「さて、泉ちゃんの弱いところはどこかなぁ?」
 メンバーのひとりが、そういって私のスニーカーを脱がす。
「ひっ……!」
 人差し指でくるぶしまでのソックスを穿いた足裏を撫でられ、ぞくっとする。ぶるりと首の後ろが寒くなる感覚だ。
「靴下越しでこれだと、直だとどうなっちゃうのかなぁ」
 するりと両足ともソックスを脱がされた。
「ちょっ……やめてくだ――」
 私の言葉をさえぎるように、いきなり二人がかりで素足の足裏をくすぐってきた。

「きゃはっ!? くははははははははは!!? やはっ、ちょっ、やめてぇ~~っはっはっはっははっはっはっははっは!!!」

 両足の裏をはい回る10本、20本の指の動きに耐えられなかった。

「おお。足弱い弱い。楽しいねぇ楽しいねぇ」

「ひゃっひゃっひゃっひゃ!? 楽しくないっ! 楽しくないぃっひひっひひひひっひ!!! まゆぅぅぅひひひひひひ!!! やめさせてぇぇえぇへへへへへへへ!!!」

 足の指が自分の意志に反してグニャグニャ動く。
 まゆに助けを求めるが、当然聞き入れてもらえない。
「泉もすぐ虜になるよぉ」
 まゆはそういって、私の脇腹をぐにっとつまんだ。

「あひゃぁぁっ!!? んじょぉあああ!? ぐにぐにしないでぇぇ~~はっはっははっはっははっは!!!」

「足も弱い、脇腹も弱い。この子はかなり優秀だね」
 サークルの先輩が満足そうにうなずくと、
「ここも弱そう~」
 花井さんが、私のスカートの裾から手を突っ込み、太ももを撫でまわしてきた。

「うへへへへへへへ!!? んにゃぁぁあ!!? そんなとこぉぉ~~、触らないでぇぇえぇっへへっへっへっへっへへ!!!」

「股関節回りもー」

「ぎやぁぁああああひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!?」

 私は、脇腹から足裏にかけてくすぐり回され、頭が変になりそうだった。

「それじゃぁここも当然弱いよねぇ」
 先輩が手を伸ばしてきたのは腋の下。

「ひゃっひゃっひゃ!? そこはだめぇぇぇえっへっへっへっへ!!!」

 ブラウス越しに腋の下をほじくられ、私は絶叫した。

「ぐひゃひゃひゃははははは!!! あひぃぃっ!! 腋ぃいぃっひっひっひひひひひっひっひ~~!!!」

「なに? 足とか腋とかもっとくすぐってほしいって?」

「はぎゃぁはははは、ちがっ、違うひいぃい~~っひひっひひっひっひっひ!!!」

 体中に汗がにじむ。
 顔は涙と鼻水でべとべとだ。
 しかし、大笑いを続けていると、頭の中がぼーっとしてきて、なにもかもがどうでもよくなっていく……。

「泉、そろそろ気持ちよくなってきたでしょ」
 まゆは、私のブラウスの裾から手を突っ込んで、おへそをいじくりながら言った。

「がひゃひゃひゃっ、そんなっ……かひぃいひっひっひっひっひっひひ!!!」

 もう何がなんだかわからない。私の頭はパニック寸前だった。

「泉ちゃん、正直になっていいんだよ。大笑いするのは気分がすっとするでしょう?」

 そう、なのかな……?

 サークルメンバーに繰り返し浴びせられる言葉が、私の頭の中を支配していく。

「やはははははっ!! ……んぐっ、はひひひっ! たのひっ……これっ……癖になっちゃう~~あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 気づけば、私のからだはくすぐりを求めていた。

「泉ちゃん、ようこそ、わがサークルへ。明日から毎日、まゆと一緒に、かわりばんこにくすぐってあげるからね」
 先輩の声が遠く聞こえた。
 明日から楽しみだ。


(完)