『へっ!?』

 スクリーンの中で、園田が素っ頓狂な声を上げてバランスを崩した。
 突然、左足の膝下が消失したのだ。

『や、やだっ!! 痛いっ!』

 園田は大げさに騒ぐ。
 切断したわけではないので痛みはないはずだ。嘘つきめ。

 拓郎の自室のワープホールから、園田の左足がにゅっと生え出た。
 さきほどの文江の足よりやや肉付きが良い気がする。
 紺のソックスはゴムが少しバカにになっていてゆるゆるだ。靴はローファーではなくスニーカーだ。

 さっそくかかとに指をひっかけ、スニーカーを脱がす。

「あっ」
 拓郎は思わず声を漏らした。
 靴の下から現れた紺ソックスが、ずいぶんと汚い。靴に覆われていた箇所がところどころ白くなっていた。おそらく長く買い替えていないのだろう。何度も洗濯したせいか、色落ちしている。

 鼻をつま先に近づけ、においを嗅ぐ。やや埃っぽいにおいだ。

『やっ!!? ええっ!? なにぃ……』

 園田は涙目になって、足指をくねくね動かした。

 無駄な抵抗を……。

 拓郎は、園田の紺ソックスのゆるゆるのゴムに指をひっかけ、一気にはがしとる。

『きゃっ!! 寒いっ!』

 拓郎の部屋は暖房ガンガンだ。嘘つきめ。
 
 現れた園田の足は、文江の足とは対照的だ。爪の一部がつぶれ、足の裏には豆があり、ところどころ黄色く変色している。何より、ソックスが古く目が粗いせいか、足指の間や土踏まずの皺に小さな砂利や黒いゴミが付着していた。 親指が一番長い、典型的なエジプト型だ。

 拓郎は、かかとから親指の先までをべろーっとひと舐めした。

『ひゃぁあああああっ!!!? 気持ちわるぃっ!!』

 ちょっとしょっぱい。
 園田もまた、さきほどの文江と同じく左足があった空間を両手で掻き始めた。
 無駄だということが学習できていない。

 拓郎は、よだれのついた園田の土踏まずをぐりぐり人差し指でほじくってやる。

『ひゃっ!!? あひゃひひひひひひひひひひひひひっ!!? なにっ、なにぃいいっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ~~!!!』

 途端に体をのけぞらせ、地べたをのたうちまわる園田。
 この年代の娘は足の裏が敏感なのだろうか。想像以上の激しい反応に、拓郎は満足する。

『やめてっ!! やめてぇえええっへっへっへっへっへっへっへ!!! 嫌ぁああはははははははははははははっ!!!』

 拓郎は、自分のよだれを足裏全面に塗りたくるようにしてくすぐってから、スニーカーを履かせ直して転送解除する。

『ひぃ……ふぅ……きもぃよぉ~~……うぇぇ』

 園田は泣いてしまった。
 靴の中がべとべとして気持ち悪いならさっさと靴を脱げばよいものを。笑いすぎて頭が回らないのか、もともと頭が悪いのか。

 ……ふぅ。

 拓郎は、部屋に散乱した文江と園田のソックスを拾い上げる。
 それぞれジップロックに入れて、名前を書いた紙を貼っておいた。

『文江 清潔感○ 感度○ ニオイ無』『園田 清潔感△ 感度○ ニオイ埃っぽい』


(つづく)