姉の陽葵と違い、水島翠月は昔から物静かな女の子だった。
 小学生時代からかなりの頻度で遊びに来ていたが、勇作が彼女に抱く印象は変わらない。
 髪型はずっとストレートのミディアムヘア。白いカチューシャは母親から貰ったものらしく、何年も愛用していた。
 服装はいつも控えめで、夏場でも露出の少ない服を好んで着ていた記憶がある。
 だから、そんな彼女が自分からセーラー服の上着とソックスを脱ぎ捨て、知らないおっさんのされるがままにくすぐられバカ笑いしている姿は新鮮だった。

「いきゃははははははははは!!! いぎぃいぃ~~ひひいひっひひひっひひっひっひ!!? あひゃぁああっ、そこがいぃいのぉぉ~~ほほっほっほっほっほ!!」

 翠月は目を剥いて笑っている。
 当然すでにおっさんの洗脳アプリによってくすぐり奴隷にされている。

「ぶひひ。そっか。翠月ちゃんは足の裏が弱々なんだね~」
 おっさんは、彼女の小さな素足をぐりぐりとマッサージするようにくすぐりながら言った。

「あひゃはひひひひひ~~っひひひひっひ、あひぃぃい、あひらぁぁあはっはっはっはっはっはっはあ~~!!!」

 居間のソファの上でくすぐられている翠月。
 勇作は、珍しい翠月のバカ笑い姿に目が離せずにいた。
 すると、げし、とソックスを穿いた足で顔を蹴られた。
「なにぼけっと見てるんだよ。ご主人様に言われただろ? 翠月くすぐってる間に私の弱点見つけとけって! こうして縛られてやってるんだから、さっさとやれよ! 愚図!」
 目の前の陽葵は、普段の明朗快活な性格からは考えられないきつい口調で言った。
 これも、洗脳のせいなのか……。
 陽葵は小さい頃から世話焼きで、勇作の面倒をよく見てくれた。
 姉弟げんかをしても決して手を出すことはなかった。それよりも、勇作と母絵美の親子げんかを仲裁してくれることの方が多かった。
 人を傷つけるような言葉は決して吐かない、自慢の姉だった。
 そんな彼女が人格が変わったように罵詈雑言をまき散らす。
 肘掛け椅子に手首と腰を縛られている陽葵は、おっさんが翠月を優先してくすぐっていることが気に入らないようだった。
「なに黙ってんだよ。お前がさっさと弱点見つけてくれないと、ご主人様が私のことくすぐってくんねーんだよ! やれよ! 早く!」
 陽葵は目を吊り上げて言う。
 勇作は、震える手を、彼女のソックスを穿いた足の裏へ這わせた。
「……っ」
 一瞬ぴくりと彼女の足が震えた。
 しかし、その後さわさわと指先でなぞってみても、陽葵は笑い声を上げない。
「……。へたくそ」
 陽葵は冷たい視線を勇作に向けた。
 勇作はしゅんとして、こんどは彼女の背後に回った。
 腋の下へ手を伸ばす。
「ん……っ」
 触れた瞬間、彼女の肩がびくっと上がった。
 しかし、その後指をいくら動かしても、陽葵は笑い出さない。
「ああっ、もうイライラする!! なんでこんなに下手くそなんだよっ」 
 振り向いて怒鳴る陽葵の表情に、勇作はすくんでしまう。
 姉弟げんかでも見せたことのない剣幕だった。
 勇作はおっさんから『逃げるな』『しゃべるな』という命令しか受けてない。『くすぐれ』という命令を受けていないために、母絵美をくすぐったときのような力が出せないのかもしれない。
「もっとああやって! 指に力込めるんだよ! 見ろよ! ご主人様を! 見て覚えろよ! ボケが!」
 陽葵はつばをまき散らした。
 その先では、

「いひぃぃいっひっひひひひひ、うひゅぃひぎぃぃひいぃい~~~ひゃやひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!?」

 翠月がのたうち回って笑い転げていた。
 どうやらカチューシャの尖端で、素足の足の裏をごりごりしごくようにくすぐられているためらしかった。
 翠月が母親から貰ったという大切なカチューシャ……。

「ぶひひ。このカチューシャいいねぇ、翠月ちゃん。くすぐりやすいよ~……あ、折れちゃった。ま、いいよね。二本あった方がくすぐりやすいし」
 おっさんは、ずぶずぶ鼻水を鳴らしながら、折れて二つになったカチューシャの尖端で、彼女の両足をくすぐる。

「ぎひゃぁぁあああっははっはっはっはっは、もっどぃいいいいいひひひひひひ!!!! ごしゅじんさまぁあああひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~~!!!」

 翠月は、目を剥いて舌を出し、狂ったように嬌声を上げながら失禁した。


(つづく)


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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 洗脳アプリで大切な家族がKTRシリーズ!

 洗脳モノやNTRモノの魅力の一つ、
 身近な人達が次々と餌食になっていく、しかし、主人公はただ見ていることしかできない、という絶望感を挙げておきたい!
 「見ていることしかできない」という状況を作るために、生放送、幽体離脱、送りつけられるDVDなんていう雛形があるわけですね^p^

 余談ですが、
 伝説のろくろプレイ映画『ゴースト/ニューヨークの幻』の写真立てが倒れる直前のシーンは、ちょうど良い感じの「見ていることしかできない」NTR絶望感が味わえますね。幽体離脱系NTRモノの先駆的な描写なのではないかしら。もっと古いものがあれば教えて欲しい!




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