「お兄ちゃんどうしよう! 私、次の試験で学年1位にならないと、マウンテンバイク買ってもらえない!!」
 妹のミズキが俺に泣きついてきたのは、妹の中学の期末試験1週間前のことだった。
 妹は中学2年生。
 試験の学年順位はだいたい6番から7番で、悪くない。
 しかし、両親はそれでは満足しない。俺が中学時代に常に1位だったせいで、両親は感覚が腐っているのだ。
 妹は安定した好成績を収めているのに、いつも親に成績が悪いと愚痴を言われている。不憫でならなかった。
「どうしよう……。このままじゃ私、誕生日プレゼントが木綿豆腐になっちゃう!」
「お兄ちゃんに任せろ! 絶対にそんなこと、させはしない!」
「わあ、お兄ちゃんありがとう! えーん」
 妹は泣いて喜んだ。
 可愛い妹のためだ。一肌脱いでやろう。

 妹は5教科で常に安定した成績を収めているが、突出して得意な教科はない。教科毎で順位を見てみると、すべての教科において2位か3位の成績を収めている。
 調べによると、総合成績1位~5位の生徒は、みなそれぞれに得意教科があった。
 すなわち、1位~5位の生徒がそれぞれの得意教科で転けてくれれば、自動的に妹が学年1位になるのだ。

 俺は1週間みっちり研究を重ね、透明人間になる薬を開発した。
 これで試験当日、妹の中学校に潜入できる!


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 試験当日。
 俺は高校を休み、妹の中学に潜入した。
 家を出てすぐ透明人間になったので、誰にも気付かれることは無い。
 なつかしの中学の制服に身を包んだ生徒達。女子はセーラー服に白のハイソックスという清潔感溢れる制服だ。校内は土足厳禁なので、みな体育館シューズを履いている。
 わずか2年の年の差で、こんなに幼く見えるものなのか。すこし驚いた。

 最初の試験は国語だった。
 国語が得意な生徒は2組の伊達香織(だてかおり)ちゃんだ。
 テスト開始直前に教室に入る。
 伊達香織ちゃんは、ミディアムショートの大人しそうな子だった。スカートも折ってないし、身だしなみもきちんとしている。
 テスト開始前も、席を立たずに教科書を読んでいた。本当に真面目な子らしい。
 俺は彼女の机の下にもぐりこんだ。
 スタンバイが完了したところで、チャイムが鳴り、テストが開始された。

 伊達香織ちゃんは、鉛筆を取ってさっそく第一問目に取りかかっている。
 俺はそんな彼女の足元で、ゆっくりと左足の体育館シューズを脱がした。

「……っ!?」

 伊達香織ちゃん、気付いたようだ。
 しかし、テスト中なので大きく反応することはできない。
 白いソックスを穿いた足の裏は、ちょっとだけ灰色に汚れている。見た所ぽてっとしてて、扁平足だ。
 汗をかきにくいタイプなのか、足はそんなに臭わなかった。

 俺は、ソックス越しに彼女の足の裏を人差し指一本でくすぐりはじめた。

「……んひっ!!?」

 突然の刺激だったためか、彼女は声を上げてしまった。
 試験官の先生が見ている。
 伊達香織ちゃんは、恥ずかしそうだ。

「す、……すみません……」

 伊達香織ちゃん、くすぐられながらもちゃんと謝罪する余裕があるらしい。
 しかし、くすぐられている足の指はくすぐったそうにくねくねと動き続けている。

 俺は、指を立てて、今度は五本の指でくすぐってみる。

「……ぅ゛っ!!」

 こんどは伊達香織ちゃん、鉛筆の後ろ側を噛んでこらえた。
 さっきより刺激は強いはずだが、ちゃんと耐える準備をしていたようだ。理解が早く、賢い子だ。

 俺は、お構いなしに、しゃりしゃり、五本の指を、彼女の平らな土踏まずの上で踊らせた。

「……っ、……~~~~!!!」

 伊達香織ちゃんは、鼻息荒く、顔を真っ赤にして肩をぷるぷる震わせている。
 もうテストどころではないだろう。
 見た所、一問目からまったく進んでいない。

 このままでもいいが、せっかくなのでソックスも脱がしてあげよう。
 俺がソックスに手をかけると、伊達香織ちゃん、違和感を察したのか、左手を下に伸ばして、ソックスの縁を握ってきた。

 おお、抵抗するか!

 俺と伊達香織ちゃんのソックスの引っ張り合いがはじまった。

「……伊達さん? 大丈夫ですか?」
 グッドタイミングで試験官の先生の注意が入った。
「は、はいっ、すみません……」
 と、伊達香織ちゃんが応じている隙に、彼女のソックスを一気に引っこ抜く。
「……あぅ」
 素足になった伊達香織ちゃん。
 やっぱり文化系のぽてっとした扁平足だ。足指は人差し指が長いのでギリシャ型か。
 試験官の先生からは、伊達香織ちゃんの足元は見えないので安心。

 俺は、彼女の足の指の股へ、人差し指を突っ込んだ。

「ふぃぃっ……!!?」

「伊達さん?」
 さっそく先生の注意が入る。

 俺は構わず、伊達香織ちゃんの足の指をぐいっと反らし、指の付け根辺りをガリガリ爪を立ててくすぐった。

「……ぶふっ!!? ひひ、くふぅぅぅひひひひひひひっ!!? ぶぅぶぅ――ぶはっはっはっはっはっはっはっはっははっは!!!」

 伊達香織ちゃん、とうとう耐えきれず噴き出してしまった。
 クラス中の生徒が彼女に注目した。
 真面目な優等生が、いきなりテスト中にバカ笑いを始めたのだ。そりゃ珍しいことだろう。

「やはっ、あははははあはははは!!? ひぃぃ~~ひひっひっひっっひっひ、なにこれぇぇえへへへへへへ!!?」

 髪の毛をブンブン振り乱し、机椅子をガタガタばたつかせて笑っている。
 中学生女子ってそんなに足の裏がくすぐったいのか。

「伊達さん! 今日はどうしたんですか! テスト中に迷惑行為をするなら退場しなさい! 国語の試験は0点です!」

「そんなぁぁあっはははっはっははっはっはっはっは~~!!?」

 これでひとり完了。
 妹はテストがんばっているかな?
 次は社会だ。

 
(つづく)