「まさかあなたのような子がファングだったなんてね……」

 七尾英理子は、見下ろしてくる少女をにらんだ。
 少女はほそく微笑んだ。
「七尾さん。私も仕事でやってますから。あんまり時間はかけたくないんです。残りの七尾コレクションの居場所を教えていただけますか?」
「ふん、誰が言うもんですか」
 英理子はぷいと顔をそらした。
 タンクトップにホットパンツ、夏物のサンダル姿の英理子は、手術台の上で体をXに引き伸ばして拘束され、まったく身動きが取れなかった。
「そうですか、なら、……」
 少女は羽箒を取り出し、英理子の前でちらつかせた。
「……それで、何をするつもり?」
「こうします」

 少女は羽根先を、大きく露出された英理子の腋の下に這わせた。

「ひゃはっ!?」

 思わず甲高い声を上げる英理子。

「おや。ずいぶん敏感肌じゃないですか。……にしては、露出が過ぎると思うんですが」
 少女はにやにやと笑いながら、羽箒を左右上下にゆったりと動かす。

「ひひひひっ……やっ、やめなさいっ!! ひひ、ひっひっひっひ」

 英理子は顔を真っ赤にして笑う。
 目に涙が浮かんでいる。

「コレクショ――」
「言わないっ!! はひっひっひっひっひっ!」

 少女の言葉を遮って、英理子は声を荒らげた。

「そうですか。強情ですね……」
 少女は言うと、タンクトップの裾をぺろんとまくり上げた。

「きゃっ!?」

 急にお腹を空気にさらされ、英理子は軽く悲鳴を上げた。

「こんな下着みたいな服で良く外を出歩けますねぇ」

 少女は羽根先を露出したお腹へ這わす。

「はわぁぁっ!?」

 そのままさわさわとおへそまわりをくすぐりはじめる。

「ふひひひひひっ!? ひやぁぁっ!!! あぁぁぁ、んひゃっは……はひぃぃ!!!」

 英理子は首を左右に振って悶えた。

「ここもなかなか敏感みたいですね」
 少女は羽根でちょこちょこおへそをくすぐる。

「ひゃひぃっひぃっ、あぁぁぁあひゃふぅぅうぅっ!!! やめっ、やだぁぁぁああひぃぃ」

「これでも白状しませんか? なら――」
 少女は言うと、英理子の足元へ移動する。

「ひっ、ひゃ……へ?」

 英理子は突然刺激が途絶え、きょとんとした表情で、少女の動きを追った。

「ちょ……やめ――」

 少女は英理子の足からサンダルを脱がし取ると、さわさわと羽箒を素足の足の裏へ這わせた。

「ひゃっ……あはははははははははっ!!! もうやぁあぁぁ~~っはっはっはっはっははっっは!!!」

 途端に身をよじって大笑いを始める英理子。

「コレクションは?」
「あひひひひひっひひひ言えなっ、言えないぃぃ~~っひっひっひひっひひひっひっひ~~!!!」

 英理子は涙を流して笑いながら、首を左右に振った。

「そうですか。ならいつまでも笑っていてください」
 少女は言いながら、英理子の足の指の間に羽根先を差し込んだ。

「あがぁぁはっははっははははひひひっひひひひひひやめてぇぇ~~っはっはっは!」

「やめません。吐くまでは」
 少女は羽箒の絵の部分で、ごりごりと足裏を引っ掻き始める。

「うひゃひゃひひひひひっひひひひだぁぁぁあっはっはっはぁぁ~~!!!」

 英理子は足指をびくびくと蠢かせて笑い続けた。
 ブレイカーとしてのプライドが崩れるのは時間の問題に思われた。


(完)




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