外が騒がしい。
 おじさんが玄関の扉を開けると、3人の女子が立っていた。
 みな西洋の神話に出てきそうな化け物の恰好をしている。そうか。今日はハロウィンか。

「トリックオアトリート! トリックオアトリート! トリックオアトリート!」
「トリックオアトリート! トリックオアトリート! トリックオアトリート!」
「トリックオアトリート! トリックオアトリート! トリックオアトリート!」

「へぇ? おじさんにどんなイタズラをしてくれるんだい?」
 おじさんが問いかけると、3人は困った顔をした。

「えっと……お菓子をください。今日はハロウィンです」
 大きな鎌を持った死神風の衣装を身に着けた女子がおそるおそる言った。

 なんと、彼女らはハロウィンイベントに乗っかっておきながら、お菓子をもらえなかったときのイタズラを考えていなかったようだ! しかも、死神風の恰好で「今日はハロウィンです」などと世界観をぶち壊すメタ発言! 絶対に許せない。

「ねぇ、もう行こうよ。このおじさんお菓子くれないみたいだし」
 不思議の国のアリス風の衣装を身に着けた女子が死神のローブを引っ張った。その隣に突っ立っていた魔女風の衣装を身に着けた女子は、何も言わず踵を返す。

 なんだこの3人組は!
 他人の家にやってきておいて、礼儀もなにもなっていない!
 お仕置きが必要だ!

「待たれよ」

 おじさんは、そそくさと帰ろうとする3人組に魔法をかけ、自宅に連れ込んだ。

・・・

「あひゃひゃひゃひゃ!!! ひゃめっ、あひぃ~~っひっひっひっひっひっひ~~!!! やめてぇ~~~~あはははははははははは!!!」

 そっけない態度で立ち去ろうとしていた魔女風女子が大口を開けて馬鹿笑いしている。
 特製の足枷で両足の指をすべて拘束しているため、足首から下は一切の身動きが封じられている。その敏感な素足を、無数の小さなマジックハンドがこちょこちょとくすぐりたてていた。

「他人様の家にお邪魔したら、去り際もきちんと挨拶をしないといけないんだよ。おじさんと約束だぞ?」

「わひゃっひゃっはっはっはっははは!!! やくそくするっ、やくそくするからとめてぇぇえ~~ひゃっはっはっはっはっはっはっは!!!」

 魔女風女子は端正な顔をぐちゃぐちゃにゆがめて笑う。もう少しのあいだ反省してもらおう。

 その隣では、

「いぎゃっはっはっはっはっはっは!!! なにこれっ、気持ち悪いぃ~~ひっひっひひひひっひ~~!!! やだぁぁっはっはっはっはっはっはっは!!!」

 アリス風女子が体中をべとべとのスライムでくすぐられている。
 全身がつかるほどのスライムの海の中、彼女は馬鹿笑いしながらジタバタと両手足を動かし暴れている。
 スライムは彼女の服の中にまとわりつき、腋やおなか、ニーソックスの中にまで入り込み足の指先までくすぐりつくす。

「ハロウィンはお菓子を回収する遊びじゃないんだよ? お菓子をくれない人にはちゃんとイタズラしないと。こんな風に!」

「こんなのぉ~~はっはっははっはっは!!! 限度が過ぎるぉ~~ひゃははははははははははは~~!!」

 自分がハロウィンを中途半端にとらえていたくせに、まったく反省の色が見えない。まだまだお仕置きの必要がありそうだ。

 さらにその隣では、

「うひゃはははははははっ!!? やらはっはっははは、くしゅぐったいよぉ~~ぃひひひっひっひっひっひっひ!!!」 

 死神風女子が、股下から足裏までを無数の羽根でくすぐられて悶絶している。
 大きく開脚して、自身が持っていた巨大な鎌の柄に足首を縛られているため、鼠径部から足指の股まで触り放題だ。

「死神がそんなはしたない笑顔を見せるんじゃないよ。せっかく扮装したのなら、きちんと死神になりきらないと!」

「あぎゃひゃははひひひひっひひひ!? 無理無理ぃひひひひいひひひひひひい!!! おじさん許してぇぇえ~~っへっへっへへっへっへっへっへ~~!!!」

 死神風女子は涙を流して何度も謝る。まだまだ、そんなんじゃ立派な死神になれないぞ!

 3人をくすぐり責めにしていると、また外が騒がしくなってきた。
 誰か来たようだ。次は、きちんとハロウィンの仕様にのっとってイタズラしてくれる子をお願いしたいものだ。

(完)