英語が得意だという上杉由奈(うえすぎゆな)ちゃんの在籍する5組に到着。
 しかし、目的の上杉由奈ちゃんの姿がない。
 おそらくトイレだろうと思って待っていると、そのままテスト開始時刻になってしまった。
 どういうことだろう? 机にはカバンがあるし登校した形跡がある。……
 まさか!
 教室を飛び出して一階へ降りる。向かった先は、保健室だ。
 音を立てないよう扉をゆっくり開け、中へ入る。
 保健室のベッドに髪の毛を一つにくくった色白の女子生徒がひとり。折り畳み式の机でテストを受けていた。上杉由奈ちゃんだ。気が付いてよかった。保健室の記録を見ると、朝いちばんのテスト中に貧血で倒れ、そのまま保健室でテストを受けているようだ。
 保健の先生は不在。カンニング対策もくそもあったもんじゃない。
 しかし、好都合だ。
 俺は、布団の端から両手を突っ込んだ。
 まさぐって彼女の足を探し当てる。シューズはすでに脱いでいるため、ソックス越しの足。

「ん?」

 違和感に気づいて上杉由奈ちゃんは布団をめくった。
 彼女の両足からソックスを脱がしとり、がりがりと激しくくすぐる。

「ぎゃっ!!? なはっはっはっはっはっはっはっは!!? うえぇぇ゛えぇぇっ!!? なんでぇぇははっはっはっはっはっはっはっはっは~~!!?」

 上杉由奈ちゃんはびっくりしたように笑いだす。
 布団と筆記用具を弾き飛ばし、もうテストどころではない。
 ちょうど、リスニング問題がはじまった。

『クェスチョンワァン、リッスン――』

「やめぁぁぁっはっはっはっはっはっはっは!!! やめっ!!! 聞こえないぃいいっひひっひっひひひっひっひっひっひっひ~~!!!」

 自分の笑い声で放送がかき消され、文句を言う上杉由奈ちゃん。ずいぶんと滑稽に見えた。

 今回は監督の先生がいないため、退場0点の作戦が取れない。
 時間いっぱいくすぐり倒して、問題を解けないようにするしかない。

 俺はベッドの上で上杉由奈ちゃんに抱き着くようにしがみつき、脇腹をくすぐる。

「ひゃっひゃっひゃひゃっひゃっ!!? にゃんでっひぇぇっ、うへへへへへへへへへへっ!?」

 透明なのをいいことにやりたい放題だ。

「ひゃめてぇぇっ、誰ぇぇっ!!! 助けてぇぇっへへっへ、あひゃぁぁんっ!!? 無理だってぇっぇえっへっへっへっへっへっへっへ!!!」

 貧血で倒れるほど病弱な女の子が、顔を真っ赤にして笑い転げている。
 全身をまさぐった結果、特に腋と足が弱いことが分かった。
 俺は上杉由奈ちゃんをうつぶせに押し倒し、両足をそろえ、ふくらはぎの上に乗っかる。
 天井をむいたまま動けない素足の足の裏をがりがり思い切りひっかきまわした。

「おひょへへへへへへへへっ!!? あひわあぁぁっひゃっひゃっひゃ!!?」

 人差し指の長いギリシャ型の扁平足はずいぶんと敏感だった。

 そのまま時間いっぱいくすぐりまくって、英語のテストは終了した。解答用紙は四分の一も埋まっていない。
 テスト用紙を回収に来た先生は、シーツのずれたベッドの上でアヘ笑顔のまま失神している上杉由奈ちゃんを見て、絶句していた。


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 数日後。
 テストの結果が返ってきた。
「……なん、……だと?」
 妹ミズキの学年順位は3位だった。
「ごめんお兄ちゃん! せっかくお兄ちゃんが頑張ってくれたのに、私がケアレスミスしたせいで……ぴーっ!」
 ミズキは泣いて謝ってきた。
「謝る必要なんてない! 学年3位なんて立派なもんじゃないか!」
「でもでも! これじゃ私の誕生日プレゼントが木綿豆腐に……えーん!」
「お兄ちゃんがおいしい麻婆豆腐を作ってやる! だから次、頑張ればいいさ!」
「麻婆豆腐!? やった! 私、麻婆豆腐大好き!」

 ミズキがテストで学年1位を取るその日まで、俺たち兄妹の戦いは続く……っ!


(完)