社会が学年で一番得意な子は、4組の織田果梨奈(おだ かりな)ちゃんだ。
 休み時間の間に4組に入り、織田果梨奈ちゃんを探す。
 織田果梨奈ちゃんは、4組の学級委員らしく、休み時間に駄弁っている生徒達に「ちゃんと勉強しなさい」と小言を言っていた。
 耳の後ろで二つにくくったおさげの髪型。当然身だしなみもきっちりしている。仕切りたがりででしゃばりな、一緒にいると面倒くさそうなタイプだ。
 俺はさっさと彼女の机の下に身を潜める。

 テストが始まると、彼女は真剣な表情で答案用紙に向かう。
 根っからの真面目人間のようだ。
 俺は、ゆっくりと彼女の左足からシューズを脱がし取った。

「……っ」

 すぐに織田果梨奈ちゃんは気付いたようで、足をくねらせた。
 びっくりした。
 シューズを脱がした瞬間、汗の熟成された臭いが鼻をついたのだ。
 おそらく、もう何ヶ月もシューズを洗っていないに違いない。

 俺は、汗で黒ずんだソックスの足の裏をこちょこちょとくすぐる。

「ぅ……っ、……~~。っ」

 織田果梨奈ちゃん、くすぐりには強いのか、一瞬口元をゆるませるが、すぐに引き締め直した。
 ちょっとだけ声が漏れたが、試験官の先生は気付いていない様子。

 俺は負けじと、ソックスを脱がす。
 織田果梨奈ちゃん、平静を装うことに徹しているようで、さっきの伊達香織ちゃんのような抵抗はなかった。
 脱がすときも汗で少し張りついて脱がしにくい。
 すぽんと脱がし取ると、ちょっと黄ばんだエジプト型の素足が現れた。
 指の間や爪にごみがたまっていて汚い。
 外から見える身だしなみはきっちりしているのに、見えないところはずぼらなようだ。

 俺は、彼女の足の指を押し広げ、指の付け根を5本の指でくすぐってやる。

「~~~~~っ! ………っ」

 しかし、彼女は笑わない。
 織田果梨奈ちゃん、相当強いのか、頬をヒクヒクさせる程度で、黙々と答案用紙を埋めている。

 これはまずい。
 俺は、右足のシューズとソックスも脱がし、両方の素足をくすぐる。
 どっちの素足もむちゃくちゃ臭い。

「……~~~っ、……っ、~~~~」

 ときどき体をよじってくすぐたっそうにするも、織田果梨奈ちゃん、まったく動じない。

 仕方が無い。

 俺は、彼女から脱がしたソックスを持って、机の下から這い出た。
 透明になっているため、当然他の生徒からは見えない。

「……?」

 織田果梨奈ちゃん、刺激が止んで安心したのか、すこし顔が緩んでいる。

 俺は、彼女の背後に回って、後ろから彼女の鼻に、彼女のソックスを押し付けた。

「んぶぅぅうううう゛~~!!?」

 さすがに悪臭にはびっくりしたのか、織田果梨奈ちゃん、鼻水を噴き出して大声を上げてしまう。
 彼女は両手で鼻のソックスを押さえた。

「織田さん! なにやっているんですか!!」
 当然、試験官の先生に注意される。
 なにせ、外から見れば、織田果梨奈ちゃんは自分で自分のソックスを鼻に押し当て、悶えているように見えるのだ。

「う゛ぇえぇ゛っ!!? ぜ、せんせっ、違っ――」

 俺は、織田果梨奈ちゃんが動揺したところを見計らい、背後から脇腹へ両手を差し込みこちょこちょくすぐった。

「きゃっ!!? っ、ぶ、――ぶぅあはははははははははははは!!? なにっ、なにぃぃ~~はっはっはっはっはっはっはっははは!!!」

 とうとう織田果梨奈ちゃんは笑い声を上げた。
 脇腹やあばらの辺りを縦横無尽にくすぐってあげると、地団駄を踏んで笑い転げてくれる。

「きゃっはっはっはっはっはっはっは!!! やめてぇぇ゛あぁあっはははははは、なによこれぇぇえあはははははははははは~~!!!」

 彼女はくすぐったさのあまり、素足で机を蹴飛ばし、答案用紙をぶちまけてしまう。
 周りの生徒も奇異な目で見つめている。
 小うるさいタイプの学級委員長が、テスト中にいきなり手足をばたつかせて笑い狂っているのだ。あまりにも奇妙であろう。しかもシューズとソックスを脱いで素足。

「なにやってるですか! 織田さん! 悪ふざけをするなら退場しなさい! 社会科のテストは0点です!」

「あぁぁぁははははははははははっ!!? ちょぉおおお、これとめてぇえだあははははっはっはっはっはっははっは!!!」

 これでふたりめ。
 次は数学だ。


(つづく)