阪口桂利奈は学校から寮へ帰宅するやいなやテレビの前に駆けつけた。
 着替えもせずに電源を入れる。
 どすんとベッドに腰掛けて、リモコンを手に取った。
 ここ数日のあいだ廃校云々問題解決に忙しく、HDDに特撮モノやアニメが溜まっているのだ。一刻も早く、鑑賞しなければならなかった。
 さっそく見始めたのは、先週放送された深夜特撮モノ。変身ヒーローが巨大ロボを使い秘密結社と毎週戦うタイプの古典的な勧善懲悪ストーリーだ。開始15分。画面上に登場したメカに、桂利奈は妙に興味を抱く。
『さあついにくすぐりロボが完成したぞ!』
 画面の博士が言った。
「くすぐり、ロボ……」
 桂利奈は、画面に見入り、ごくりと唾を飲み込む。
 それは、主人公の敵にあたる組織の開発した拷問用のロボだった。
 成人男性ぐらいの人型ロボだが、上半身についた腕は左右合わせて16本。
 合計80本の指をワキワキと動かしながら迫ってくる様子はなかなか怖い。
 画面の博士はしっかりとカメラ目線で言い放つ。
『よーし。まずは手始めにお前を実験台にしてやろう! ゆけ! くすぐりロボ!』
 博士の台詞で、くすぐりロボが動き出した。カメラの方に向かってまっすぐ向かってくる。
 さっそく誰かを餌食にするらしい。
 桂利奈は当然カメラ側に誰かがいるものだと思っていた。
 しかし、なかなかカットが変わらない。
「ん……あれ?」
 桂利奈は画面を見つめているうちに、妙な不安に駆られた。
 不安の出所がまったくわからない。
 違和感。焦燥感。……
 そんな感覚は、生まれて初めてだった。
 まるで、画面の中の世界が、現実の世界に侵食してくるような……。
 いつの間にか、画面上の音声が消えていた。
 桂利奈が目を細めて画面をにらみつけるあいだ、どんどんくすぐりロボは迫ってくる。
 もうそれはカメラに接触しそうなぐらいにまで近づいてきて――ぐにゃり――
「あいぃぃぃぃぃっ!!?」
 桂利奈はあまりの驚きに、背中からひっくり返ってしまった。
 目の前のテレビ画面が歪み、画面内のくすぐりロボが画面の外へせり出してきたのだ。
 10本の腕を虫のようにワラワラ動かし、テレビ画面から這い出てくる。
「ひぃぃいいいいいい!!?」
 あまりの衝撃に、桂利奈は悲鳴を上げた。
 画面の中にいたはずのくすぐりロボが明らかな物体となって、画面の外、桂利奈の部屋に這いだしてきたのだ。
 桂利奈は腰が抜けて立ち上がることができない。
 ゆらりと全身を画面外に露わにしたくすぐりロボは、後退る桂利奈にまっすぐ向かってきた。

・・・

 くすぐりロボの出現から数分。

「う゛ぁあぁぁあぁああはっはっはっはっはっはっはっはっは!!? やはははははははははは!!」

 桂利奈はくすぐりロボに後ろから羽交い締めにされ、くすぐられていた。
 腕を広げて抱えられているため、ガラ空きの腋の下や脇腹は恰好の餌食だった。
 くすぐりロボの数十本の指が、桂利奈の敏感な腋、お腹、脇腹を這い回る。

「あひゃぁぁあっはっはっはっはっはっはっは!!! こしょぐったぁああはっはっはっははっはっはっははっは~~!!?」

 桂利奈は目に涙を浮かべて大笑いしている。

 くすぐりロボの責めはいやらしく、身体中のくすぐったい部位を余すところなくくすぐっていた。
 首筋、脚の付け根、太もも、膝……。
 靴下は両足とも剥かれ、足首をがっちりと掴まれ、足の裏までくすぐられている。

「ひあえぇぇへっへへっへっへっへやめぇぇえぇははははははははは!!! しんじゃううぅうううはははははははははは~~!!!」

 桂利奈は泣き叫ぶ。
 なぜ自分がテレビから出てきたくすぐりロボにくすぐられているのか。まったく状況が理解できない。

 くすぐりロボは指先の動きを巧みに変え、緩急をつけてくすぐってくる。

「おにゃぁぁああはははははははははは!!? やめぇぇええははははははは! たすけっ……ひぃぃぃぃ~~っひっひひっひっひっひっひっひっひ~~!!!」

 桂利奈はびくびくと身体を震わせて笑い続けた。
 テレビ画面の向こうの博士はカメラ目線のまま固まっている。


(つづく)


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(ここから作者コメント)

 こんばんは。ertです。
 桂利奈ちゃんの「桂」は桂小五郎と覚えておけば間違えない!
 あいあいあーい。


M3ウサギさんくすぐリー ( x / ウサギさんチーム) ♯1 ♯2