Tickle Love(https://twitter.com/TickleLove1)様が挿絵を描いてくれました!


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「松山(仮名)さ。最近、女子くすぐって回ってるってホント?」

 久々に顔を出した漫画研究会にて。
 会長の瑞穂(みずほ)が唐突に切り出した。机に向かったまま、こちらも見ずに。
「……」ぼくは沈黙した。
 彼女の口ぶりに糾弾するようなニュアンスはないように思える。そもそも瑞穂は自分の世界のみを大切にして生きるオタク気質。他者に興味を持つことは少ない。もしバレたとしても、他言する可能性は低いだろう。
 しかし、口止めが必要か? ふくよかな体形。暴れられると手に負えない可能性もある。拘束するなら、和花のときのようにがんじがらめにしなければならないかもしれない。その前に、どうやって家に連れ込むか、だが……。

「私のこと、くすぐってくれない?」

「えっ?」
 瑞穂の発言が予想外すぎて、思わず聞き返した。

「いま、リクでくすぐりモノの漫画書いてんだけどさ。くすぐられる側の反応、もうちょっと詰めたいんだよね。こういうの実体験ないからわからんし。松山(仮名)、あんた、プロっぽいし、やってくんね?」
 瑞穂はそこで手を止め、こちらを振り向いた。
 いつもの仏頂面。足を組み、面倒くさそうな物言いで顎をしゃくる。彼女にとってはそれが他人にものを頼むときの態度である。

 くすぐりに目覚めて十数年。一度もくすぐったことのない人間が、自らくすぐりを求めてきたのは初めてだ。
「いいとも」
 腕が鳴る。

~~~

「服は?」
 部屋にやってきた瑞穂は平然と聞いた。これから拘束してくすぐられることに、なんら抵抗がない様子だ。
「そのままでいいよ。……あ、いや、ソックスだけ脱いでくれるかな」
 ぼくが答えると、瑞穂は「ふーん」とつまらなさそうな顔で、自ら両足のソックスを脱ぎ捨てた。
 そのまま拘束具のついたベッドに仰向けになって、自分で足首を拘束具につなぎ始める。
 女子にしてはかなり大きな素足。肉厚で指が丸くて小さい。手入れも杜撰で、指の間に糸くずや砂利のようなゴミがいくつも付着しているのが見えた。靴をあまり洗っていないために、ソックス越しにゴミが入ってくるのだろう。爪は10本とも、生え筋を無視して無理やり短く切っている印象で、いびつな形状だった。
 瑞穂は自身の拘束を終えると、
「下着とかにしないんだ。結構ぬるいんだね」
 ぶっきらぼうに言った。
 少しカチンとくる。
「くすぐりをなめてもらっちゃ困るな。その余裕がいつまで持つかな?」
「うん? 別に余裕こいでるつもりなんかないけど?」
 ぼくの挑発をさらりとかわす瑞穂。
 人を食ったような態度は気に食わない。今日はお仕置きもかねて、じっくりとくすぐり犯してあげるとしよう。

 さっさとやれよ、とでも言いたげなダルそうな表情の瑞穂。両手足を大の字に広げたまま身動きが取れないのによいご身分だ。
 ぼくは彼女に覆いかぶさるようにして、くすぐりを開始する……。

~~~

「ぶふっ……ぐあぁぁはっはっははははっはっはは!!? いぃいいっひひっひっひっひっひっひっひ、そこだめ゛ぇえひっひっひっひっひっひっひ~~!!!!」

 なんてことない。
 いくら達観した風を装ったオタクガールでも、ふたを開けてみれば普通のくすぐったがり屋の女の子だった。

 ぼくは瑞穂の足の人差し指と中指を押さえつけて反らし、その付け根当たりを爪でがりがりくすぐってやる。
 大きな足の裏をまんべんなくくすぐり、開発したところ、彼女はこの部位が一番効くらしい。

「あひゃっはっはっはっはっはっは!!!? そこばっかりぃいひひひひひひひひひひひひひ~~!!!?」

 普段は仏頂面で人前で笑顔など一切見せない瑞穂が、ゆるゆるに緩み切ったバカ丸出しのアヘ笑顔をさらしている。
 ぶんぶんと髪の毛を振り乱し、鼻水とよだれをまき散らす。くすぐっていない反対側の足の指まで反り返り、体中がびくびく痙攣している。

「瑞穂。さっきまでの余裕が嘘みたいだね。どうだろう? 君のような高慢ちきなガールもこんな風に大笑いさせられる。くすぐりは実に素晴らしいものだとは思わんかね?」

「がひぃいっひっひっひっひっひ!!? おほほほほ、思うっ!! 思うからいったんストぉぉぉっぷひひひひひひひひひひ!!!」
みずほ

 瑞穂は見かけによらずなかなか聡いようだ。ぼくの言葉には同調したほうが吉だと理解している。ぼくは手を止めてやった。

「げほっ……げほっ、ま、まじで、すごかった……。こんなん、初めて……」
 瑞穂は息を切らしながらそんな感想を漏らす。
「あ、あり……。参考になったから、今日は、もう……」
 瑞穂の弱々しい態度は、ぼくの加虐心をさらにくすぐった。
「まだだね」
「……えっ」
「瑞穂はまだ、上半身のくすぐりをほとんど受けてないじゃないか。せっかくの機会だ。全身をしっかり開発してしんぜよう」
「い、いやっ! 待って! きょ、今日はもう……っ! 足だけでもあんなつらいのに、全身は――」

 瑞穂が得意の早口で煙に巻こうとしたので、言い終える前に、ぼくは彼女の脇腹をくすぐりはじめた。

「あ――ひあぁあはははははははははっ!!? いきなりっ!? いきなりぃっひっひっひっひっひ!!! ダメだってぇええええいぃいいっひひひひひひひひひひひひ!!!」

 瑞穂は足の裏をくすぐられ続け敏感になっていたせいか、一瞬で破顔した。
 体を上下にびくびく震わせて大笑いする。

 ぼくは、人差し指をくりくりと動かしながらツボを探す。

「これでもぼくは何人もの女性をくすぐっていてね。君のように指の付け根が弱い子は、このあたり、右脇腹のやや上あばらの縁付近にツボがあるものなんだよ。ここかな?」

「ぐああぁああ゛あ゛ぁ゛~~~~がはははははははははっ!!? なんじゃぁああ゛あぁそりゃ゛あばばばばばばばばばばっ!!!?」

 人差し指がぐりっとツボをとらえた途端、瑞穂の体が跳ね上がる。

「おお、効いてる効いてる」
 ぼくは感心して、さらに深く指を押し込む。贅肉をより分け、内臓をほじくりだすようなイメージだ。

「ぎや゛あ゛ぁああがががががっ、ぎぃいひひひひひひひひひひひっ!!!? それずるいぃいぎっひっひひっひひひっひ、ツボってなんぞぉぉぉあぎゃっはっはっはっはっはっはっはっは~~!!!?」

 瑞穂は狂ったように泣き叫ぶ。笑顔を作りなれていないせいか、筋肉が異様にこわばり、いびつにゆがんだ醜悪な形相になっている。
 普段学校での垢ぬけた彼女しかしらないクラスメイトがこの姿を見たらさぞ驚くことだろう。

「おやまあ。瑞穂はくすぐりのツボを知らないんだね。それじゃあ、ぼくが瑞穂の体でとくと伝授してあげるよ。きっと創作の役に立つと思うよ」

「いぎゃっ!!? ちょぉお、そういう意味じゃにゃぁぁああっははははははははははははははははははっ!!!!?」

 彼女への全身くすぐりツボ講座は深夜まで続いた。
 最初は嫌がっていた彼女も、終盤は貪欲にツボの開発をせがんでくるまでになった。すっかりくすぐられる魅力の虜になってしまったらしい。たった10本の指で、簡単に変態が開発できるのだから、くすぐりは奥が深い。


(完)


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