数学が得意な子は、1組の北条早月(ほうじょうさつき)ちゃんだ。
 目が据わっていて、天然パーマのミディアムヘアの女の子だ。リボンが曲がっていたり、ソックスの長さが左右揃っていなかったり、身だしなみには無頓着のようだ。ずっと欠伸をしている。
 ぼんやりとしていて、マイペースな印象。
「北条さん、勉強してきた?」
「うーん……一応」
 話しかける級友にもその程度の反応。
 机に向かっているのに教科書を見るわけでも、精神統一をするわけでもなく、ただぼんやりと景色を眺めたり足をぶらぶらさせている。あんまり人と喋るのも好きじゃなさそうだ。
 妹の席を見ると、せっせとテスト直前の追い込み勉強中だ。がんばれ! 妹よ!
 俺は心の声で応援しながら、北条早月ちゃんの席の下へ潜り込む。

 テストが開始された。
 北条早月ちゃん、テストが始まってもしばらくはペンを取らず、景色を眺めていた。
 本当にマイペースな子だなあ。
 机の下で脚を伸ばし、シューズの踵を机の下の固定棒にだらしなく乗せているので、靴は脱がしやすい。
 俺は彼女のシューズを脱がす。
 しかし、前の二人と違って、まったく気付く気配が無い。ここまで無反応だと逆に怖い。
 足の臭いは、織田果梨奈ちゃんほど臭くはないが、普通に汗臭いといった感じ。もともと汗をかきにくい子だが、一切手入れをしてないため、シューズに臭いが残っているという感じだ。先の織田果梨奈ちゃん同様、しばらくシューズを洗っていないらしく、白いソックスの足の裏にはくっきりと指の形にそって黒い汚れがついている。エジプト型の扁平足だ。
 両足ともすんなりシューズを脱がし、ソックスに手をかけた。
 それでも反応がない。
 両足のつま先をもって、するすると引っ張る。
 北条早月ちゃん、反応が無い上に、まだテストもはじめてない。机に肘をついて、窓の外を眺めている。
 この子、大丈夫か?
 しかし、これでも数学の成績が学年トップなのだ。人は見かけによらない。

 露わになった彼女の素足。相変わらず、だらんと足を机の下の固定棒につっかけている。ソックスを脱がされたことにすら気付いてないのか……?
 俺は、彼女の左足首を掴んで、人差し指で、足の裏をすーっとなぞった。

「ふひゃひゃひゃひゃっ!!!」

 突然びくびくっと体を震わせて笑い声を上げる北条早月ちゃん。
 こっちがびっくりするほどの反応だ。

「ちょっと、北条さん! 静かにしなさい」
 さっそく試験官の先生に注意されている。

 俺は彼女の両足を揃えて抱え込み、こちょこちょ10本の指でくすぐった。

「ひゃひゃひゃひゃっ!!? ひゃめっ……ふひゃぁぁ~~っはっははっはっはっはははひぃぃひひひひひひひひひひ!!!」

 北条早月ちゃんは、バンバンと机を叩いて笑っている。
 足の指が激しくクネクネ蠢いている。

「ひぁああっはっはっはっはっは、なんでっ、ソックスがぁあぁっはっははっはっははっはっは~~!?」

 いまさら素足にされたことに気がついたのか。
 こんなにくすぐったがり屋のくせに……。馬鹿と天才は紙一重ということなのか?

 北条早月ちゃん、あまりに暴れるものだから、後ろの席のこの机までひっくり返してしまう。

「北条さん! いい加減にしなさい! 退場を命じます! 数学の試験は0点です!」

「ふにゃぁああっはっはっはっはっはっはは、足がぁあははは、こちょぐったいぃいぃっひっっひっひっひっひっひ~~!!」

 北条早月ちゃんは反応が良くて面白かった。
 こんどは別の機会に、全身コチョコチョの刑にでもしてあげたい。
 ともあれ、これで三人、邪魔者を始末した。妹はテストがんばってるかな?
 次は理科だ。


(つづく)