勇作は『客を追い払え』という命令を受け、玄関に立った。
 扉を開けると、幼馴染みの土田優梨がいた。彼女とは家が隣り合わせで、家族ぐるみで交流があった。
 優梨は学校から帰ってきたばかりだからか、セーラー服のリボンだけ取った姿だった。髪の毛も解かず、二つくくりのおさげにしたままだ。
「あ、ゆうくん。なんだかずいぶん騒いでるみたいだったから……大丈夫なの?」
 優梨は、翠月や陽葵の激しい笑い声を聞いて、心配になって様子を見に来てくれたのだ。
「大丈夫だよ。優梨。いま、ちょっと立て込んでるから。今日は帰って」
 今回ばかりはおっさんの命令がありがたかった。
 優梨までおっさんの餌食にされるのはたまったものではない。
 すると優梨は、ジトっと流し目で勇作を見やる。
「ゆうくん……なんか隠してない?」
「隠してないよ。今日は帰って」
「ホントに? ……なーんか、怪しいなあ」
「ホントだよ。今日は」
 そんなやり取りをしていると、

「へぇ、勇作くん。そんな可愛いガールフレンドがいたんだねぇ。ぶひひ。ちょっと『黙って』いいよ」

 いつの間にか背後におっさんが立っていた。
 優梨はびっくりしたのか、口をあんぐり開けている。
「え……? ゆうくん? 誰? この人」
 優梨、逃げろ……!
 勇作は心の中で叫んだ。
「ぶひひ。ボクはねぇ、この家の新しいご主人様なんだよ? よかったら君も仲間に加わらない?」
 おっさんがそう言うと、優梨は眉をしかめ、後退る。
「えっ、なに言ってるんですか? 意味がわかんない……」
 露骨に警戒心を示し、勇作に目配せする。しかし、勇作は反応することができない。
 お願い。逃げて。優梨……。
 勇作はただ祈ることしかできない。
 しかし、優梨は勇作の顔色をうかがうばかりで一向に動こうとしない。
 勇作とおっさんを交互に見て「誰?」「誰?」と何度も訊ねた。
 当惑しているようだ。
 そして……、
「ぶひ。これを御覧?」
 おっさんは、硬直する優梨に洗脳アプリの画面を向けた。


(つづく)


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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 洗脳アプリで大切な家族がKTRシリーズ! 佳境です!

 名前出したキャラは全員くすぐっておきたい!




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