こんにちは。反町かの子です。
 卓也君が大好きです。
 破局したいまでも大好きです。
 彼から受けたくすぐりプレイが忘れられません。

 卓也君の家には、木の板を張り合わせて作った足枷がありました。
 足首から先を通す穴が二つ横に並んでいて、西洋画で見たことのあるギロチンを思い浮かべました。
 はじめて彼の家に遊びに行った日。
 彼は私に、足を入れるように言いました。驚いたけれど、卓也君に嫌われたくなかったから、言われた通りにしました。
 学校帰りだったので私は制服姿。
 白いソックスを穿いた足を、穴にはめ込み、がっちりと固定。
 彼が指をわきわきさせるだけで、私は足がむずむずしてきて、きゅっと足指を縮こまらせました。
 私は怖くなって、「ちょっと待って……」と言いました。
 卓也君はにっこり微笑むだけで、待ってはくれませんでした。問答無用で、いきなり私の両足の裏へガリガリと爪を立てました。

「んきゃっ!? ふはっ、は、は、あぁああぁぁぁは、あはははははははははっ!!! ひひゃぁああひっひあひっあひぃぃいい!!」

 私は小さい頃から人と話すのが苦手でした。
 人前で大声で笑うこともめったにありませんでした。

「きあぁぁあぁあひっひっひっひ、いひぃぃっ!!? うひゅひぃいあひああはははははははは、ふは~~!?」

 笑い慣れていなくて、終始変な声をあげてしまいました。
 彼の爪が私の足の裏の皮膚をこすり上げ、しゃりしゃりと音を立てていました。
 羞恥心なんて気にする余裕なんてないぐらいくすぐったくて、私は泣きながら笑っていました。

「あひあぁぁあひゃぁああぁははははっはっ!!? いひひゃぁぁああぁぁ!!!」

 彼は私のソックスのつま先を持って引っ張りました。
 足枷で固定されているところを無理に引っ張るので、伸びてしまいます。
 彼はそれでも力任せに引っこ抜き、私を素足にしました。

 彼は私の耳元で「足、弱いんだろう?」と囁きました。濡れました。

 素足をくすぐられはじめると、もう私は正気を保っていられませんでした。
 あまりのくすぐったさに、頭が真っ白になりました。

「ふひゃぁぁあああははひゃひゃひゃひゃっ!!!? ひぎぃぃいいっひひっひっひっひ、もっどぉぉおおおおおひゃひゃひゃ! もっどやっでえぇぇえええひぇひえぇひぃえひぇ!!!」

 気がつくと、私は彼に、もっとくすぐって欲しいと懇願していました。
 彼は私の足の指を一本一本丁寧に広げて、爪でこそぐようにくすぐりました。

 もう、私は、彼のくすぐりの虜でした。

 それからというもの、彼の家に行くたびに、私は足の裏をくすぐられました。
 耳かきで土踏まずをこりこりされたこともありました。
 ブラシでごしごしと踵を磨かれたこともありました。
 足の指を全部縛られて、まったく身動きの取れない状態で、足の裏全体を櫛でガシガシとくすぐられたこともありました。

 私は、彼にくすぐられるのが好きでした。
 毎日通うようになりました。
 もっと強い刺激を、せがむようになりました。

 破局は、唐突でした。卓也君からでした。「四六時中べったりで鬱陶しくなった」んだそうです。
 私は、泣きました。
 大好きな卓也君に、もうくすぐってもらえないと思うと、涙が止まりませんでした。

 しばらくは、ろくに食事もできませんでした。

 彼のことを思い出すために、彼の家にあったのと同じ拘束具を買い集めました。
 部屋の模様替えをして、彼の部屋とまったく同じに見えるようにしました。
 ときどき、自分で自分の体を拘束して、妄想の中で卓也君にくすぐってもらう。……
 そうしてなんとか喪失感を誤魔化し、日々を乗り切ってきました。

 そんなある日のことでした。
 私は、いつものように朝早く学校へ登校して、卓也君の下駄箱の傍に隠れていました。卓也君の登校時間のデータを取るためです。日課でした。
 すると、一人の女子生徒が近づいてきて、卓也君の下駄箱の中にピンク色の封筒を置いていきました。
 私は彼女が立ち去るのを待って、下駄箱から封筒をひったくりました。
 それがラブレターだとわかった瞬間、私は歯ぎしりするほどの嫉妬心に駆られました。

 卓也君のくすぐりプレイに耐えられるのは、私だけ。あんな小娘に耐えられるわけがない……。

 歯の浮く文章は読んでいるだけで虫ずが走ります。末尾には『小山鈴江』と記されていました。


(つづく)


♯1 ♯2 ♯3 ♯4 ♯5 ♯6 ♯7


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 晒そう企画『ストーカー』の二次創作です。