12月25日。
 自室のベッドで目覚めた拓郎は、枕元に巨大な装置が置かれていることに気付いた。

(まさか、高校生になってもサンタさんが来てくれるとは……。信心深くお祈りした甲斐があった……っ!)

 拓郎は包装を破り捨て、説明書を開く。

(『膝下転送機』……! 任意の相手の片足の膝から下を転送して持ってくることができる……っ!)

 まさに希望に見合った代物だ。拓郎は頬をほころばせた。
 拓郎は足フェチで、常日頃から気に入った娘の足を手元でめでたいと思っていたのだ。

(これが出力装置か……)

 絨毯のような、敷くタイプの出力装置。
 ワープホールが中央にあり、そこから転送された物が出てくる。
 床に敷いたワープホールから、足が、野菜のように生え出てくる光景……。想像しただけでよだれがでる。

 続いてスクリーンを設置。
 これにより、膝下を転送する相手の姿を観察することができる。

(まったく……、粋なモノを用意してくれるサンタさんだ)

 拓郎は、FAXで高校あてに終業式欠席連絡を送り、部屋に鍵をかけて籠った。

 さっそく『膝下転送機』を起動させる。
 とりあえず、自分の通う高校の様子をスクリーンに映してみる。
 ずいぶんと朝早いが、すでにパラパラと登校してくる生徒がいる。

(寒い中をご苦労なことだな……)

 拓郎は登校中の生徒の中に見知った顔を見つけた。
 セミロングの髪。明るい笑顔。ブレザーの制服の上にコートを着て赤いマフラーを巻いている。
 同じクラスの駿河文江(するが ふみえ)である。
 隣にいるのは隣のクラスの園田(そのだ)というおさげの女子生徒。下の名前は知らん。たしか文江と同じ中学出身で仲が良かったはずだ。一緒に登校してきたのだろう。

 文江とはあまりしゃべったことがないのだが、日ごろからかわいらしい顔立ちだとは思っていた。
 比較的男子とも普通に話せるタイプなので、人望も高く印象が良い。ちょっと垢ぬけた雰囲気なので、足もきれいに手入れされているのではないかと予想する。

 拓郎は、装置に文江の名前を入力した。

 すると、床に敷いたワープホールから、垂直ににゅっと足が生えてきた。
 茶のローファー、紺ソックス、膝下の白いふくらはぎ。
 たしか11月中ごろまではくるぶしまでの短めのソックスを穿いていたが、さすがに寒くなったからか、今はふくらはぎを覆う程度の長いソックスを穿いている。

 至近距離で見る、さかさまに生え出た文江の足。ものすごく新鮮な光景だ。

「おおっ!! 尊いっ!」
 拓郎は思わず声を上げた。

『きゃっ……!?』

 スクリーンの中で文江が悲鳴を上げて、つまずいたように前のめりに倒れる。

『えっ……文江っ!? えっ、足、……ええっ!?』園田は口元を押さえた。

 文江の左足、膝下が消えているのだ。当然の反応だ。

『えっ、なにこれっ!! やだっ!!? ええ!?』文江もパニックに陥った様子。

 切断したわけではないので、痛みはないはずだ。

 拓郎は、さかさまの彼女の足のかかとへ指を滑り込ませ、ローファーをかぽっと脱がした。

『やっ!!? なにっ、だれか触ってる!?』
 文江は必死に左足があった位置を両手で叩くが、空振りするだけだ。
『文江……な、なにそれ? ど、どうなってるの?』
 おびえたような園田。
『知らないよ!! わけわかんなっ――』

 拓郎は、天井を向いた文江の足の裏をすーっと人差し指でなであげた。

『ふひゃはははははっ!!?』

『文江っ!!?』

 文江が突然笑いだし、園田が駆け寄った。

 もともと足の裏が弱かったのか、不意打ちに対処できなかったのか。

 拓郎は、すっ、すっ、上下に人差し指を這わせて、文江の足をくすぐる。

『やはっ!!? はははははっ、だっ、だれかがっ、足の裏触ってるぅうう、やだぁあはははははっ』

 文江は地べだで笑い転げる。
 くすぐったさを防ぐ手段がないので、どうしようもない。

 拓郎は、足のつま先をもって、するするソックスを脱がす。
 冷え性なのか、足先はひんやり冷たかった。汗もかいていないので、簡単に脱がすことができた。

『ひっ……や、やだぁっ!』
 文江は笑うのをやめると、おびえたように左足のあった空間を両手でまさぐり始める。
『ふ、文江? ……大丈夫?』
 園田はいまだ状況が把握できないようで、文江に質問を投げるばかり。
『大丈夫じゃないよっ! だ、だれかいるのっ! だれかが私の靴下脱がしたっ! きもいきもいやだぁ!』

 拓郎の目の前にある文江の素足。爪がきれいに整えられた、人差し指の長いギリシャ型だ。
 天井に土踏まずを向けたまま、足首から先がくねくねよじれた。
 目に見えない誰かに触れられるのをよほど嫌がっている様子。
 
 拓郎は、すんすんと足のにおいを嗅いでみる。無臭だ。

『いやぁあっ!! やだぁっ!!!』
 文江の足がびくっと震えるのと一緒に、本人も悲鳴を上げた。息遣いが素足を通して伝わってきて嫌なのだろう。

 拓郎は彼女の足の親指をパクリとくわえる。

『きゃああああああああっ!! きもいきもいきもいきもいぃぃぃぃぃ!!!』
 足指が口の中で激しく動く。文江本人も激しく暴れた。

 拓郎は舌先で、彼女の足の指の股をぺろぺろ舐めてやる。

『やぁあああはははははははっ!!! きもぃいいってぇえぇはははははははははははははっ~~!!!』

 再び笑いだす文江。
 園田はその場でただあたふたするだけの役立たずだ。

 じゅぽっ、と口を外すと、彼女の足によだれが糸を引いた。
 文江の足は、気持ち悪そうに足指をねちゃねちゃ動かす。
 てかてかになった彼女の素足。
 拓郎は、その足指をつかんで、付け根をガリガリかきむしった。

『ふぎゃぁああははははははははははっ!!!? なにこれぇぇえあぁぁあっはっははっはっはっはっは、ホントやだぁああああっはっはっはっはっはっはっはっはっは~~!!!』

 文江は地面でのたうち回って笑い転げる。
 画面上に映し出されるとんでもない光景。
 目の前にはピクピクとくすぐったさによじれる素足。

(いやはや……感無量だなぁ……)

 拓郎は、拓郎のよだれでべとべとになった彼女の素足にローファーをはめなおしてやって、転送を解除した。

『うへぇ……やだもぉー……』
 文江は地面に這いつくばったまま、顔をくしゃくしゃにして泣いている。
 左足だけ紺ソックスがなくなって多少寒いはずなのだが、気にしている余裕はなさそうだ。

『あ、……文江、大丈夫?』
 園田はおびえた表情でおそるおそる文江に近づく。
 おそらくこの「大丈夫?」は「近づいても大丈夫か?」という意味で、文江を心配しているというよりは自己保身の意味合いが強いのだろう。

(まったく……文江も友達に恵まれていないなぁ……)

 拓郎は舌なめずりをする。

(ついでに園田の足も拝んでおくとするか……)

 しかし、『膝下転送機』に園田の名前を入力しようとして思い出す。

(園田の下の名前、……知らねぇ)

 せっかく気分が乗っているのに水を差されてしまった。園田に対して憎しみが生まれた。
 あきらめきれないので、名字だけ入力してみた。
 いけた。
 この装置、最高のクリスマスプレゼントだ。


(つづく)