「誰だ!?」
振り向きざまにハルナを大声を上げた。
家の中はハルナひとりのはずだった。
それが卵焼きを作っている最中、背後に気配を感じたのだ。
青い長髪の女性。
見たことのない学校制服を着ている。
はじめは歩の知り合いかとも思ったが……。
「お前っ、メガロか!?」
青髪の女性の耳は、明らかに人間のそれとは違っていた。
先がとがっていて細長い。絵本に出てくる妖精やエルフといった生き物を連想させる。
「……あなたのせいです」
エルフが呟く。ハルナはよく聞き取れなかった。
「え?」
「卵焼きキャラは私のものです!」
エルフの激昂。
と、同時に、地面から複数の触手が出現し、ハルナを雁字搦めにした。
「わっ、わわわっ!!?」
ハルナは家に一人だったこともあり、だぼだぼの『かちぐみ』シャツと短パンといっただらしのない格好だった。
四肢、胴に絡みつく触手によって、シャツはめくりあがり、短パンもずり下がる。
「な、こら! やめろっ! 離せ!」
「弁当箱の中一杯に卵焼きを詰めていく。それは本来私のキャラだったはずです。できる風なのに作ってくる料理はちょっと抜けている。そういうギャグです! そこが『から鍋』世代にとっては萌えポイントだったのです。私の大切なものを奪ったあなたを、許さない……っ」
エルフは言うと、じりじりとハルナとの距離を詰める。
「わっ、なっ……キツっ……、なんだよ!? わけがわかんないよ! キャラって何だ――ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!?」
突然ハルナは笑い出した。
エルフがむき出しになったハルナのお腹をくすぐりはじめたのだ。
「大切な人を失った者の悲しみが、あなたにわかりますか!?」
エルフは目に涙を浮かべて言いながら、片手で脇腹を、もう片手でヘソの穴をほじくった。
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!? だぁぁあぁっはっははっはっはっはっは!! 何ぃぃぃ~~わけがわかんにゃぁぁぁあはははははははははは!!」
ギチギチと触手がハルナの体をしめつける。
「どうしてあなたは、他人の気持ちを理解しようとしないのですか!?」
「あがはははははははははっ!? うひひひひひっ、わけが、ホントに意味ふめいぃぃぃ~~っひっひっひっひっひ!!!」
ハルナの足に巻き付いていた触手が、ぐぐぐと持ち上がる。
ハルナの左足が浮き上がり、足の裏がちょうどエルフの目の前に差し出された。
「ツンデレ、ドジ、天才、貧乳……っ! あなたはキャラを詰め込みすぎです! 欲張りにもほどがあるんです!」
エルフは叫び、ハルナの素足の足の裏に爪を立て、ガリガリと掻きむしった。
「ふぎゃぁあぁぁあっはっはっはははっはっははっ!!? あひひひひひひひひひそそ、そんなこと言われてもぉぉ~~~ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」
びくびくと蠢くハルナの足の指。
エルフはその指を掴んで反らし、つっぱった土踏まずをくすぐった。
「あぎゃあぁああはあははははははは! いぃぃぃ~~っひひひひひひひひひっひひやめてぇぇええあぁあぁぁあはははははははっははは!!!」
ハルナは、笑わされ続け、歩らの帰宅と同時に触手もろともエルフは消え去った。
エルフの目的はわからずじまいだった。
(完)
振り向きざまにハルナを大声を上げた。
家の中はハルナひとりのはずだった。
それが卵焼きを作っている最中、背後に気配を感じたのだ。
青い長髪の女性。
見たことのない学校制服を着ている。
はじめは歩の知り合いかとも思ったが……。
「お前っ、メガロか!?」
青髪の女性の耳は、明らかに人間のそれとは違っていた。
先がとがっていて細長い。絵本に出てくる妖精やエルフといった生き物を連想させる。
「……あなたのせいです」
エルフが呟く。ハルナはよく聞き取れなかった。
「え?」
「卵焼きキャラは私のものです!」
エルフの激昂。
と、同時に、地面から複数の触手が出現し、ハルナを雁字搦めにした。
「わっ、わわわっ!!?」
ハルナは家に一人だったこともあり、だぼだぼの『かちぐみ』シャツと短パンといっただらしのない格好だった。
四肢、胴に絡みつく触手によって、シャツはめくりあがり、短パンもずり下がる。
「な、こら! やめろっ! 離せ!」
「弁当箱の中一杯に卵焼きを詰めていく。それは本来私のキャラだったはずです。できる風なのに作ってくる料理はちょっと抜けている。そういうギャグです! そこが『から鍋』世代にとっては萌えポイントだったのです。私の大切なものを奪ったあなたを、許さない……っ」
エルフは言うと、じりじりとハルナとの距離を詰める。
「わっ、なっ……キツっ……、なんだよ!? わけがわかんないよ! キャラって何だ――ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!?」
突然ハルナは笑い出した。
エルフがむき出しになったハルナのお腹をくすぐりはじめたのだ。
「大切な人を失った者の悲しみが、あなたにわかりますか!?」
エルフは目に涙を浮かべて言いながら、片手で脇腹を、もう片手でヘソの穴をほじくった。
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!? だぁぁあぁっはっははっはっはっはっは!! 何ぃぃぃ~~わけがわかんにゃぁぁぁあはははははははははは!!」
ギチギチと触手がハルナの体をしめつける。
「どうしてあなたは、他人の気持ちを理解しようとしないのですか!?」
「あがはははははははははっ!? うひひひひひっ、わけが、ホントに意味ふめいぃぃぃ~~っひっひっひっひっひ!!!」
ハルナの足に巻き付いていた触手が、ぐぐぐと持ち上がる。
ハルナの左足が浮き上がり、足の裏がちょうどエルフの目の前に差し出された。
「ツンデレ、ドジ、天才、貧乳……っ! あなたはキャラを詰め込みすぎです! 欲張りにもほどがあるんです!」
エルフは叫び、ハルナの素足の足の裏に爪を立て、ガリガリと掻きむしった。
「ふぎゃぁあぁぁあっはっはっはははっはっははっ!!? あひひひひひひひひひそそ、そんなこと言われてもぉぉ~~~ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」
びくびくと蠢くハルナの足の指。
エルフはその指を掴んで反らし、つっぱった土踏まずをくすぐった。
「あぎゃあぁああはあははははははは! いぃぃぃ~~っひひひひひひひひひっひひやめてぇぇええあぁあぁぁあはははははははっははは!!!」
ハルナは、笑わされ続け、歩らの帰宅と同時に触手もろともエルフは消え去った。
エルフの目的はわからずじまいだった。
(完)