夜道にひとり女子校生あり。
「はぁ。今日も部活で遅くなっちゃったなぁ」
 アミはスポーツバッグを背負いなおし、早足になった。あたりは真っ暗。人影はほとんどなかった。
「こんな時間まで、か弱い女子校生を残してミーティングだなんて、うちの顧問はいったいどういう神経をしているのかしら!」
 ぼやきながら歩いていると、ふと耳なじみのある声が聞こえてきた。
 生い茂る木々のほうから、うっすらと聞こえてくる……笑い声?
 アミは不審に思いながら、草むらをかき分けて声のするほうへ進んだ。
 笑い声が次第にはっきりと聞こえてくる。アミは、声の主に心当たりがあった。

「あははははっ! やめへっ、ふひゃっはっはっははっはっは!!」

「ユウミ……っ!」

 行きついた先には、同じクラスのユウミがいた。
 何がおかしいのか、涙を流し、目をむいて大笑いしている。
 地べたに背中をこすりつけ、制服を泥だけにしている。

「あひゃひゃ、アミっ!? たすけっ……助けてぇぇ~~っへっへっへっへっへっへ!!!」

 よく見ると、彼女の両足の上に半裸の男?が座っており、足の裏をくすぐっているようだった。
 足元にローファーと紺ソックスが無造作に放り捨てられている。

「あがががっ!? やめっ、笑い死ぬっ!! あひゃひゃ、くすぐったすぎるぅう~~~っひっひっひひひひっひっひ~~!!!」

 ユウミはよだれをまき散らして笑い狂い、白目をむいて失神してしまった。
 アミが状況が理解できずに固まっていると、ユウミの足をくすぐっていた半裸の男?がゆっくりと振り向いた。
「……っ!」
 アミは恐怖にすくみ上った。
 ぼさぼさの髪の毛からのぞく白目、恐ろしく長い爪、青白い体は、人間のものに思えなかった。鬼だ。
 尻もちをついて、そのまま土を蹴るように這って逃げる。
 鬼はアミの足首をつかんで、ぐっと引き寄せた。
「きゃっ! や……やだ……!」
 アミは激しく暴れるが、鬼の力は強くびくともしない。
 あっという間にローファーと紺ソックスをはぎ取られた。
 そして、長い爪を素足の足の裏へ掻き立てられる。

「んぐっ……ぶははははははははは!!? いだいっ!? いだははははははははははははは!!!」

 アミは絶叫した。
 鬼の長い爪が、やわらかい足の裏をぞりぞりと削ぐようにくすぐる。
 痛いようなかゆいような、ビリビリと背筋をしびれさせる刺激が、アミを襲う。

「ぎゃはははははは!!? やだっはっはっはっは!! 足ぃいいっ!! 足いぃっひっひひっひっひっひっひっひっひっひ~~!!!」

 アミは、体を激しくよじり、のたうち回って笑う。
 押さえつけられた足はびくともしない。
 鬼は激しく指を動かし続け、くすぐったい刺激を送り続けてくる。

「なにっ、なんなの!? なんでくすぐられるのぉあっはっはっはっははっはっはっはっは~~!!! いひひひひっひ、息がっ!!! 息がぁががっはっははっはっはっはっは!!!」

 突然謎の鬼に出くわし、くすぐられる。
 アミは状況が理解できないまま、気を失うまでくすぐられた。

 翌朝になって、気絶したアミとユウミは地元警察に保護された。
 警察が駆け付けた時、鬼の姿はすでになかったという。


(完)