!」

「こことこっち、どっちがいいかなぁ?」
 言いながら小曽橋は、乳房の付け根のツボと、背側の側胸部を同時にくすぐりながら言った。
「いぎゃぁぁはっはっはっはっは、どっちも嫌あぁあぁぁはははははははははっ」
「んじゃあ、どっちもだな」
 小曽橋は指の腹で骨をしごくように、ツボと側胸をくすぐる。
「いぎぃぃぃぃひゃひゃひゃひゃひゃっ、あがぁぁあははっはははははははははは!」

「こんなのも効くんじゃねーの~~?」
 小曽橋は、人差し指を、ゆりの左右の肋骨の先から腋の下のくぼみまで力強くなぞるように往復させた。
「あひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! いだっ、いだぁぁあっひひひひひひ、ひぃ~~ひっひっひっひっひっひ!」
 ゆりは激しく体を揺らし、肘や膝ががくがくと激しく震わせて笑う。

 しばらくして、小曽橋は手を止めた。
「……ふひぃ……ひぃ……」
 ゆりは汗びっしょりで、荒く息を吐いている。
 小曽橋は、うつろな視線を宙に預けるゆりを尻目に、ゆりの足下へ移動した。
「さぁ、ゆりちゃん、お望みの足の裏だぜぇ」
 言いながら小曽橋は、ゆりの両足から、ニーソックスをするすると脱がしとった。
 ゆりは、力なく天井を向いたままだ。
 小曽橋は、ゆりの両素足のかかとへ指をあて、シュッとなぞり上げた。
「あひぃっ!?」
 途端、ゆりの足の指がびっくりしたように開いた。
「さっきあんなにお願いしてきたもんなぁ? 『足の裏くすぐって』ってな。楽しみでしかたねーんだろ? んー?」
「……ひ、お願っ……やめっ」
 ゆりは、涙を浮かべ、言葉を発する。戦線リーダーとしての威厳はもはやまったく見られない。
 小曽橋は無言で、両手計十本の指を、ゆりの両足の裏へわちゃわちゃと這わせた。

「やはははははははっ!!? もぅ嫌ぁああぁぁはっはっはっはっはっはっは!!」

 ゆりは体をびくんと反らせて笑い出した。
「あらー? 足の裏は強いんじゃなかったんですかー?」
 小曽橋がおどけて言う。
「ひゃっはっはっはっはっ!! ちがっ、ひっひっひっひ、誰も強いなんて言ってなぁ~~っひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」
 ぶんぶんと首を左右に振って叫ぶゆり。
「ソックス越しと素足、どっちがくすぐったいですかー?」
「いやぁっはっはっはっはっはっ!!! そんなのっ!! いぃぃ~~ひひひひひひひひ、素足に決まってりゃぁぁっはっはっはっはは!!」

「じゃあ次はー」
 小曽橋は、人差し指を鉤状に曲げて、ゆりの右足の土踏まず、左足のかかとを同時にひっかいた。
「やっはっはっはっはっはっ!!!! ひやぁぁははははははは」
 ゆりの足の指がくすぐったそうに激しく暴れる。
「土踏まずとかかと、どっちがくすぐったいですかー?」
「きゃぁぁあっははははははははっ!!!? そんなのどっちっ……ひひひひひひっ、ちがっ! 答えられないぃぃっひっひっひっひっひ!!」
 ゆりは先ほど腋をくすぐられた際に『どっちも』と答えて両方くすぐられたことを思い出したようだった。
「答えないと、とまんねーぜぇ?」
 小曽橋はカリカリと指の動きを速めた。
「いやぁぁはははははっ!!! かははあはっ、かかとぉっ!! かかとのがくすぐったいからぁぁははっはっはっははっはっ!!! やめてぇぇぇ~~」
「へー」
 小曽橋はゆりの右足の指を掴んでそらし、ぴんと反り返った土踏まずをひっかいた。
「あがぁぁぁひゃひゃひゃひゃっ!!!!? なぁぁっはははははは!!? かかとおぉぉ~~っはっはっは、かかとだってぇっぇひゃっひゃっひゃひゃ」
 ゆりはびっくりしたように笑い出す。
「嘘ついてんじゃねーよ。こっちの方が反応いーじゃねーか」
「いやぁっはっはっはっはっはっ!!! お願あぁぁひゃひゃひゃひゃひゃっ!!! やめてぇはははははははははっ!!」
 くすぐられていない左足がびくびくと激しく揺れ動いている。
「しかたねーな。じゃあこっちで勘弁してやんよ」
 小曽橋は言うと、反らしたままのゆりの右足の指の付け根をガリガリとくすぐった。
「あぎゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!? 嫌ああぁぁぁあははははっ!! それやだっ、それやだあぁあぁあひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」
「ゆりちゃーん? さっきの土踏まずと指の付け根、どっちがくすぐったいですかー?」
「いやあぁぁあぁはひゃひゃひゃひゃっ!!! やめてぇぇ~~~っきゃはははははははっ、どっちもやだぁぁああはははははははははっ!!」
 ゆりは限界のようで、涙と涎を撒き散らして懇願するように叫んだ。

「しかたねーな。『バインドスキル・コンプレッサー』」
 小曽橋は指を止め発声した。
 その瞬間、電気を帯びたような透明なリングが十個、ゆりの足の指それぞれの周囲に出現し、きゅっと締め付けた。
「ひっ!?」
 ゆりの足の指が開かれた状態で固定された。
 小曽橋はゆりに覚悟を決める間も与えず、ゆりの右足の土踏まず、左足の指の間を同時にくすぐった。
「ぐぎゃぁああああああひゃひゃひゃひゃっ!!!!? ひぎゃぁああああっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!! なんじゃそりゃぁああはははははははははははははっ」
 ゆりは奇声を上げた。
 くすぐられている素足はひくひくと微動している。
「あがはははははははっ、ひぎひひひひひひひひっ!!! 壊れりゅっふがひゃひゃひゃひゃひゃ!!!! 壊れりゃぁああっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」
 ゆりは舌を出して白目を剥いて大笑いしている。

「すげぇ効くだろ? ゆりちゃん。最初全然喋ってくんなかったかなでちゃん……『天使』ちゃんも、これですっげぇ反応してくれるようになってさぁ! 『やめて!』『助けて!』って笑いながら泣き叫ぶんだぜ? ずっと俺の言葉、ガン無視決め込んでたくせによぉ」
 
「いぃぃぃひひひひひひひひひ!!!? があぁぁっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」
 ゆりは聞こえているのかいないのか、激しく体を震わせて笑い続ける。

「かなでちゃんは一時間ちょっとで壊れちゃったけど……、ゆりちゃんはどうかなぁ?」

「いぎゃぁあっはっはっはっはっは!!! ひだぁぁっ、ぎゃひゃひゃひゃははははっはははははっ!!?」
 ゆりは言葉を作ることができないようで、ただ首を激しく左右に振る。

「せめて、かなでちゃんが『直る』までは、楽しませてくれよ?」

 小曽橋太郎はにやりと笑うと、十本の指の動きを速めた。


(完)

Ticklish Girls 前編

「目は覚めた?」
 男はハッと声のした方を見た。
 少女の背中。高校生なのか、セーラー服を着ている。左肩に『SSS』のロゴマークが印字されている。セミロングの髪の毛。右側頭部に黄緑色の大きなリボンが付いている。
 男は声を掛けようとして、ぎょっとした。
 少女の手には、狙撃用ライフルが握られいる。前方の何かに狙いを定めているようだ。
「ようこそ」
 少女は振り返って、
「死んだ世界戦線へ」

 男は少女の言葉を聞いてすぐに自分の置かれた状況を理解した。
「突然だけど、入隊してくれないかしら?」
 少女は、銃を構え直して言った。
「ここにいるってことは、あなた、死んだのよ」

 男は自分が死んだことを覚えていた。
 警察から逃げて車道に飛び出したところを大型トラックに見事に跳ね飛ばされたのだ。
 
 小曽橋太郎(こそばし たろう)。未成年でありながら全国指名手配の凶悪殺人犯であった。
 その犯行が極めて異質で、気に入った女性を次から次へと誘拐しては、死ぬまでくすぐるというものだった。

「ここは死んだ後の世界。何もしなければ消されるわよ」
 少女は、小曽橋の沈黙を動揺と捉えたようで、補足説明をした。
「あんたが今狙っている奴にか?」
 小曽橋は少女の背中に言った。
 少女が抱えた銃口の数百メートル先のグラウンドには、ベージュのブレザーを着て、後頭部にバレッタを付けた長い銀髪の小柄な少女が佇んでいる。
「あらあなた、順応性が高いじゃない。そういうの嫌いじゃないわ。で、質問の答え。消すのはおそらく神。あの子は天使」
「天使。神の使者か……すなわち、俺達の敵」
「もの分かりがいいじゃない。それは入隊してくれるって意思表明ととっていいのかしら?」
 少女は銃を構えたまま言った。
 小曽橋は少女の質問には答えず、
「あんた。名前は?」
「仲村ゆり(なかむら ゆり)。戦線のリーダーよ。今後よろしく」
 勝手に『Yes』ととったらしいゆりは、自己紹介をした。
「俺、向こうに行っていいか?」
「はぁぁっ!?」
 小曽橋の申し出に、少女は素っ頓狂な声をあげ振り返った。
「なんで!? わけわかんないわっ!!」
 ゆりは大声を上げて小曽橋に詰め寄って、
「どうしたらそんな思考に至るの!? 本当に! あんたばっかじゃないのっ!?」
「死なないんだろ?」
「は?」
 きょとんとするゆりを尻目に、小曽橋は立ち上がった。
「まずは敵を知ることから始めないとな。ヘマやって殺されても、死なないんだろ? 俺はあの天使とやらに接触してくる。あぁ、心配すんな。ちゃんと後で、情報提供してやんよ」
 ゆりが何か言いたげに口をぱくぱくさせているが、言葉がみつからないようなので、小曽橋はさっさとグラウンドへ繋がる階段を降りていく。
「あ、あんた……っ」
 ゆりがようやく口を開いた。
「名前は?」
 小曽橋は振り返らずに片手を上げた。

「覚えてねーんだ。名前も素性も」

 小曽橋は背中にゆりの視線を感じて階段を降りながら、ニヤリと笑った。
 彼の、死後の世界を手中に収める計画は、すでに始動していた。

○○○

 小曽橋は、ゆりに『天使』と呼ばれていた少女、立華かなで(たちばな かなで)と接触した。
 彼女がこの世界の仕組みに多少なりとも通じていることは、ゆりの『天使』という表現からも明らかだった。
「私は『天使』なんかじゃないわ」
 という彼女の第一声。彼女との問答で、彼女が自分と同じ境遇の人間であることは確信できた。
「俺は、どうすれば消滅できる?」 
 この質問から始めることで、彼女の知っている情報すべてを聞きだすことは容易かった。
 小曽橋はここに訪れた全ての人間が「満足して消えられる」よう、かなでに協力することを約束し、作戦会議を名目に、女子寮の彼女の部屋へと向かった。

●●●

 数十分後。
 天上学園女子寮、立華かなでの部屋。
 かなでのPCのキーボードをカタカタといじる小曽橋の背後に、『ANGEL PLAYER』の『バインドスキル』によって両腕両脚をぴんとまっすぐに伸ばしてIの字に拘束された立華かなでが、ベッドの上に横たわっている。かなでの手首足首にはビリビリと電気を帯びたような透明なリングがはめられている。
 かなでは『死んだ世界戦線』との攻防で、『ANGEL PLAYER』と呼ばれるこの世界のマテリアルに干渉するソフトウェアを用いて、特殊能力を使用してきた。小曽橋は、そのソフトウェアの奪取に成功した。
 小曽橋はかなでのPCをシャットダウンさせ立ち上がると、ゆっくりかなでの元へと歩み寄る。
「IDもPassも全部書き換えさせてもらった。これでかなでちゃんは、なんの変哲もないただの女の子になってしまったわけさ」
「あなたは、何者?」
 かなでは無表情のまま言う。
「俺はただの記憶喪失者さ」
「……嘘」
 小曽橋は、へっと鼻で笑った。
「さあて、かなでちゃ~ん? さっき教えてくれたよな? ここにいる人間は死なないって。いやぁ、嬉しいねぇ~、ここにいる奴らはどんなに遊んでも死なないってことだよねぇ」
 かなでは、小曽橋の瞳をじっと見つめ、
「……あ、悪魔……っ」
 小さくつぶやいた。
 小曽橋は高笑いをして、
「天使を狩るにはぴったりの称号じゃねーか! さあて、かなでちゃん? 本当に死なないかどうか、確かめさせてもらうぜぇ?」
 かなでの瞳の奥に、すこしだけ恐怖が宿ったように見えた。
「何を、する気?」
「当ててみろよ」
 小曽橋が両手をかなでの腋の下へゆっくりと伸ばすと、かなでは、ぴくりと少しだけ眉を寄せた。

 ブレザー越しにかなでの腋の下に、小曽橋の指先が触れる。

「きゃっ……」

 素っ頓狂な声をあげ、びくりと体を震わせるかなで。
「ずいぶん感度がいーじゃねーか」
 そのまま小曽橋は、指をこちょこちょと動かす。

「きゃはははははっ!!? ぷはっ……!! く、くふっ! くふふふふっ」

 かなでは一瞬口をあけて笑うものの、すぐにかみ締めるようにこらえた。目には涙を浮かべている。
「へえ、ちょっとはプライドあるんだぁ~~? でも、我慢は体に悪いぜぇほれ、笑ってみな? こちょこちょっと」
 小曽橋は両手をかなでの腋に突き立て、ぐりぐりとくすぐった。

「くはっ!!? あはっ、はははははははっ!!! ひっ、ひゃっ、はははっははははっ!!」

 途端、かなでは眉をへの字に曲げ、だらしなく口をおっぴろげて笑い出した。
「あら~~、もう吹き出しちゃったか~~、かなでちゃ~ん? 我慢するんじゃなかったんですかー?」

「ひゃはははっ、はははははははっ!!! ひ、っは、……きゃはっ、はははははっ」
 
 かなでは、腋の下をくすぐられ、意思表示をするでもなく、ただただ笑うだけであった。

「かなでちゃんの弱点はどこかなぁ~~?」
 小曽橋は、猫なで声で言いながら、徐々に両手をかなでのあばら、脇腹へと下げていく。

「くは、ふははははははははははははっ!!! あっはっはっはっはっはっはっ!!!」

「ふーん、こうするとくすぐったいんだ~?」
 小曽橋は、かなでの脇腹に人差し指をくりっと食い込ませ、震わせた。

「きゃははははははははっ!!!? あはははははははっ、はひひひひひひひひひひひひっ!!!!」

 かなでは、首を上下に小刻みに動かして笑う。
 口元に涎の線ができている。

「『やめて』って泣きながら懇願してくれたらやめてあげるよ~~?」

「ははっはははっははははっ!!! ひひっ、あっはっは、はははははははっ!!」

 かなではされるがままに笑い続けている。
 実際のところは、たとえ何と言おうが無駄だという事を理解しているのだろう。賢い女の子だなと、小曽橋は思う。
 感心すると同時に嗜虐心をそそられる。
 そんな賢明な女の子ほど、無様に、泣き叫ばせ、懇願させた上で、笑い死なせてやりたい。

「おっと、死なないんだったね」
 小曽橋は手を止めた。
 かなでは、目をぎゅっと閉じて、はぁはぁと荒い息を立てている。目尻には大粒の涙が光っている。
「かなでちゃん? 『やめて』ってお願いはいいの?」
 ゆっくりと目を開いたかなでは、天井を見つめ、無言で呼吸を荒くするのみだった。
 完全に無視を貫くらしい。
 小曽橋は、かなでの両足から、するすると白いハイソックスを脱がし始めた。
「……あっ」
 かなでが一瞬首をもたげ足下を見る。が、すぐにもとの姿勢に戻り、ゆっくりと目を閉じた。
 小曽橋はそのままソックスを引っ張り脱がし、かなでを両足とも素足にした。ソックスはくしゅっと丸めて床に放り捨てた。
「かなでちゃんはここも弱いのかな~~?」
 小曽橋は、かかとを揃えて拘束されたかなでの足の裏にゆっくりと手を近づけながら言う。
 かなでは目を開け、天井を見つめた。
 無関心を装っているようだった。

 小曽橋は、かなでの両足の裏にいきなり両手計十本の指を突きたて、がりがりとひっかくようにくすぐった。

「かはっ!!!? ひはっはっはっはっはっ!!! あぁっはっはっは、ぁぁあ~~はははははははははははっ!!!」

 かなでは体をよじって大笑いする。

「ずいぶん弱いようだねぇ~~かなでちゃん? いいのかな? もっと続けても?」
 言いながら小曽橋はかなでの足の指を掴んで反らし、反り返った土踏まずがりがりと掻き毟った。

「ふにゃっ!!!? ひぃぃ~~ひひひひひひひひひっ、ひにゃはははははははははははは!」

 かなではぶんぶんと綺麗な銀髪を振り乱して笑う。
 意思表示は相変わらず無い。 

「強情だねぇ」
 小曽橋は、かなでの素足のかかとを爪でガッガッと激しく擦るように引っかく。

「はがっ、はぐぁぁあっはっはっはっはっはっ!!! うにぃぃ~~っひっひっひっひっひっひっひ!!」

 徐々にかなでの口から発される笑い声がおかしくなってくる。
 限界が近いのだろう。

「かなでちゃん? 壊れちゃうよ~~? いつまで意地を張るのかな~~」
 小曽橋は移動し、かなでの膝小僧とおなかを同時にわしゃわしゃとくすぐった。

「ふきゃっはっはっはっはっはっ!!? あひぃぃ~~っひっひゃっひひっひっひっひっひ!!」

 かなでの笑い声は深夜まで響き続けた。


(つづく)

擽られる勇者様!

 新宿で謎の大地震に巻き込まれた遊佐恵美(ゆさ えみ)は、病院で治療後、同僚である鈴木梨香(すずき りか)の好意で、高田馬場にある彼女のマンションを訪れていた。
 梨香は、保険証や通帳の入ったバッグごと瓦礫の下に紛失してしまった恵美のために、治療費を工面し、タクシーで送迎までしてくれたのだ。

「ほんと怖かったわー。まさか東京まで来てあんな事故が起こって、しかもまた友達が巻き込まれるなんて、考えたくなかったもん」

 梨香は小学生のときに災害を経験したそうだ。
 災害の恐怖を身にしみて知っているからこそ、純粋に恵美の力になろうとして世話を焼いてくれている。
 
「梨香のおかげでほんと助かった。感謝してるわ」
 風呂を借りて一息ついた恵美は、梨香に感謝の気持ちを述べた。
 恵美は梨香から借りたスウェットと、進呈された下着を身につけている。
 梨香にバストサイズを聞かれた際、思わず「多分千穂(ちほ)ちゃんより小さい」とつぶやいたのが聞かれてなくてよかったと、恵美は思う。梨香のバストサイズは恵美と同じだった。さすがの梨香も、会ったことすら無い女子高校生と胸の大きさを勝手に比較され、負けと判定されるのは、心穏やかではないだろう。
「やめてよ。友達助けるのは当たり前っしょ。変に改まられるとむずがゆいわ」
 梨香はへらっと笑顔を見せた。梨香は、全身が守られているような心地よさを感じた。
 梨香は続けて、
「だから私は、あんたには特に何か聞こうとは思わないんだ」
「え?」
「恵美がどこに住んでたとか、どこから来たとか、そんなことはどうでもいい。私にとって恵美は、バカなこと言って一緒にご飯食べて、時々遊ぶ友達でいてくれれば十分」
「梨香……」
 恵美は梨香の心遣いが嬉しかった。
 と、突然、
「そういえばさ」
 梨香は、にやりと笑って恵美に顔を近づけてきた。
「あの男、誰?」
「へ?」
 恵美はきょとんとした。
「あんたが事故現場でお話してた男よ」
「え? え? あ、あいつ?」
 恵美は、すぐに真奥貞夫(まおう さだお)のことだと理解する。確かに恵美は、地震現場で真奥と対峙していた。マグロナルド幡ヶ谷駅前店で通常アルバイトが時給800円のところを時給1000円もらっているA級クルー、本社の月間MVPクルー賞を受賞したこともある男、真奥、もとい魔王。恵美、もとい勇者エミリアの宿敵、魔王。
「あいつ、とか言っちゃう仲の男なの? 結構いい男っぽかったけど、とっても気になるなー」
 梨香は狼狽した恵美にぐっと顔をさらに近づけてくる。
「ちょっと梨香、今何も聞かないとか言ったじゃない。大体あいつはそんなんじゃ……」
 恵美はなんとか弁明したいが、説明に困る。
「色恋は別じゃ! 私の天使に近づく男はみな狼じゃ!」
「梨香、キャラおかしいわよ! 本当にあの人は単なる知り合いで……」
 恵美は言い終えることができなかった。
 梨香が恵美の体を押し倒してきたのだ。
「きゃっ、ちょ、ちょっと梨香!?」
 うつ伏せになった恵美の腰辺りに馬乗りになった梨香はにやりと笑う。
「恵美、さっき『千穂ちゃん』とか言ってたけど」
「げ、聞こえてた?」
「誰じゃっ!? 恋敵かっ!?」
「……い、いや、だからそんなんじゃ……。とそれより、梨香サン、目が怖いんデスケド……?」
「狼にたぶらかされた堕天使にはお仕置きじゃ!」
 野獣のように舌なめずりをし両手の指をわきわきとさせる梨香を見上げて、恵美は、
「梨香の方が、よっぽど狼っぽいよ……」

●●●

 数分後。
「ほれほれー。あの男とどういう関係なんか、早ぅ吐かんかえー?」
 梨香は恵美の背中に乗って、あばらをこちょこちょとくすぐりながら言った。

「きゃはははははははっ! 梨香あぁぁっはっはっはっはは、だかっ……ただの知り合いだってぇぇぇっはっはっはっはっは!!」

 恵美はうつ伏せのまま手足をばたばたと動かして、笑っていた。
「わしのテクニックを侮るなよっ」

「なははは、ちょっ、梨香一人称変わって――」

 梨香の指がいやらしく恵美の肋骨に食い込み、ぐりぐりと骨を震わせる。

「うほぉぉっほっほっほっ!!? やぁあぁぁははははははっ!? それきつっ!! やだはっはっはっはっはっはっは!!!」

 恵美は梨香の両手首を後ろ手に掴んで必死に制止を求めるが、梨香の指の動きはとどまることを知らない。
「んー、じゃあ『千穂ちゃん』っていうのは?」

「ひゃあぁぁ~~っははははははははっ!! それもっ、それもただの知り合いぃぃ~~ひひひひひひひひひ!!」

 梨香の指が激しさを増す。恵美は体をよじって笑う。
「それは通らんぞぉ。私の胸と勝手に比べやがったくせにっ」
 梨香は言うと、恵美の脇腹のツボにくりっと人差し指を入れ、くりくりとえぐるようにくすぐった。

「うぎゃははははははははっ、ひっひっひっひっひっひっ!!? だめぇえぇ~~ひひひひひっひ、だめだってぇぇぇひひひひひひひひ!!!」

 恵美は体を仰け反るようにして笑った。
 その顔は、生卵を落とせば目玉焼きができそうなほど真っ赤である。目には涙を浮かべている。
「だれぞ!?」
 梨香は追撃する。

「あっはっはっはっはっは!! マグドっ……マグドの子ぉぉ~~っほっほっほ!! 幡ヶ谷駅前のっ!!! ぎゃははは、ただのバイトっ!!! くはははは、バイトの女子高生だからぁぁぁはははははははははっ!!!」

 すると、その途端、梨香はくすぐる指を止めた。
「……はひぃ……え? 梨香ぁ?」
 息も絶え絶えに恵美が首をねじって梨香の顔を見上げる。
「へぇ、マグドぉ……。マグドねぇ?」
 梨香は逡巡するように繰り返すと、
「それで今日、お昼私が恵美をマグド誘ったとき『マグドだけは嫌』って……」
「……ん?」
 梨香はにんまりと笑みを作り、恵美に向けた。
「近日マグドであったと思われる修羅場展開について、詳しく聞かせてもらおうか?」
「ひっ……!?」
 梨香の恐ろしい笑みが、恵美を凍りつかせた。

●●●

「あひひひひひひひひひひっ!!!? ひぃぃ~~っひっひっひっひっひ~~っ!!!」

 梨香は恵美の背中に乗ったまま体を反転させ、恵美の両足を持ち上げて、足の裏をくすぐっていた。
 がっちりと胸に抱え込んだ恵美の足の裏に、爪を立てる梨香。
 風呂上りのために、恵美の足の裏はややふやけて白くなっている。

「はひゃああははははははははっ!!! ぐるじっ、梨香ぁぁぁあひゃひゃはははははははあはっ!!!」

 激しく両腕を振り回し、笑いもがく恵美。
「このっ、このっ!! 高校生に男取られて悔しくないのか、こいつめっ!!」
 梨香は恵美の土踏まずを引っかいたり、足の指間に指をつっこんだり、さまざまな方法でくすぐった。

「ふひひひひひひひひひっいぃぃ~~っひっひっひっひ!! 取られてない……っ、だかっ、ひゃははは、そんな関係じゃないんだってェェえ~~うひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」

「ホンマか?」

「ホンマホンマぁぁあぁひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!?」

 恵美は激しく笑いながら、床を両手でバンバンと叩いた。

「ギブぅぅぅ!!!! もう無理ぃぃいひひひひひひひひひひ、梨香やめてぇえぇひゃはははははははっ!!! ギブぅぅううひゃははははひひひひひひひっひひ!!!」

「ほいっ」
 すると梨香は、あっさりとくすぐる指を止めて、恵美を解放した。
「……ひぃ、ひぃ……はぃ?」
「わ、恵美、あんた、結構汗かいちゃってるじゃない。もっかいお風呂入ってくる?」
 梨香はそそくさと立ち上がると、すぐにタオルを恵美に投げて渡した。
 ぐったりとうつ伏せになった恵美は、肩で息をしていた。
「しかも涎まで……ちょっと、やりすぎ?」
 舌を出す梨香。
 怪訝な表情をして、恵美は両手をついてゆっくりと体を起こした。
「……な、なに、梨香……どういう、こと?」
「ちと辛気臭い雰囲気になりかけたんで、場を和まそ思て……」
 へらっと笑って恵美の傍に正座する梨香。
 メラっと恵美の心に炎が宿った。
「恵美?」
 ゆらりと立ち上がった恵美は、勇者の目で梨香をにらみつけた。

「やりすぎじゃああああああ!!!」

「ちょ、ちょ、待って恵みゃぁぁあはははははははははははははははっ!!!?」

 梨香に飛び掛った恵美は、しっかりと倍返しした。


(完)

不浄な魔女よ、笑滅せよ

 まるで、無垢な少女と娼婦の妖艶さが同居したような顔立ち。
 人間は、美しさが度を越すと、年齢の概念が消えるらしい。
 そんな美貌を備えた、銀髪の少女が十字架に磔にされている。

 なんやかんやで、ゼロは魔女狩りに遭ってしまった。

「……く、傭兵……」

 ゼロは、連れの獣人の呼び名をつぶやいた。
 本名は知らない。彼は下僕ではなく、友だからだ。
 ゼロが囚われた際、なんとか彼だけは逃がすことに成功した。
 ゼロは、彼の身の安全だけを願っていた。

 ぶかぶかの外套、死ぬほど丈の短いズボン、腿の半ばまでのえらく長い靴下に、ロングブーツという格好のゼロ。
 その周りを、フードを被った男達が取り囲んでいる。
 男の一人が歩み出て、地面から数十㎝浮いた位置で縛り付けられてるゼロの顔を見た。
「可愛い魔法少女さん。最後に言い残すことは?」
「魔法少女ではない」
 ゼロは即座に言い放ち、高らかに宣言する。
「我輩は魔女である。無意味より意味を見出し、無より有を生み出す泥闇の魔女よ!」
 男達の間でどよめきが起こる。
「……なるほど魔女か。そうか。魔女だったな。なら、手加減はいらないな」

 男達が迫ってくる。
 ゼロは覚悟を決める。
 が、ふと誰も、火刑のための火を持っていないことに気付き、ゼロは首をかしげた。

●●●

「やはははははははっ!? あぁぁ~~っはっはっはっはっは! だぁっはっはっはっは!!?」

 数分後、ゼロの上半身に五十本の指が這い回っていた。
 火刑に処されるとばかり思っていたゼロは、突然のくすぐりに耐えることができなかった。
「不浄な魔女よ! 笑滅せよ!」
 男達は各々何度もそう叫びながら、ゼロの腋、胸、お腹、首筋など、細い体に節くれだった指を這わせる。

「なははははっ!? なんだっ!!? ぅにゃ! なんでくすぐるんだぁぁあぁ~~っはっはっはっはっはは!?」

 ゼロは目に涙を浮かべて笑い、叫ぶが、くすぐる男達は反応を見せない。

「やめっ、あはははははははっ!!! やめれぇぇっはっはっはっはっはっは~~!!!」

「不浄な魔女よ! 笑滅せよ!」
 男達のくすぐりは一向に弱まる気配を見せない。ゼロは笑い続け、どんどん体力を消耗させていった。

「ちょっと待ってくれ!」
 突然、男の声が処刑場に響いた。
 ゼロをくすぐっていた男達が一斉に指を止める。
「……けほっ、あ、……き、貴様は……」
 ゼロは息を切らしながら顔を上げた。
 処刑場に駆けつけてきたばかりらしい、盗賊の頭目もかくやのむさくるしい大男は、全身汗だくだった。
「そちらのお嬢さんはっ」
 王都までの中継都市ファーミカムの古着屋――ゼロが連れとともに衣類を買い揃えた――の店主だ。
「俺に靴下をくれると約束してくれたんだ! 処刑はそのあとにしてくれ!」
 店主が叫んだ。
 ゼロは、唖然とした。
「……貴様、何を言っているのだ?」
「お連れの少年が約束してくれたんでございますよ! ほら、お嬢さんの今召されている、靴下をお勧めになった」
 店主は目を輝かせた。
 ゼロが逡巡していると店主は付け加える。
「私めの目の前で脱いでいただけると、確かに約束いただきました」
「……わっぱめ」
 ゼロは、忌々しげにつぶやいた。
 すると、フードを被った処刑人の一人が店主の方へ呼びかける。
「お主が脱がしてよいぞ。ちょうど我々も、ブーツを脱がそうと思っていたところだ」
 店主の顔がぱぁっと明るくなった。

○○○

「よっ、よせ! やめろぉっ」

 一時的に足の拘束を解かれたゼロは、店主の顔を思い切り蹴りつけた。
 が、店主は握り締めたゼロのニーソックスのつま先を離そうとしない。
 ロングブーツは二足とも既に脱がされ、地面に転がっている。

「おやおや、足癖の悪いお嬢さんですねぇ」
 店主は、ゼロが蹴ろうが踏みつけようがにやにやと変態的な笑みを絶やさず、ニーソックスを脱がそうと引っ張り続ける。
「貴様っ! そんなものっ、何に使うつもりだっ!?」
 ゼロは必死に抵抗するが、店主の力は強い。
「お嬢さん! 俺の生きる糧なんです! お願いします! お願いします! ……お願いしますっ!!」
 店主の目がマジで、怖い。
 数分間の格闘の末。
「あぁっ」
 すぽんっとゼロのニーソックスは両方とも脱がされてしまった。
 ゼロの素足が晒されるや否や、フードの男達が取り囲む。
 あっという間に、ゼロの両足は、揃えて、再び十字架にくくりつけられてしまう。
 
 店主は、脱がしたてのニーソックスをさっそく顔にあてて深呼吸している。
 恍惚の表情を浮かべる店主を尻目に、処刑人達は一斉にゼロの素足へ襲い掛かる。

●●●

「あひゃひゃひゃひゃ!!!? やめれぉぉっ、やめりょぉぉ~~ひゃっはっはっはっはっは!!!」

 ゼロは素足の足の裏や、太腿、膝をくすぐられ、美しい銀髪を振り乱して笑う。
 処刑人の男達の指は荒れてガサガサになっており、ゼロの足の裏にとてつもないくすぐったさを与えるようだ。

「あがっ、がははははははははっ!!! いひゃっ!? 頼むぅぅぅ~~っひっひっひ、やめてぐれぇぇぇぇひゃひゃひゃひゃ!!!」

 ゼロの足の裏でジョリジョリと皮膚の擦れる音が響く。
 くすぐったそうに、ゼロの足の指が反り返ってよじれる。

「あぁぁ~~ひゃはははははははは!!? うははははははっ、くすぐったいぃぃぃ~~っひっひっひっひっひ!! くすぐったいってばぁぁぁははははははは!!!」

 ゼロは顔を真っ赤にして笑う。
 男達は、足の指間から膝裏や内股まで、脚の余すところなくくすぐり続けた。

「あひゃひゃっ!!? いひゃっ……はひゃひゃはははは、ひひひひっ、いぎぃぃひひひひひひっ」

 ゼロはだんだん意識が遠のいていく。
 開きっぱなしの口からはダラダラと涎が流れ出続けている。

(よう……へい……)

 焦点の定まらない目。
 ゼロの視線の先に、その待ち人が見えたような気がした。

「おい魔女!」
 処刑場に雄々しい声が響いた。
 男達の指が止まる。
 ゼロは、大きく咳き込み、深呼吸。その声の主をゆっくりと見やった。
「せっかく、逃がしてやったのに……」
 ゼロは忌々しげにつぶやきながら、安堵の涙を流した。
「何故、ここに来たんだっ……、馬鹿者が……っ」


(完)


「チキチキ原点回帰! 晒そう僕らの黒歴史!」第十二弾

ストーカー12

畑野萌も同様に大の字に両手足をマジックハンドに掴まれていた。
「礼儀正しい可愛らしい子ねぇ~、こんな可愛い子まで壊さなきゃいけないなんて、
奈美ちゃんひどいわよぉ」
萌は別れ際と同じ格好で、制服姿でローファーを履いていた。
早速マジックハンドは萌のローファーを脱がし取り、一斉にくすぐり始めた。
萌は意外と耐性がなく、数分後にはあっけなく壊れてしまった。
「いやはははははははははっ!!!!!
そこだめえぇぇっへへへへへへははははっはあははははっ」
萌は足の裏をマジックハンドにごりごりとほじられると膝をびくびくさせて笑い悶えた。
白い靴下の裏は薄黒く汚れており、
くぼんだところをマジックハンドは人差し指でほじほじとくすぐっていた。
「やはははははははは!!!!くすぐったいぃぃ!!!!うははははははははははは」
マジックハンドは萌の靴下を奪いにかかる。
足首を掴んだマジックハンドも援助し、つま先からびよんと靴下は伸び、
かかとからすぽんと脱げる。
その間も腋の下や横腹をもまれ、
全く抵抗することもできず萌はただ笑っていることしかできない。
「いやひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!!!くしゅぐっ!!!
くすぐったいくすぐったいあはっはっはっはっはっはっはっはっは、
ひぃぃひひひひひひひひっひっひ」
萌は素足をくねくねさせて笑い悶えた。
足の指をぐにぐにと蠢かし、必死に笑いの渦から抜け出そうとしているようだ。
「ぎゃはあははあははあはあははあは!!!!
ひゃぁぁあはあははっはあははっははははははあっはっははは」
膝や肩や腰、動かせる場所はフルにくねくねさせる萌。
眼鏡の奥の眼には大粒の涙が光っている。

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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ここからしょーもないコメント)

 こんばんは。ertです。
 新作連投したところで、旧作!
 こうして古い作品を見ると、笑い声の表記とか、描写、表現、結構変化がわかります。わりと客観的に自身の文章を省みることができるので、なかなか楽しい。

 奈美の友人たちがくすぐられている映像を、かの子と奈美で鑑賞しているという状況なので、最初の「礼儀正しい可愛らしい子ねぇ~」のセリフは画面外でかの子が奈美に向かって言っています。
 本文中の「壊れる」は、「笑う」の意ですね。
 
登場キャラクターまとめ
 反町かの子(そりまち かのこ):卓也に関わった娘を擽るストーカー。高校2年生
 後背奈美(うしろ せなみ):卓也の妹。バスケ部。中学1年生
 里川夏喜(さとかわ なつき):奈美の友人。同級生。無口陰っ娘系。中学1年
 宍戸絵梨(ししど えり):奈美の友人。バスケ部。天真爛漫系。中学1年生
 畑野萌(はたの もえ):奈美の友人。委員会つながり。真面目純心系。中学1年生


「チキチキ原点回帰! 晒そう僕らの黒歴史!」第十二弾・終
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