俺の名はケンジ。菜箸を使わせたら日本一のてんぷら屋だ。俺の手にかかれば、シュリンプも巨大海老天に大変身。巧みな菜箸さばきで、衣を盛りに盛って見せるぜ!

 さて、そんな俺の店に4人家族がやってきた。
 40歳ぐらいの父母に、小学校高学年中学年ぐらいの姉妹だ。
 姉妹どちらも日に焼けて活発。お姉ちゃんのほうはショートカットでノースリーブに短パン。妹のほうは小さなサイドアップテールでフリルのついたワンピース。
 料理を運び、しばらく様子を見ていると…

 むむっ!

 2人とも箸の持ち方がむちゃくちゃだ! 菜箸マスターと名高い俺の店で、なんてけしからん!
 しかも親2人はまったく注意しようとしない!
 こうなりゃ俺が矯正してやるしかない!

「お嬢ちゃんたち? お箸の持ち方、ちょっと変じゃないかい?」
 俺が優しく声をかけてやると、
「え、……おじさん、なに? 気持ち悪い」姉はドン引き。
「おかしくないもん! あたしは昔っからずっとこれでやってるもん」妹は口答え。

 父親は能天気に、
「まあまあ大将。こどもの箸の持ち方ぐらいいいじゃありませんか。それより、ここのエビはちょっと衣が多すぎやしませんかね?」

 カチンときた。

 俺はすぐさまバイトを招集し、4人家族を取り押さえる。
 嫌がる姉妹は座敷へ移動。ねじ伏せ、姉のサンダルを、妹の靴とソックスを脱がし取った。芦浦だけ焼けていない、かわいらしい素足姿になった姉妹。
「……な、なにをするんですか!? こどもたちを放してください!」
 母親が悲鳴を上げた。

 無視だ、無視!
 俺はバイトたちに合図を出す。
 バイトたちはそれぞれ菜箸を取り出した。きょとんとする姉妹2人の素足をがっちり固定して、

 カリカリカリカリ!
 こちょこちょこちょこちょ!

 菜箸の先端で足の裏を激しくくすぐりはじめた。

「きゃはっ、あはははははは!!? なにっ!? おじさんなにぃいいっひっひっひっひ! こちょぐったいぃいぃぃ~~」

「やはぁぁっははっはっはっは!!! ちょあまぁあはははははははは!!!? ひぎぃぃぃぃっひっひっひっひっひっひっひっひ~~!!」

 2人の姉妹は甲高い笑い声をあげて泣き出した。

「君がお箸をちゃんと持たないのが悪いんだぞ! お箸をバッテンにして持つなんて、下品にもほどがある!」

「キャッはっはっはっは!? そんなこと言われてもぉぉ~~、やだぁぁ! ひっかかないでぇぇぇ~~!」

「ヤダぁぁはっはっはっはっはっは、ずっと! ずっとこうやってきたのにぃぃひひひひひひひひひひひひやめてぇぇ~~!!」

 2人の足指がくねくねよじれる。
 バイトたちは姉妹の足裏のしわを菜箸の先端できれいになぞり、カリカリと強弱をつけてくすぐっていく。

「わかったら、お箸の持ち方をきちんと練習すると誓いなさい!」

「誓うぅぅぅっひっひっひ、誓うから許してぇぇぇ~~へっへっへっへっへっへ!!!」

「ごめんなさいごめんなさいぃぃひっひっひっひっひっひっひ~~!!!」

 泣いて謝るなら許してやる。
 俺の合図で、バイトたちが手を止める。

 ひぃひぃ、はぁはぁ、息を切らせる姉妹を、両親の元へ帰してやった。


~~~


 続いてやってきた女子校生2人組。夏休み期間だが部活か補習でもあるのか、2人とも制服姿だ。

 なんとこいつら、箸を使わずにフォークでてんぷらを食べ始めた。
 許せん!

 俺はバイトに合図を出し、問答無用で女子校生2人を取り押さえた。

「ちょ……なにするのよ! 訴えるわよ!」

「やめてください! 私たちが何したっていうんですか!」

 バイトたちは手際よく2人の革靴とソックスを脱がしとった。
 蒸し暑い日に革靴を履きっぱなしだったせいか、2人とも足の裏はかなり蒸れている。素足の足の裏はほんのり赤くなっていた。

「や、なに!? 靴脱がすとか……変態!」

「お願いです! ホントに何もしてないですから。お金もちゃんと払いますから!」

 俺は無視してバイトをけしかける。
 バイトたちは菜箸を取り出し、彼女らの素足に突き刺した。

「ひぎゃぁぁぁ!!?」

「い゛ぃぃぃぃ!?」

 がりがりがりがりがり!
 こちょこちょこちょこちょ!

「ぎゃははははははは!? なにすんのぉぉ~~ひゃはははははははははは!!」

「やっ……ぁははははははははは!!? ひゃめっ、くすぐりダメですぅぅ~~ひっひっひっひっひっひっひ~~!!!」

 足の裏を菜箸でかきむしられ、馬鹿笑いする女子校生2人組。

「俺の店でフォークなんてよく使えたもんだな! てんぷらとは元来箸で食うもの! 菜箸の神に代わって俺がお仕置きしてやる!」

「ぎゃっはっはっはっは!? ふじゃっ……ふざけんにゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

「そんな、……理不尽です!! うひっひっひっひっひ!? だってぇ、箸立てにフォークがあったからぁぁあっはっはっはっはっはっはっはっは~~!!!」

 大笑いして暴れる2人。
 しかしバイト総がかりで押さえつけてるため、びくともしない。
 2人の足指はぐねぐねと激しくもがいている。

「この期におよんで口答えとは……けしからん! こうなったら閉店まで笑い地獄の刑だ!」

 俺の合図で、バイトの菜箸がスピードアップ!
 バイトたちの菜箸さばきもなかなかのもの! まだまだ俺にはおよばんがな!

「ぐへへへへへへへへ!!? なんでこんな目にっ、あひゃひゃひゃ!! こんな店、二度とくるかぁぁひゃっはっははっはっは~~!!」

「おねがいぃっひっひっひ、土踏まずガリガリしないでぇっぇえへへへへへへへへへ!!!」

 問題ない。
 うちの衣には何度も食べたくなる不思議な成分が入っている。
 窒息しかけるまで笑い狂ったところで、彼女らはしっかりとリピーターになってくれる。

 しかも界隈の一部では、箸の持ち方を矯正してくれるてんぷら屋として、人気なのだ。
 きっと明日も明後日も、客足が途絶えることはないだろう。


(完)