ぼく、鈴木蓮太郎は、「くすぐって笑わせた相手を言いなりにする能力」を手に入れた。
能力を使って、昔いじめてきた連中に仕返しをしてやろうと思ったのだが、ひょんなことから、関係のない2人の女子生徒、斎藤陽菜と木森八重を「言いなり」にすることに成功した。
「遠元さんはソフトテニス部で、放課後は忙しそうだよね。休み時間もほとんど誰かしら友達と一緒にいるから、一人で呼び出すのは難しいと思うよ」
斎藤さんは、ぼくの復讐計画に忌憚の無い意見を述べてくれる。
昼休み、ぼくと斎藤さんと木森さんは、音楽室横の空き教室で作戦会議をしている。昼休み中はブラスバンド部が音楽室で練習しているから、楽器の音のおかげで話を盗み聞きされづらいという。斎藤さんのアイデアだ。
どうやらぼくの能力の「言いなり」状態になるということは、ぼくが命令を出さないと動けないようなロボット状態になるというわけではなく、個人としての自主性は残ったままぼくの言葉を違和感なく受け入れてくれる状態になるということのようだった。
「3組にソフトテニス部マネージャーの子がいるから、その子を通せばやりやすいかもです」
木森さんは上目遣いに言った。
保健室で彼女をくすぐったときは、きつめの性格の子かと思ったが、「言いなり」にしてからはずいぶんとしおらしい態度になった。
斎藤さんがまったく変わらない態度なのと対照的だ。「くすぐって笑わせる」という判定についても感じたことだが、ぼくの能力には相手によって個人差があるようだ。
「なんて子?」
「松原あやめって子です。おとなしい系の子で、あんまりクラス内で人とつるまないから、呼び出すのは簡単だと思います」
「いまはどこにいそう?」
「たぶん教室だと思います」
ぼくが何も言わなくても、斎藤さんと木森さんで勝手に作戦を進めてくれる。とても心強かった。
「鈴木君」と斎藤さんは続けて、「いまからこの場で、松原さん、くすぐりでいい? この部屋、放課後には軽音部の人が入ってきちゃうから、いまがチャンスだよ」
「う、うん。ありがとう……」
ぼくは、斎藤さんの心強さに圧倒された。
(つづく)
能力を使って、昔いじめてきた連中に仕返しをしてやろうと思ったのだが、ひょんなことから、関係のない2人の女子生徒、斎藤陽菜と木森八重を「言いなり」にすることに成功した。
「遠元さんはソフトテニス部で、放課後は忙しそうだよね。休み時間もほとんど誰かしら友達と一緒にいるから、一人で呼び出すのは難しいと思うよ」
斎藤さんは、ぼくの復讐計画に忌憚の無い意見を述べてくれる。
昼休み、ぼくと斎藤さんと木森さんは、音楽室横の空き教室で作戦会議をしている。昼休み中はブラスバンド部が音楽室で練習しているから、楽器の音のおかげで話を盗み聞きされづらいという。斎藤さんのアイデアだ。
どうやらぼくの能力の「言いなり」状態になるということは、ぼくが命令を出さないと動けないようなロボット状態になるというわけではなく、個人としての自主性は残ったままぼくの言葉を違和感なく受け入れてくれる状態になるということのようだった。
「3組にソフトテニス部マネージャーの子がいるから、その子を通せばやりやすいかもです」
木森さんは上目遣いに言った。
保健室で彼女をくすぐったときは、きつめの性格の子かと思ったが、「言いなり」にしてからはずいぶんとしおらしい態度になった。
斎藤さんがまったく変わらない態度なのと対照的だ。「くすぐって笑わせる」という判定についても感じたことだが、ぼくの能力には相手によって個人差があるようだ。
「なんて子?」
「松原あやめって子です。おとなしい系の子で、あんまりクラス内で人とつるまないから、呼び出すのは簡単だと思います」
「いまはどこにいそう?」
「たぶん教室だと思います」
ぼくが何も言わなくても、斎藤さんと木森さんで勝手に作戦を進めてくれる。とても心強かった。
「鈴木君」と斎藤さんは続けて、「いまからこの場で、松原さん、くすぐりでいい? この部屋、放課後には軽音部の人が入ってきちゃうから、いまがチャンスだよ」
「う、うん。ありがとう……」
ぼくは、斎藤さんの心強さに圧倒された。
(つづく)