「ふふふ、はやてちゃん。とっても良い格好なのです。にぱー」
「ちょっ、なのはちゃん!? それキャラ間違っとる! ……って、て、この状況なんなん!?」
「はやて、オフだからってちょっと油断しすぎだよ」
「フェイトちゃんっ、怖い顔しとらんで助けてや!」

 機動六課のとある休日。
 ビーチに遊びにやってきたメンバー達。
 ちびっこが海水浴を楽しんでいる間、隊長三人衆は浜辺でひなたぼっこをしていた。
 はやては日頃の激務で疲れていたのか、うとうとしていた。
 ほんの数分眠っていたうちに、はやては、なのはとフェイトの二人に、砂で埋められてしまったのだ。
 頭と足だけ地表に突き出た状態で、はやてはまったく身動きが取れない。

「安心してはやて。痛くないから」
「……は? え、痛くないって……」
 はやてはフェイトの言葉にきょとんとする。
「はやてちゃん最近疲れてるみたいだったから、ちょっとリラックスしてもらおうと思って」
 なのはは言うと、はやての足元へ四つん這いで近づいていった。
「ちょっ、なのはちゃん……、な、何する気なん……?」
 はやては額に汗を滲ませて、二人の挙動を目で追った。
 不安そうなはやての表情に対して、なのは、フェイトは楽しそうだ。
「はやてちゃん、子供の頃から、苦手だったよね?」
 なのはが指をワキワキと動かすのを見て、はやての顔がさーっと青ざめた。
「ちょ……なっ、なのはちゃんまさか!? あかんあかん!! それはあかんてなのはちゃん! やめっ! 上官命令や! フェイトちゃんなのはちゃんとめてや!」
 はやては必死に首を振りながら砂から抜け出そうともがく。
「はやて。今日はオフだよ。仕事のことは忘れよう?」
「あかんて!! ふぇ、フェイトちゃんまで悪い顔して! や、やめ――」

 こちょこちょこちょこちょ。

 なのはとフェイトは、はやての制止を無視して、彼女の砂のついた足の裏をくすぐりはじめた。

「あかぁぁっ!? あはははははははははっ!!! やめぁぁああっはっはっはっはっはっはっは~~!!!」

 途端に大口を開けて笑い出すはやて。
 はやての足の裏では、二人の十本の指がじゃりじゃりと這い回っている。

「あぁぁあ~~っはっはっはっはっはっは!!? あかんてふたりともぉぉ~~ひゃははは、いやぁぇぇええやはははっははっはははっは!!!」

「ふふっ、はやてちゃんは相変わらず足の裏が弱いんだから」
「昔はよく遊んだけど、久しぶりだね。こういうの」
 なのはとフェイトは顔を見合わせて微笑む。

「だぁぁああっははっははっははははあかんやめぇぇえぇやっははっはっはっはっはっは!!!」

 はやての足の指はびくびくともがき苦しむように動く。
 なのははそんなはやての足の指を捕まえ、反らすと、反り返った足の裏にガリガリと爪を立てた。

「ふぎゃぁぁぁあっはっはっははは!!? なのはちゃんあかんてぇぇぇぎゃははははははははははははっ!!!!」

 はやては涙を流して笑う。

「はやてちゃん、笑うのは健康に良いらしいよ? 最近大変そうだったからリラックスして――」

「死ぬわっ!! ひゃひゃひゃひゃ、笑いすぎて死ぬぅぅぅ~~ひゃっはっはっはっはっはっは!!!」

「大丈夫だよ。シャマルがなんとかしてくれる」

「あひゃひゃひゃっあかんやつぅぅっひゃっはっはは、それあかんやつやぁぁあぁひゃっはっはっはっはっはっは~~!!!」

 フェイトははやての足の指の間に指を押し込んだり、土踏まずをひっかいたりしてくすぐる。

「なんか三人で遊ぶの、懐かしくていいね。こういうの」

「いひゃひゃひゃひゃ!!? 良くないわぁぁぁひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ、二人ともやめぇぇえぇあぎゃあぁぁはははははははははは~~!!!」

 はやての笑い声は悲鳴のようだった。
 その声に気付いて駆けつけたちびっ子達も便乗し、代わる代わる全員に全力でくすぐられたはやては、失神した。
 魔法少女は限度を知らない。


(完)