戦車道無限軌道杯一回戦は、大洗女子高とBC自由学園の試合である。
 両校の激しい戦車戦が繰り広げられる傍ら、
「ねぇ、あのジュリ扇、すてきじゃない?」
「ジュリ扇?」
「ほら、あのファー付きの扇子のことよ」
「ファー?」
「だから! ふさふさの毛のついた扇!」
「ああ。BC自由学園の隊長さんが持ってる采配ね」
 観客席に、明らかに世界観の違うオーラをまとった女性2人組がいた。まるで2Dの世界に3Dのキャラクターが紛れ込んだような違和感が画面越しにも伝わるだろう。
「そそ。ジュリ扇を采配替わりに使うなんて、イカしてると思わない?」
「思う思う!」
「あのふわふわのジュリ扇で、あのかわいらしいお嬢様隊長さんの足の裏をこちょこちょワサワサしてみたいと思わない?」
「思う思う!」
「それじゃ。この試合が終わったら、……いつもの手筈で」
「了解」

~~~

 試合は大洗女子の勝利で幕を閉じた。

西住殿
「あれ? マリーさんは?」

秋山
「おや、どうしたんでしょう? さきほどまでこちらにいらしたのに」

まこぴー
「ぐぬぬ。もっとモンブランおかわりしたかったのに……」

さおりん
「ちょっと麻子、口にクリームがついてる」

五十鈴会長
「私の胃袋は宇宙です」

 試合後交流会の最中、BC自由学園隊長マリーが突如姿を消した。……

~~~

 白一色のバーチャル空間。

マリー
「えっ? ここは……?」

 マリーはびっくりしたように目を見開いた。
 首を左右に振って周囲を見渡そうとするが、首の可動域が小さいためかなわない。
 彼女は木板をくりぬいて作った枷によって両手と頭を拘束されている。いわゆる晒し台。板の中央から突き出た顔、その両脇に手首から先が突き出ている。まるでフランス革命の公開処刑だ。

マリー
「ちょっと……! 誰か! 私はどうしてここに……っ」

 戸惑いを隠せない様子のマリー。

 その様子を空間の外から2人組の女が眺めている。
「マリー様、戸惑ってるわね」
「そりゃそうでしょ! 数秒前までみんなでケーキ食べてたんだから」
「マリー様の焦った顔かわいい。……2Dのキャラを一瞬にして不思議な空間に拉致監禁、好きな拘束体勢で即出力! なんて素敵な謎技術なのかしら」
「開発者に感謝しなきゃね」
「さっそくやっちゃいましょ。マリー様、そろそろ泣きそうよ?」
「それじゃ、没収しておいたジュリ扇を、……出力、と」
 女が画面外で操作をすると、……

 ぽんっ。

マリー
「えっ……?」

 マリーの目の前に突如ジュリ扇が出現する。

マリー
「それは、私の……?」

 ジュリ扇はふわふわと浮き上がり、彼女の頭を飛び越え背後へ移動していく。

マリー
「えっ……なに? なんなの!? 誰か!? 聞こえているのでしょう? 返事してよ!」

 マリーは自身のジュリ扇が視界から消えて不安にかられたらしく、喚いた。

 画面外では、
「マリー様、かなり取り乱してるわねぇ」
「そりゃ何されるかわかんないんだから」
「首から下見えないから、余計に怖いのかな。自分がどういう体勢なのかもわかんないだろうし」
「足の裏がすーすーするだろうから、ブーツと靴下脱がされてることはわかるだろうけどね」

マリー様 晒し台にて

 横から見ると、空間のど真ん中で、マリーの体はうつぶせで膝を上へ曲げたエビぞりのような姿勢を維持するよう2枚の木板で固定されている。
 地面と垂直に固定された板によって頭と両手首を、その後ろ、やや高い位置で水平に固定された板によって両足首を拘束されている。
 上から見ると、少し間隔を開けて白い素足が板から生え出ているように見える。
 そこへ、先ほど飛び立ったジュリ扇がふわふわと舞い降りた。

マリー
「ねぇっ、誰か――んぁっ!!?」

 マリーの声が盛大に裏返った。

 ジュリ扇がふぁさふぁさと左右に揺れ動き、マリーの足裏を撫でまわした。

マリー
「ぷふっ……ふはっ! あははははははは!? なにっ、それっ……あはははは~~!」

 一度吹き出したら止まらない。
 ジュリ扇が彼女の足の裏で動き回ると、マリーは頭を上下に揺らして笑う。

マリー
「あはっはっはっはっ! ちょっとぉ~~、だれぇ!? いたずらやめてぇぇっはっはっはっはははははははははは~~!!!」

マリー様 ジュリ扇で足こちょ

 画面の外で満足げに微笑む2人組。
「いたずらですって。マリー様かわいい」
「あんなくすぐったそうなジュリ扇持ってて、いままで足の裏を撫でたことないのかしら? ずいぶんと敏感さんなのね」
「まだやさしく撫でてるだけじゃない。柄の部分も使ってあげなよ」
「了解」

 女の操作で、ジュリ扇が突然動きを止める。

マリー
「ふぇっ……ひぃ……ね゛っ、ちょっと。誰だか知らないけど、い゛、いまのうちにやめておきなさい……ね? 私にこんなイタズラして、ただで済むと――」

 息を切らすマリーの足の上で、くるりと反転したジュリ扇が再び舞い降りる。
 きゅっと縮こまった足指の付け根を、ジュリ扇の柄がじゃりじゃりとほぐしはじめた。

マリー
「――んぶはぁっ!!? ぶははははははははっ!!? んま゛っ、ん゛待ってなに゛ぃ゛いい~~~っはっはっはっはっはっはっはっはっは!?」

 マリーは心の準備ができていなかったようで、激しく鼻水を吹き出して笑う。

 ジュリ扇の柄はマッサージをするようにマリーの足指をほじる。
 彼女の足指がびくびくともがく。

マリー
「んかっ、はははははははははっ!! やめっ、いだだっ、痛いっぃっひひいいっひっひひひっひっひっひっひ~~!!!」

 痛さとくすぐったさが混在する刺激。足裏マッサージの経験がない様子のマリーは、わずかにジュリ扇が動くだけで、激しい反応を示した。

 ジュリ扇はずりずりと下方に移動し、足裏のくぼみを上下にこそぎはじめた。

マリー
「ぶふぁっ!!? あひはははははっ!? つっ、土踏まずはやめてぇぇ~~っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはは!!!」

 マリーは目に涙を浮かべ笑いもだえた。

 彼女の激しい反応を目の当たりにした画面外の2人は、
「やはりマリー様の土踏まずはよわよわだったわね」
「何言ってるの。土踏まずをあんな風にくすぐられて、我慢できる女の子なんていないわ」
「弱点もわかったことだし、そろそろラストスパートかけていいんじゃない?」
「そうね。こんなに大声上げて笑うことなんて普段ないでしょうし、良いストレス発散になるでしょう。後は思いっきり、下品に、笑い狂ってもらいましょう」
 ……

マリー
「あははははっ……っ、もうっ!! ひぃぃ~~っひっひ、いい加減に……――っ、……、え?」

 突然ジュリ扇の動きが止まり、きょとんとするマリー。

マリー
「や、……やっと、終わり?」

 そんなわけない。

 足枷の板の両端から突如ぬめり出た特殊な黒いカーボン。あっという間に彼女の足指をからめとった。
 一瞬にして足指を全開に広げたまま身動きが取れなくなったマリー。
 足に力を込めて指を縮こまらせようとしても、土踏まずがピクピクと動くだけだった。

マリー
「え……まって……、まさか、こんな状態で……や、やめなさい! なんでもっ、なんでもする! ねぇ!? 返事して! なんでもあげるから! モンブランでもマカロンでも好きなだけ――」

 マリーは顔面蒼白になって慌てふためく。
 ジュリ扇は容赦なく、彼女の足裏へ襲い掛かった。

マリー
「ぶふっ――ん゛あ゛ばはははははははははははははははは!!? だからダメだってぇ゛ぇえ゛えぃ゛ひひひひひひひひひひひひひひひひひひ~~!!!!」

 いつの間にか2本に分裂したジュリ扇が、マリーの足裏を蹂躙する。
 片方はファーで指の股をやさしくくすぐり、もう片方が柄の先端でかかとから土踏まずを掻きまわす。

マリー
「ひぁぁああははははははは!!!? 無理無理無理っ! おかしくなるっ、ふひゃひゃひゃひゃっ!!! 笑いすぎて頭おかしくなっちゃうからぁああっはっはっははっははっはっはっはっは~~!!!! 誰でもいいから助けてぇぇぇええっひっひっひっひ~~!」

「うわ。いつものマリー様からは想像できない顔になってる……」
「素敵な笑顔でしょ?」
「うんうん」
「このまま気絶するまでくすぐったら、いつもの段取りで」
「OK。記憶消して元の世界に転送しておくわ」

マリー
「あひゃひゃひゃひゃっお助けぇえぇ、お助けぇええへへへへっへっへっへふひゃぁぁ~~!!!」

~~~

押田くん
「おや? マリー様、いま一瞬ワープして現れませんでしたか?」継続高校みたいに

マリー
「なにを言っているのかしら。そんなわけないでしょう。……んっ」

押田くん
「どうされました?」

マリー
「なんだか体がほてって汗ばむし、足がムズムズするのよね。バラ風呂に入りたい気分だわ」

安藤くん
「バラ風呂サービスカットは3話までお預けだ!」たぶん


(完)