かわいい女の子をくすぐりたい……!
 その欲求は変態男子にだけ生じるものではない。健全な女子である、私、佐々木姫子(ささき ひめこ)もまた、その欲求に支配されている。
 今日は学校の身体計測の日。
 私はこの日を心待ちにしていた。身体計測中は自由時間も多く、みんな強制的に体操服に素足という薄着になる。何かと理由をつけて、かわいい女の子をくすぐるチャンスを生み出せるのだ。
「ねえねえ。アコちゃん! 足の大きさ比べっこしようよ!」
 私はさっそく、三角座りをして順番を待っていた同じクラスの女子生徒に声をかける。長谷川亜子(はせがわ あこ)ちゃん。小柄でおかっぱ頭のおとなしい女の子だ。
「えぇ~……恥ずかしいよぅ」
 亜子ちゃんは顔を赤らめ、つま先をきゅっと内側へ寄せた。半分ぐらいの女子は、素足で上履きを履くのに抵抗があるのか、かかとを踏みつけてつっかけのようにしているが、亜子ちゃんはきっちりかかとまで履いている。真面目だなあ。
「ほら、私の足! 女子にしては大きめなんだよ~」
 私は亜子ちゃんの前で上履きを脱いで見せ、足指をくねらせた。亜子ちゃんは恥ずかしそうに唇をかむ。人前で靴を脱いだり、靴下を脱いだりするのが恥ずかしいタイプの子だ! 願ったりかなったり。
「いや……私は……」と渋る亜子ちゃんだったが、私のしつこい懇願にとうとう根を上げた。
 亜子ちゃんはゆっくり、おそるおそるという風に、人差し指を右の上履きのかかとに差し込む。
 チラと、私がガン見しているのを確認してから、一気に脱いだ。
 あらわになる真っ白な亜子ちゃんの素足。足の裏をぺたっと地面につけたままきゅっと指を縮こまらせた。
「はい! じゃあ、亜子ちゃん足立てて!」
 私が自分の左足の踵を地面に付け、足裏を亜子ちゃんに向けて見せた。
「う……うん」
 亜子ちゃんも真似をして、ゆっくりと足を立てた。すごく恥ずかしそうだ。
 足は小さめで偏平足。指先がピンク色になっているのは、真面目に上履きをかかとまで履き続けていたために蒸れたらしい。
 私は、亜子ちゃんの右足の裏にぺたりと自分の左足の裏を合わせた。ぷにぷにの柔らかい皮膚感がたまらない。
「わぁ、亜子ちゃん足ちっちゃくてかわいいね~」
 と、感想を言うポーズをとりながら、……

 くにくに、と足指を動かし、亜子ちゃんの足の裏をくすぐる。

「ひゃはははっ……やだっ! 佐々木さん……、くすぐったいよぉ」

 亜子ちゃんはびくっと肩を上下させて足をひっこめた。
 予想通りの反応。顔を真っ赤にしてかわいい。
「ふ~ん、亜子ちゃん足の裏くすぐったがりなんだぁ~」
 私はわざとらしく亜子ちゃんをジト目でにらみ、
「じゃあ、こちょこちょの刑だ!」
「やっ……!!? ちょ、だめ――あははははははははは!!!?」
 亜子ちゃんの右足首をつかんで、空いた手で亜子ちゃんの足裏をワチャワチャくすぐる。
「ちょ……んははははははっ! 急にっ……ふにゃぁぁ~~ひゃめぇぇ~~くひひひひひ」
 亜子ちゃんは顔を押さえて、おしりをズリズリ左右に動かしながら笑い悶える。右足の指がきゅっとなってかわいい。
 亜子ちゃんの笑い声に気づいた男子がチラチラこちらを見ている。
 どうだ。うらやましいだろ!
 私は爪を立てて、亜子ちゃんの土踏まずを撫でた。ぷっくらしていて、偏平足気味だ。
「ふへぇぇへへへへ!? いひひひひ、いつまでやるの!? ささきさっ、たしゅけてぇぇ~~ふぁっはっはっはっは!!!」
 可愛らしい涙目の亜子ちゃんが見られたところで、私は手を止めた。
「……ひぃひぃ。もぅっ!」
 ちょっとむくれる亜子ちゃんもかわいい。
「ごめんごめん! ちょっとやりすぎちゃったテヘペロ。でも亜子ちゃんがこんなにくすぐり弱かったなんてねぇ~?」
「きゅ、……急に足の裏くすぐられたら、誰だって笑っちゃうよぉ……」
 亜子ちゃんはいそいそと上履きを履きなおす。いじけた様子の亜子ちゃんを見ているとまた襲いたくなってしまうが、ここは我慢だ。
 これで、私と亜子ちゃんの関係性において、亜子ちゃんがくすぐりに弱いという共通認識ができたので、また何かにつけて亜子ちゃんをくすぐる口実が作れる。一度くすぐってしまえば、大義名分はなんとでもなるのだ!
 せっかくの身体測定。みんなの格好と心が無防備になっている今がチャンス。たくさんコチョ友を増やしにいかなきゃ!



(完)