「『ニシン』と10回言ってください」
「ニシン、ニシン、ニシン、ニシン、ニシン、ニシン、ニシン、ニシン、ニシン、ニシン、ニシン」
「赤ちゃんが生まれることは?」
「妊娠」
「残念! 答えは『出産』です!」
「うわあああああ、11回も言ったのにいいいい」
部活をサボって帰る途中、街頭で突然TVカメラを向けられて出題されたひっかけ問題。
アユミは見事にひっかかってしまい、頭を抱えた。
冷静に考えれば「出産」だとすぐに思いついたのに!
「それでは、失敗した学生さんには罰ゲームを受けてもらいましょう!」
アナウンサーの発言に、アユミは驚愕する。
「え、そんなの聞いてな――きゃああああ!?」
突然現れた全身黄色タイツの集団に、アユミは路地のど真ん中で大の字に取り押さえられた。
10人近くいる。
彼らはわきわきと両手の指をくねらせると、
「スタート!」
アナウンサーの合図で、一斉にアユミの体をくすぐりはじめた。
「ぶふっ――うわぁぁっはっはっはっはっはっはっはっは!!!? なにぃぃいいいいきなりあぁぁあああははははははははははは!!!」
アユミは路地のど真ん中で、大声で笑い出す。
周囲のざわめきを感じる。
「やめてぇえあぁああっはっはっははっはっはは!!! こんなのぉぉぉ恥ずかしいよぉぉああああっはっはっはっはっはっはっはは~~!!!」
全身を這い回る約100本の指。
ブレザーの前ボタンは外され、靴も靴下も脱がされていた。
「いやぁぁぁあっはっはっはっはっははっは!!!? くすぐったいぃいぃい、やめてぇぇああっはっはっはっはっははっはは!!!」
腋の下に差し込まれた指がワラワラと蠢く。
アバラはごりごりとしごかれ、脇腹はぐにぐにと揉みほぐされる。
アユミは首を左右に激しく振って笑う。自分の身に何が起こっているのか理解できなかった。
「ぎゃぁああああっははははははははははっ!!! 嫌だぁぁあああははははははははは!! 勘弁してよぉ~~おおおおおひゃっはっはははははは!!」
足の指を掴まれて、付け根や土踏まずはカリカリと引っ掻かれた。
数十本の指が狭い足の裏を這い回り、アユミは気が狂いそうだった。
「おねがぁぁああはっはっはっはっはっ! 一体何ぃいいいっひっひっひっひ!!!? なんの番組ぃいいいいっひひっひっひっひっひっひ!!!」
アユミにはなにがなんだかわからない。
部活をサボって帰る途中に黄色い集団に寄ってたかってくすぐられている。
こんなことなら真面目に部活に行けば良かった……。
アユミは、部活をしているときよりも汗びっしょりになって、喉を枯らして大笑いしながら、日頃の行いを省みた。
(完)
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(ここから作者コメント)
こんばんは。ertです。
歯にもやしは引っかかりやすい。