「気分はどうだ? フェイト・T・ハラオウン執務官」
「……」
 異空間。フェイトは四肢を大きく引き伸ばして拘束されていた。
 謎の声は、どこからともなく響いてくる。
「……君の目的は私。なら、早くエリオとキャロを返してもらいたい」

 ある日、フェイトが執務室で仕事をしていると謎の人物から脅迫通知が届いた。
 添付画像には囚われたエリオとキャロの姿。
 二人を無事解放して欲しければ、フェイトひとりで来い、と……。

 フェイトは抵抗しなかった。
 謎の声に従うまま、とらわれの身となったのだ。

「二人ならお楽しみ中だ」
 謎の声とともに現れた映像に、フェイトは目を見開いた。

「きゃはははははははっ!! エリオくんやめてぇぇぇ~~!」

 バリアジャケット姿のキャロが、素足にされた足の裏をエリオにくすぐられている。
 キャロは両手首足首をバインドで拘束されており、首を左右に激しく振って大笑いしていた。

「あははははははいやぁぁぁはははははエリオくぅ~んひっひっひっひ!!」

 涙を流して笑うキャロに対して、エリオは口を半開きにしてうつろな目をしていた。
 まるで魂が抜け落ちたような……。
 そこで、映像が切れた。

「……!! え、エリオに何をした!?」
 フェイトは空間をきょろきょろと見回しながら叫んだ。
「安心しろ。ちょっと催眠をかけさせてもらっただけだ。ちょっとした余興だ。君の相手は……」

「!?」

 空間にぼんやりと浮かび上がってきた人物に、フェイトは驚愕の表情を浮かべる。
 その人物がゆっくりと近づいてくる。
 金髪の髪の毛は二つに結ばれ、袖の無い黒いバリアジャケットを着ている。

「な、なんで……」

 フェイトは声に詰まる。

「ここは時空の狭間。十年前の世界から連れてきたんだよ。ハラオウン執務官」

 フェイトの目の前に立ったのは、紛れもなく、フェイト・テスタロッサ。まだ小学生のフェイト自身だった。
 目はうつろで、口は半開き。
 催眠にかかっていることは間違いなかった。

「ハラオウン執務官。君はひとり遊びを楽しんでくれ」
 謎の声が途絶えた。
 と、同時にフェイト(小)がゆっくりと両手をフェイト(大)の体へ伸ばす。

「や、やめっ……」
 フェイト(大)は顔を引きつらせる。

 直後、フェイト(小)はフェイト(大)の脇腹を激しくくすぐり始めた。

「あ、……は、はははははははははっ!? な、はっはっはっはっはっはっはっはぁ~~!」

 フェイト(大)はたまらず笑い出す。
 フェイト(小)の指は、そのぼんやりとした表情からは想像できないほど激しく動く。

「やはははははははは!! くすぐったぁっはっはっはっはっは!? 何この状況ぉぉ~っはっはっはっはっはっはっは!!!」

 フェイト(大)は自分自身にくすぐられ、大笑いする。
 しばらくしてフェイト(小)が手を止めると、ふたたび謎の声が聞こえてきた。

「ハラオウン執務官。自分にくすぐられ笑わされる気分はいかがかな?」

「ひっ……ひぃ、……くっ」

 フェイト(大)は息を整えながら、悔しそうに顔を背けた。
 幼少期の自分自身にもてあそばれ、困惑とともに、プライドが大きく傷つけられたのだろう。

 いつの間にか、フェイト(小)がフェイト(大)の足元へ移動していた。
 フェイト(小)がブーツを脱がし始める。

「えっ……やめ……、終わったんじゃ……?」

 フェイト(大)は足元を見て、眉をひそめた。

「これで終わるわけがないだろう。ハラオウン執務官。自分の弱点は自分が一番よくわかっているんじゃないのかい?」
 謎の声が響く中、フェイト(小)はフェイト(大)のブーツ、そして、ソックスまで脱がし取った。
 フェイト(大)は晒された素足の指をきゅっと丸めた。

「まっ、や、やめて……」

 幼少期の自分自身に懇願しなければならない状況に、フェイト(大)の声は震えていた。

 フェイト(小)は、目の前の人物が自分自身だと理解しているのかいないのか、制止もまったく聞き入れず、フェイト(大)の足の裏に指を這わせ始めた。

「ひゃっ!!? あひっ……はははははははははっ!!! やっ、やぁぁぁっはっはっはっはっはっは!!!」

 フェイト(大)は体を大きく反り返らせて笑った。
 フェイト(小)の指は撫でるような動きから徐々に指先を立て、爪でガリガリ掻きむしるような動きに変わっていく。

「あひゃははははははははっ!!? ひぎぃぃぃ~~っひっひっひひっひっひひっひっひ~~!!!!」

 すると今度は、フェイト(小)はフェイト(大)の長い足指を掴み上げて反らし、足の指の付け根をカリカリとくすぐり始めた。

「あがぁぁぁぁっはっはっはっはは!!? そんなとこぉぉぉ~~あはははははははははははっ!!」

「さすがハラオウン執務官。幼少期から客観的に自分の弱点を把握しているようで。これは強くなるわけだ」

 謎の声の挑発に、フェイト(小)のくすぐりはさらに激しさを増す。

「あがはははははははははっ!!! おねがいぃぃぃっっひっひっひひっひっっっひっひ!! やめてぇぇぇぇ~~はははははははははははは!!!」

 もはや、プライドも何もあったものではない。
 しばらくして、謎の声が助け舟を出す。

「ハラオウン執務官。ある言葉を発せば彼女はくすぐりをやめる。教えて欲しいか?」

「がひゃははっはあははははははっ!!! はっ、早く言ってぇぇぇぇっひゃはははははははは!!!」

 両足の裏を自分に激しく掻きむしられ、フェイト(大)は髪の毛を振り乱して笑う。

「『フェイト様、どうかおやめください』だ。どうだ? 簡単だろう」

「ひゃぁぁああ~~はははははあっはひぇぇ~~!!?」

 フェイト(大)は目を見開いた。
 自分自身に「様」付けをして、懇願するなんて……。

「言えないのか?」

 フェイト(小)のくすぐりは続いている。
 長時間、休み無く笑わされ続けたフェイト(大)の体力は限界だった。
 フェイト(小)は催眠にかかっているせいなのか、指の動きにまったく疲れを感じさせない。

 フェイト(大)は涙を流した。

「あひゃひゃひゃひゃっ、フェイトさまぁあぁあっはっはっはっは、どうかおやめくださいぃぃいぃっひっひっひっひっひっっひ~~!!!」

 幼少期の自分自身に屈伏し、降伏宣言するフェイト(大)の顔は、ぐしゃぐしゃに歪んでいた。

 しかし、フェイト(小)の指はとまらなかった。

「あがぁぁあっははっははっはは!!? 言ったあぁぁぁはっはっはっっはっは!! 言ったのにぃぃぃっひっひっひっひっひ~~~!!!」

 謎の声が聞こえたのは、それから一時間後だった。
「うっそぴょ~ん」

 二人のフェイトは、互いの体力が完全になくなるまで、くすぐり、くすぐられ続けた。


(完)