ロケット団のムサシ、コジロウ、ニャースは、見失ったサトシを探し、気球で浮遊していた。
「毎週毎週、あのピカチュウ、電撃で吹っ飛ばしやがって……。『やなかんじ』で吹っ飛ばされた地点から、一週間で探し出して追いつくこっちの身にもなれってんだよな」
「でもあのピカチュウ、毎週毎週着実に電撃が強くなってる。まだまだ底が知れないレアピカチュウだよ、あれは」
「サカキ様に喜んでもらうためにも、絶対にゲットするにゃ!」
 ぼやくコジロウに、前向きなムサシとニャース。
 彼らが初めてサトシのピカチュウに敗れたのはトキワシティでのこと。以来、サトシのピカチュウを奪取するために、サトシをつけ回しているのである。

「ねえ、まだジャリボーイ見つからないの? もう待ちくたびれたんだけど。そろそろ放送日も近いでしょうに」
「そんなこといったって、ずいぶんと遠くに飛ばされたもんだからさ。今週の放送は非番じゃだめなのかな」
「悪役はしつこく出てこその悪役だにゃ! せっかく視聴者の目に触れる機会を無駄にしてはいけないにゃ! いまどの辺りにゃ?」
「えー……、たぶんフタバタウンのはずれ辺り」
 3人が気球の中でそんな会話を交わしていると、
「ん? ちょっと、あれ」
 ムサシが下方草むらに見つけたのは、栗色の髪の毛を前頭部で一つくくりにしたスパッツの少女、マコトだった。マコトは相棒のポッチャマと一緒に野生ポケモンと闘っている。修行中のようだ。
「あれは確か、ホウオウの出る山でジャリボーイと一緒にいた……」
「もしや、ジャリボーイの居場所を知っているかもしれないな」
「渡りに船とはこのことだにゃ」
 ロケット団の気球は、マコトに気付かれぬようゆっくりと下降していく。……

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 あ~おい、あ~おい、静か~な、夜にわぁあああ♪ お~いら、ひとりで~――

「田舎のお袋さんに、悪いと思わにゃいか?」
 刑事の扮装をしたニャースが、テーブルにカツ丼を置く。ラジカセから流れる曲は哀愁を誘う。ニャースの弾き語り録音である。
 目の前のカツ丼を見て、マコトはごくりと唾を鳴らした。
「悪いと思うなら、ジャリボーイとピカチュウの居場所を白状しちまいにゃ」
 ニャースはマコトの肩をぽんと叩く。
 マコトは目を伏して、
「白状……、――するかああああ!!」
 顔を上げ、立ち上がると同時に怒鳴った。
「ていうか、そもそも私はサトシの居場所を知らない! さっきから言ってるのに! わかんないかなあ!」

 草むらでまんまと捕まったマコトは、フタバタウンのはずれにある山小屋に監禁され、ロケット団の三人に尋問を受けていた。

 生意気な態度を続けるマコトに、ぐぬぬと歯ぎしりをたてるロケット団。
「下手に出てりゃつけあがりやがって!」
「こうなったら究極の最終兵器を使わせて貰うわよ!」
「ぽちっとにゃ」
 ニャースが取り出したリモコンのスイッチを押すと、突如小屋の壁が割れ、高さが2メートルほどありそうな赤い物体が現れる。赤いタンクを積み重ねたような形のロボで、左右から3本ずつ合計6本の腕を持っていた。尖端の6つの手は、すべて白い手袋をはめている。
「今週の! 究極ドッキリ! いじわるメカ!」ムサシがノリノリで言う。
「な、……どうするつもり!?」
 マコトは、初めて見る不気味なロボを目の当たりにして、後退りした。
「こうするつもりにゃ!」
 ニャースはそう言ってリモコンのボタンを押した。
 すると、一目散にロボはマコトの元へ迫り、背後から両手首を掴み上げた。
 真ん中2本の手が、万歳にさせられたマコトの腋と脇腹に位置取り。下方2本の手が、マコトの左足を掴み上げ、ピンクのスニーカーをすぽっと脱がし取り素足にさせた。

 直後、わきわきとうごめき始める20本の指。

「ひゃっはっはっはっはっは!? なはっ……なにこれぇぇ~~あはっはっはっはっははっは!!?」

 腋の下、脇腹、素足にされた足の裏をくすぐられ、途端に笑い出すマコト。
 ロボの指は器用に動いていた。小刻みに指を動かして腋の下を蹂躙し、脇腹を揉みほぐし、くりくりと人差し指で土踏まずをほじくる。

「いぃいぃっひっひっひひっひ!! やめっ、だめぇぇあぁあははっはははははははははは~~!?」

 マコトは眉をへの字にして、目に涙を浮かべて大笑いしていた。

「さあ、はやく喋っちまいな」
「さもないと、腹で茶が沸いちゃうよ」
 コジロウとムサシが腕組みして言う。

「そなぁっはははっっはっは!!? だから知らないってぁぁあっははははははははははははっ!!! そこだめぇぇえへへへへへへへ~~!!!」

 マコトは首をぶんぶんと左右上下に激しく振って抗議した。あまりの激しさに前頭部で一つにくくっていた髪の毛がほどけ、ばさりとミディアムショートになる。

「まだしらばっくれるかこやつ! ニャース! やっておしまいっ!」
 ムサシがニャースに向かって言うと、ニャースは再び「ぽちっとにゃ」とリモコンのボタンを押した。

「いひひひ……うひゃあぁあぁああああっ!!? いきなりはげしくっ!!? あぎゃあぁぁあっはっはっはっははははっはっはは!!!」

 先ほどまで指先で小刻みに腋をくすぐっていた指が、急にアバラをゴリゴリもみし抱き始め、

「あがひひひひひひひひひひっ!!!? いっひぃぃぃいいい~~~ひ、息ができないぃひひひひっひひっひっひっひっひっひっひ~~!!!」

 先ほどまで脇腹をやさしく揉みほぐしていた手が、急に指を立て、横っ腹のツボを正確にえぐり始め、

「ひゃっはっはっはっはっはっはっは!!! 無理無理ぃいいひひひひひひっひ、ダメだったらぁぁあはっはっはっはっはっはっは~~!!?」

 先ほどまで人差し指一本で土踏まずをくすぐっていた手が、五本の指で足裏全体を掻きむしり始めた。

「うにぃいひひひひひひひひひひっ!!? ほんどにしらないぃいひひひひいひひっひ!!! なんにもぉぉおっほほほほほ、やう゛ぇてぇぇええいひひひひひひひひ~~!!!」

 マコトは全身を激しくよじって笑う。
 見開かれた目からは涙がボロボロと溢れ、開きっぱなしの口からは涎が流れ出している。
 ぴっちりと体にフィットした服は汗でびしょびしょ。
 足の指はくすぐったそうに、びくびくとデタラメに動き続けている。

「あ゛だぁぁあははははははははははは!! ひぎゃぁぁあ~~っはっっはっはっはっは、だめぇぇえ~~しんじゃうっ!!! いぎぃあぁ゛ぁ゛あぁぁ~~がはははははははっ!!」

「ほらほら、そんなひどい顔で笑ってたらお嫁に行けなくなっちゃうよ? 記念撮影しておくかい?」
 ムサシは、マコトのスマホを勝手にいじり、写真を撮る。

「や゛う゛ぇでぇぇえぇへっへっへっへっっへ~~!! こんな顔どら゛な゛ぃ゛でぇぇええっ~~あひひひひひひひひひ!!」

「嫌ならさっさと吐くんだね」
 ムサシは、涙でぐしゃぐしゃのマコトの顔を連写した。
「ムサシ……」
「女は怖いのにゃ……」
 コジロウとニャースはちょっと引いている。

「ひゃぁぁあっはっはっはっはっはっは、もう嫌ぁあぁあっはっはっはっはっはっはっは~~!!!」

 マコトの笑い声は深夜まで響き続けた。
 当然、ロケット団はサトシの居場所の情報は得ることができず、その週の放送には出演できなかった。



(完)



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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 『きみにきめた』見てきました。
 素足スニーカー枠のマコトさんが最高でした。靴脱いで髪をほどいた着衣素足という格好で、三角座りして、足指をパーにするシーンとか……せっかく真面目に見ようと思っていたのにフェチ心がうずいてしまいました^p^
 お仕置きに、ロケット団のくすぐりメカ(『ミニリュウのでんせつ』より)の餌食にしました。くすぐりメカ登場シーンがヤッターマンのパロディであることに気付いたのは割と最近です。